「チョ!待てよ!!」
「グローリア姉さん!出禁の癖に、ここに穀潰しの酔っ払いがいるよー!」
教室のイジメっ子を糾弾する優等生のように調理場まで響く声を挙げるフラヴィオ、強面のマッシモも額に汗が滲み出て、腰がたじろく。
所在を明かされ、次に来るであろう制裁?への恐怖であんぐり空いた口、顎に手を当てアワアワ左右を見回し、
「覚えてろ〰!クソガキ、次に会ったら……?」
『戦場の老害』が三下のチンピラの捨て科白を吐き、逃げ出す!
“ゴン!”鈍い金属音が店内に響き、今度は、フライパンを手にしたグローリアが仁王立ちで崩れ倒れたマッシモ爺さんを睨み、片手で店の倉庫まで引き摺り、連行していく。
爺さんの後頭部がさっきまで火に熱せられていたフライパンの予熱でコンガリ……髪の毛も焼き焦がされ、チリチリに、ここまで生き残った頭皮頭髪の毛根細胞の命を絶ってしまった。
マッシモ爺さんの髪の毛達へ哀悼の意を込めて店内の中高年達が手を合わせる。
髪の焼ける異臭が残すテーブル席から換気しようと皆、ドアや窓を開け空気を入れ替え、いつものように酒を少し冷めてしまった料理を口に運び出す!
この一連の騒ぎがこの店の恒例で誰も、倉庫へ連れ去られたマッシモ爺さんのことを露ほどにも心配していない。
普段調理場から出てこない髪を短く刈り揃えた栗毛、ブラウンの瞳の店主ジョゼッペが申し訳なさそうにフラヴィオのテーブルへ海鮮パエリアの皿を持って来てくれた。
「遅れてすまない!ピクルスも付けとくよ。」
そっと、皿を置き調理場へ戻る店主ジョゼッペ、……“どうせなら肉を!”とは言えない撫肩の背が語る郷愁が無言にさせてしまう。
気持ちは、兎も角も身体は12歳の育ち盛りとなったフラヴィオが皿を平らげるのは、早かった。
ジョゼッペへ代金を支払うとフラヴィオも倉庫へおっかなびっくり抜き足、差し足の忍び足で近寄り、壁に両手を鎖で拘束され足は自由だが自身の体重も支えられないほど衰弱ではなく……痙攣、手足して震えている。
アルコール中毒、その禁断症状か?それとも、南からの葡萄酒輸入ルートと関連視されてる……噂の【完全麻薬】にでも手を出したのか?
項垂れていても、意識はあるらしいマッシモ爺さんへ近づき、
「見損なったよ!爺さん……ヒロポンに手を出すなんて〰!」
フラヴィオの声に意識を取り戻したマッシモ爺さんが、
「ウッ!う~んとそう疲労回復にと手渡され……軍隊でも突撃錠って〰!?」
「……って、違うわっ〰!こんなボケ、昭和世代でも、わかる奴いるか〰!」
「だからっ〰!パソコン通信世代のPC画面じゃないともう文字を読むのも億劫で辛い中高年しか!読者がおらんのだ〰!!」
「目を覚ませ〰バカ作者ー!!」
血の涙を流しながら、絶叫するマッシモ爺さんに鬼気迫るモノを感じて、フラヴィオも後退る。
“バッシャ〰ン!”
錯乱したマッシモ爺さんへ桶に汲んだ冷水を浴びせられる。
「爺さん、……あんたは、アルコールが抜けなくて、手足が痙攣していた!」
「この店へ元教え子の冒険者へ飲み代をせびりに来たから!」
「私に根性、叩き直されていた!!」
「メタなこと言えば、主人公も敵役までフリーズして、反撃を逃れられる!?」
「本家ほど、こっちは甘きゃないんだよ!!」
グローリアがマッシモの口へ指を差し延々と説教して、残ったチリチリの頭髪を鷲掴みにして、顔を背けていたマッシモをこっちへ向かせ、般若の形相で睨み付けた。
その手には、束になってマッシモの白髪が指に巻き付いていた。
斑ハゲになったマッシモ、心の中で抜け落ちた……奪われた頭髪に別れを告げ、
「そうです。私がワル〰ございました〰!」
「グローリア、ごめんなさ〰い!」
涙を流して詫びるマッシモ、……何を隠そう、グローリアの実父で、グローリアの母とは離婚されていた。
「もっと、早く母さんへ詫びれば……!」
鎖を解かれ、泣き崩れる父マッシモの情けない様を見つめ、“ペッ!”と床へ痰を吐き娘が倉庫を去っていく。
無言で雑巾を探し、手にして汚れた床を拭くフラヴィオ、こんな状況で自身が子供にされ、“「地獄の傭兵育成教室7日間コース」を受講したい!”と言い出し辛く。
マッシモ爺さんを倉庫へ放置して、慰めもせず……自業自得……過ぎて呆れてしまう。
外は既に深夜となり、ジョゼッペの酒場も後にして、木賃宿へ寂しく足を運ぶ。
「チョ!待てよ!!」
と、前髪を弄りフラヴィオの背を呼び止めたのは、太っちょながら声だけイケメン、ヴィレジ=パインと今や金、銀等級にまで昇りつめた高位冒険者、嘗てのマッシモ爺さんの教え子達であった。
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