今は、ちょっと不安!?
人類北限辺境都市と謳われているが人類種が北方に皆無な訳では無い!大・希臘都市国家群の植民都市国家と直接外交のあるエトルリア都市国家群に属する北限の都市「メディオラヌム」というだけである。
このところ、【闇市場】を仕切るサンチョスからギルド、都市の行政府へ
「黒い森から山脈を越えて魔獣、得たいの知れない魔物が出始めている。」
と警告している通りのにも関わらず、市民には何一つ知らされず生活している。
【闇市場】で再会したサンチョスがフラヴィオへ発した
「冒険者稼業も気ぃつけな!」
の言葉も気に掛かる。
“さりとて、人は食わねば、……死ぬ!”
腹に力を蓄えようと兄妹をフラヴィオ改めソールが案内したのは、『食堂猪亭』、冒険者御用達の食堂で冒険者の新人へは嬉しい安くて美味いメニューが目白押しの店である。
店主がオーク顔なのは、食材に出された魔獣の呪いか?とも噂されている。
豚肉がなぜ、一神教の輩に不浄なモノとされようと命を頂けねば、誰も明日がない道理に従い育ちだかりの兄妹を自らの懐具合も顧みずに奢るソールを支える未来の女房ラベラも未来への投資と……メニューの額を見て、
“この人、ちゃんと家計も考えてくれてる!”
“私達の未来の子への蓄えも考えてるのね!”
と感心する程、お店の価格帯の選別にホッ!とした。
「おっ!また来たぜ〰!おやっさん!」
と厨房へ叫び、“今の自分が若返ってるのを忘れ、しまった!?”と慌てながら、
「フ・フラヴィオ……さんが使わせもらってる個室空いてますか?」
応対に出てきた若い店員が馴れ馴れしい奴だと怪訝な顔を見せたが入店を躊躇っていた兄妹の肩を押して入ってきたラベラの金色の瞳を見て、頬を赤らめぽ~!としたまま、
「奥の個室へどうぞ〰!」
声を裏返して盆で個室へのドアを差し、案内する。
足元がふらつき大丈夫か?と皆が心配するなか、ドアを開けラベラだけを見つめエスコートする。
不安になったソールが他の店員に首に下げていた冒険者の鉄等級認識票を手で高く翳してアピールすると顎を引き納得してくれた。
その仕草の意味を理解できない兄妹も後ろに続くのみ。
席へ案内されて、皆が席に着きソールが出されたメニューから料理を勝手に注文していく。
全く、耳に入っていない店員へソールが「秘拳七年殺し!」の点穴を“ズブ!ズブ!”と突き差し、正気に戻し、腰砕けながらもア✗ラ100%のように尻を盆で隠しドアを開け出ていった。
テーブルへ運ばれた「メディオラヌム風カツレツ」に躊躇いなくがっつく兄ハンスと違い皿を前にして妹グレタが心配するのを察して、
「この店のオーナーも元冒険者だ!」
「だから、……これも新人だけへのサービスだよ!」
「お前らも大物になったら、店を宣伝してやれよ!」
と、胸を張りながら自身は、剣闘士用のレシピメニュー、サギノーを注文、大麦やソラ豆を煮込んだスープと煮魚料理が盛られた皿、闘技場の剣闘士が好む質素で高タンパクなメニューを食べ実戦へ備えているソールが小声で鼓舞する。
メインディッシュも食べ終え、今度はソールへ熱い視線を送る店員に蜂蜜入りの麦茶を淹れて貰い満足しているとラベラが店員へ“うっ!うーん!”と咳払いで人払いを促し、口に手を当て内股で個室を出ていく。
何をしてでも“爪痕”を残そうとする芸人のようにウザい店員の気配が消えたのを確かめるとラベラが、
「念のため、ギルドが皆に出した鑑定書を見せてくれる。」
と料理を片付けたテーブルへ鑑定書を出すよう促す。
冒険者登録したあと、片眼鏡を眼窩に嵌め鑑定を請負っていた如何にも気難しそうな若い癖に老け込んでいた職員が各人に手渡した羊皮紙の鑑定書を見せたところ、ラベラ曰く職員の鑑定が雑で慧眼の持ち主からするとザルすぎると額に皺を刻ませるほど、……頭を抱えさせた。
「誰かペンとインクを持ってない!」
とラベラがイラつき呟いた途端にトントンとドアをノックして、若い店員が、
「羽根ペンとインクをお持ちしました〰!」
と驚く4人へドヤ顔でテーブルへ置き、静かに個室を去っていくが、
――彼をまた登場させる気も名前もつける気もありません!!――
公式の見解を聞かされ、安心して、皆、会話へ戻る。
鑑定書へ『鑑定眼』の上位互換「技能」、『慧眼』で見た各々の特性・特徴を事細かに追加付記していった。
“どこを伸ばせば、より成長するか!?”の方法まで事細かに書き記されたそれを手渡され、“ラベラ良い子〰!”とその頭を撫でるソールにラベラが瞳をうっとりさせる光景……嫉妬深い妖精眼の持ち主のグレタまで……“ここまでデレるか?人前で普通!?”と頬を赤らめてしまう。
““この人達、お子ちゃまだから!私達が守ってあげなきゃ!!””
と兄妹を決意させた。
メディオラヌムの北東の城壁が外壁部にある貧民街を見捨てるかのように内壁を嵩増し堅固にされていく時点で自ずと市民も異変を感じ取り、行き場のない貧民を見捨てた内壁のみの工事に……薄々市民も脅威が迫っているのを感じ取り、いち早く元老議員、その家族、富める商人達が本拠を移している事実を見れば、誰も危機が迫っている!!と否応もなく無意識に怯えていた。
……そこへ元が何者であろう!と命を奪うよりも“護ろうとして、散った魂”に惹かれて嘗て魔神だろうと幼い弱き命を護らん!とする魂が正邪問わずにソール(今は、ちょっと不安!?)のような眞の勇者達を支えんと集い始めている!
日もまだ暮れぬうちに街の各所へ2人の装備を揃えようと武具・防具店へと足を運び見て歩いた。
兄ハンスには、合成弓を買い与えたいところだがニレの木製の「長弓」を自作していたので矢筒をプレゼントした。
狙撃手の観測手を務めるグレタには、『双眼鏡』を与えようとレンズは貴重品なので街の宝飾店を探しても見当たらず、ラベラに双眼鏡を説明しても、そんなものが有ったのか?と驚かれた。
持ち運びに便利な筒が伸縮する単眼鏡を高価だったがパーティーの持ち物だと受け取らせる。
2人には鎖帷子と皮革製鎧、短剣と魔除の御守として神殿で神官に聖別された『魔除けの短剣』も持たせた。
もちろん、ソールにもとラベラが本来高価な筈の魔獣『結晶穿山甲』の皮革鎧がその特性を引き出し扱える者がいないからと箪笥の肥やしになりそうであったのを彗眼で発見すると店員へ舐めつくような妖しい視線で誑かし安値で買い敲いた。
呆れられるか?とラベラを不安な視線をソールへ送ると、笑顔のソールを見つけ着るようにすすめる。
“こりゃ、いい女房になってくれそうだ!”
と店員へまけさせるラベラの手腕に隣で感心していたソールが何故か?ラベラに熱く抱擁されている。
兄妹間のみの思考転写、『精神感応者』である2人にラベラが同能力の持ち主だと直感させた。
当のソールは、ラベラとデレてて……気付けていない?
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