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腐ってやがる!

 カエルラが視界に入ったフラヴィオ目掛けて走り出した。

“ガッシィ!”

 包丁の刃を上にして腰だめにフラヴィオの脇腹へ突き刺す。

 右脇腹に激痛が奔しり、熱くなり血が流れ出した。

 フラヴィオは、“喝!”と頭に血が昇り、思わず包丁の刃を握ろうと……せずにカエルラの手を握って引き倒し馬乗りになって、

「いってぇ〰️!だろう!?」

「何しやがる!?」

カエルラから包丁を取り上げると……拳の握り方も知らず、人を殴った事のないフラヴィオが手加減なしにカエルラの顔面を鼻っ面を殴り尽くす!

 鎖帷子で包丁の刃は、内臓まで届かずとも浅く肉に刺さり、血が吹き出し流れ始めている。

「貴様っ・がっ!」

「痛っ!!イタイ!イタイ!?」

「ブガっ!や・めっ・てぇ〰️!?」

カエルラもまさかの予想外の反撃で後頭部を何度も地面に打ち付けられ、口腔の肉が切れ、歯も折れ、頬を額を赤く腫らせ、後頭部に瘤が痣が出来て、激痛に悲鳴を挙げる。

夜警が主な勤めの衛兵でも、この騒ぎを聞きつけ駆け付けた。

2人の衛兵が馬乗りになって、カエルラを殴り続けるフラヴィオを取り押さえたが見物していた者達が衛兵へ馬乗り組伏せられ殴られていた方が加害者だと説明した。

衛兵に引き剥がされて、拳、脇腹から浅くとも出血した傷口を手で押さえて、やっと正気を取り戻したフラヴィオが

「医者を呼んで・く・だ・さ……!」

言い切る前に失神してしまう。

衛兵が倒れそうになるフラヴィオを抱えて、病院へと走り出した。

残った衛兵は、カエルラを起こさずに

“ぺっ!”

とカエルラの泣きっ面に唾を吐き掛け、

「何?被害者面してんだ?」

「自分で起きろボケ!!」

衛兵の言葉も言葉だが……カエルラの方が見映えと違い軽症である。

よろよろと起き上がるカエルラの両腕を後ろに伸ばさせ手枷を嵌めると蹴り飛ばしながら詰所へカエルラを連行していく。

 抗生物質もないこの世界では、傷口から破傷風になり、フラヴィオの傷口が化膿して死ぬこともあり得る。

 殺人未遂と変わらぬカエルラへの扱いが乱暴なのも市中への見せしめであった。

 衛兵がフラヴィオを抱えて、飛び込んだ病院は、貧民(スラム)街に近い小さな病院であった。

この病院の医者が緊急医療に突出した腕を持つ町医者であるのを仲間が何人も救われた衛兵は、ここが一番信頼出来るとフラヴィオを担ぎ込んだ。

「こらっ!喧嘩沙汰のバカだったら連れて来るんじゃねぇ~!?」

言葉は、荒くともフラヴィオを診台に寝かせ、衣服を鎖帷子を剥ぎ取り、右脇腹の傷口へアルコール度数の高い蒸留酒を瓶から口に含み、思いっきり吹き掛ける。

埃及(エジプト)ならまだしも、この北方辺境の街に麻酔が有る訳もなく、傷口に染み込んだアルコールの刺激にフラヴィオも痛みとともに意識を取り戻した。

 手荒い消毒と止血止め、打って変わり繊細な指先で鉗子と糸を通し針で縫合を数針で傷口も塞がった。

冒険者ギルドだけでなく、街のあらゆる職業の者達へ医療保険制度の導入適用を提唱して、とうとう街の行政、医療関係者へ取引先の有力者を介して理解させ、実現させた当人が負傷らしいものもなく十数年過ごしてきたので診察されるのは、これが初めてである。

幸い在留外国人(メトイコイ)であるフラヴィオは、納税者で永住権の申請も叶っていた。

そのお陰で医療費を気にせずに傷口が完全に塞がるまで入院となる。


得意先の依頼主(クライアント)が他の都市国家(ポリス)からの移住者であった事も多く、この世界の都市国家(ポリス)の建国説話の本を何冊も読んだフラヴィオは、あまりにも建国者の多くが冒険者パーティー、貴族家等からの追放され、……本当は、その冒険者パーティー、貴族家を支えていた雑用係、執事という主人公で魔法から剣術、内政までチートな知識が豊富なのは当たり前でしかも、第3から5位の後継順位の敵国や隣国の王女の危機を救い婚姻、その国の後継者となり、自らを追放したパーティー、国の貴族、王族を遂には滅ぼし、王族、軍人となって、反旗を翻して……新たな王となった。

 そして、全てを神の如く振る舞い、あらゆる者に智恵を与え、その興した国を繁栄させた。

まるで独裁国家の建国、国策映画の台本……その王統がどれだけ優れたものか!?

 独裁者、一人の力で如何に国を栄えさせたか?を物語る。

よく、神々が実在する世界で……

“こんな絵空事を書けたものだ!”

と呆れたが建国の父たる独裁者は、その伴侶は少なからず、権威付けの担保に有力な神族の血を引く『(デミ)(ゴッド)』である周到さに辟易した。

“神々まで腐ってやがる!”

口にしないものの、この世界の住民も同じ心境だろう。

入院中に時間潰しに読める本も、そんなお伽噺ばかりで……何れも似たり寄ったりの虫酸の走る噺ばかりであるのを嫌でも思い出した。


街中に“冒険者ギルドから追放された!”と知られるフラヴィオを勇気付けようと看護士が用意して差し入れた本が逆にフラヴィオの機嫌を損ねるとは、看護士にも意外であった。

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