ショートホープと雨
「くっ寒ぃ」
ビニルの包装を剥がし銀紙を破る。
親指で押し上げた一本を咥え百円ライターのヤスリを二度回転させ火をつける。
吐き出した煙は軒下の外の雨にはたき落とされるように消えた。
「つまんねぇなぁ」
朝とも昼ともつかない時間、流れ出るように声が出た。
体力は有り余ってるはずなのにやることが見つからなかった。
晴れてる日でもやりたいことなんて見つからないのに雨のせいにした。
SNSを見ると周りの人間が全員充実してるように見えて嫌だった。
なんなら投稿してないヤツの方が現実が充実してるようにも見えるし、全員が楽しそうに見えた。
「彼女でもいればなぁ」
ああ、俺のバイト先の麗しの乙女(18)よ、私に振り向いてくれ。
しかし、ここでいう振り向くとは自分からのアプローチではなく、その乙女からのアプローチを待つということである。
他力本願の自分に情けなさを感じながら短くなった一本目のタバコを押し消した。
二本目のタバコを吸いながら、あの麗しの乙女に話しかける算段を考えた。
デートに誘う?どうやって?断られたら気まずくなるのではないか?いきなりメッセージ送られてきたらキモがられないか?
悶々とした感情が湧き上がり、二本目のタバコはすぐに吸い終わった。
三本目を咥えた数刻、吸うか迷ったが火がついていた。
この迷いが俺の弱点なんだろうなぁと思うと同時に鼻からため息混じりの煙を押し出した。
情けなさに怒りを感じたのか唐突に自暴自棄にも思える自信が湧いてきた。自信に身を任せ、麗しの乙女に向けて短文を認める。
咥えタバコでひたすらに画面を打つ。
勢いに身を任せていたものの校正をするくらいには冷静だった。
しかし、その時間がまた俺の迷いという弱点を呼び起こした。
送信ボタンを押そうとする手が止まった。全選択しカットを押して文を消そうとしたその時、咥えタバコの灰が画面に落ちた。
「いや、送ろう。」
本心では決心なんてついてないのに言葉に心を追いつかせた。
送信ボタンを押したては震えていた。寒かったはずなのにいつの間にか顔は火照っていた。
後悔はあったが何かを成し遂げた気がした。
つまらない一日はまだ始まったばかり
吸ったタバコの分、空いたスペースにライターをねじ込んで、何かを成し遂げた気になった若い俺は網戸と窓を開けて部屋に戻った。




