極メシ!!【ブリ糸状虫・閲覧注意】
ヒトは何故、ものを食うのか。好奇心で味を確かめる意味合いも有る。そうした好奇心故に発見された珍味も、確かに有る。
では、全く味の評価が存在しないものが有ったら、気にならないか? 気になるだろう。
……まあ、食べられればだが。
おはこんばんちは、稲村某で御座います。初めましての方は、ようこそいらっしゃいませ。既知の皆様、お久し振りで御座います。
さて、お題の通りの食に関するエッセイなんですが、何せ題名からしてかなり【アレ】な食材です。殆どの方はご存知無いでしょう。ブリ糸状虫とは何ぞや?
まあ、結論から言いますと、寄生虫です。ブリに寄生する生き物で肉の中だけに入り込み、周辺の筋肉を溶かしながら栄養を摂取し、産卵する時だけ離れる生き物だとか。因みに全てメスらしいです。身体の大きなブリを切ると時々入っていて、ニョロリとミミズのように顔を出してきます。しかも、複数の個体が密集して細長く寄生する為、引っ張り出すとズルズルと次から次に出てきましてね……マジで数十匹がひと塊になってると慣れていてもゾッとします。ほぼホラー状態です。
で、そんな自己主張強めな奴なんですが、大抵の方は知りません。そりゃスーパーの鮮魚売場に並んだ刺し身から顔出してたら、間違いなく保健所に通報されますわ。しかし、こいつは人間には一切寄生しないそうで、見た目以外の実害は有りません。但し、寄生されていたブリの市場価格は下がる……と、言いたい所なんですが、厄介な事にブリ糸状虫が居るかは外からは判りません。せいぜい寄生された個体は、寄生されていないブリと比較すると痩せている事が多いらしく、それで判断出来るかもしれません。
そんな訳で、自分で丸ごと捌かない限り見られない貴重な虫なんですが……
……味の評価は、全く有りません。そもそも、見た目だけで食いたくなくなります。どう見たってミミズですからね。ではまた!!
……と、ここで終わる訳は有りません。このエッセイはほぼ事実しか書かないので、食ってみなけりゃ投稿出来ないんです。はあ、難儀なもんだ。
稲村某、回る寿司屋で働いてまして、日々魚を切ってます。それで養殖ブリなんかは毎日のように切付けてますが、天然物のブリも機会が有れば捌く事もあります。でも、天然物は安い割りに脂乗りが千差万別で、氷見のブリのようなブランド物は高くて手が出せません(そうそう食べてもらえないんです)。
でも、冷凍ブリってのは信じられない程安く流通しているんですが、天然物で脂乗りは極めて悪い上、どんなに上手に解凍しても身がグズグズで、生では食べられません。
但し、煮物や焼き物用なら問題無い為、味噌汁の具として扱っているんですが……これに入っているんですよ、ブリ糸状虫が。でも、残念ながら(?)たまーにしか居ない。そんな訳で結構レアな奴なんです。
……で、味見しとくかと今朝方捌いた個体からずるりと引き抜いたのが、5センチ程度の長さの奴でして。
「きゃーっ!? 本気なのお腹痛くしちゃうわよ!!?」
はい、パートさんの言う事も判ります。寄生虫ですからね。でも、稲村某はそーゆー奴なんですよ。
レンジで軽くチンして、くたくただった身が若干ピシッとした感じに変化した、ミディアムレアなブリ糸状虫。
……さて、食してみようか。
もむもむ……うん、表面の固くなった皮はプチッと弾ける食感。まあ、食えなくはないか。但し、ミディアムレアなせいでやたら生臭い。味はまぁ、似た物で例えるなら、焼いた貝の香ばしさに生臭さをしこたまブチ込んだ感じですね。とにかく魚系の生臭さがてんこ盛り。
「ホントに食べちゃった!! ヤバいヤバいっ!!」
あー、パートさんが騒がしいので、飲み込まず出す事にしました。そんな訳でしっかり火を通せば、もう少し生臭さも和らぐかもしれません。機会があったら、是非チャレンジしてみてください。
……但し、ブリ一匹丸ごと買うか、海で釣るかしないと手に入りませんが。
ではまた!!