戦場の老害
もう日が落ち、腹も空き……【闇市場】へ向かう途中、貧民街で焼かれた脂の匂いに釣られて、何の肉か?怪しい屋台の串焼きをつい購入する。
硬いバゲットでも火を通せば、食えなくはない。
パンに串焼きの肉も挟み食べながら……鶏肉ではなく、豚肉?
“考えない方が幸せだろう!”
【闇市場】の中へフラヴィオが舞い戻った。
ランタンの火に照らされた闇の中でフラヴィオが最初に選んだのは、露天商が敷いた荒布に並んでいた錆びた鉄斧、何故か?その無骨な刃も欠けた錆びた鉄斧へ手を伸ばした。
手に持った重みは、斧、そのものだけでなく、“何かを護ろうとした者の想い”が募っている品を手にしていた。
「これ……をくれ!」
ヘレナス世界で奴隷の日給にも満たない額を店主が告げ、フラヴィオが払った1’D分の銀貨で最初に手にした武器となった。
その後に研ぎ直す作業の手間賃2オボロス鉄貨も支払った。
神殿の建物跡に襤褸を纏った神官が冒険者が最低持つ必需品、刃に銀メッキが施され、神殿で神官に聖別された『魔除けの短剣』を売っていた。
張りのない声で、
「魔から貴方をお護りする祈りを捧げた逸品です。」
小さな声でも敬虔な祈りを感じ取り、額も聞かずに銀貨で支払う、宗教宗派は違えど、ドンリュウ上人がフラヴィオの背後に立ち、“こうたんさい!”、孤児を引き取り養い育てている神官へ“ガン泣き”の同情をして訴えていた!のをフラヴィオは知らずとも元から懐から手を出し銀貨を納めていた!
遠くない別の露天商が並べていた左右一対の手の甲に名も知れない“古の神”の顔が象嵌された武骨な鐵の【手甲】が……、
“お前、気に入った!俺を買え〰!!”
と、これも何でか?フラヴィオの周りには、涙腺が緩い東西の神聖の加護が多く集まり出し、協力を訴え出していた。
『拳聖』の称号を持つ「拳闘士」の『技能』が同調して発動!
呼ばれるように手に取り拳に嵌めれば、ちゃんと真綿を巻く隙間を考えても拳ピッタリのフィット感に当の売り主が一番驚き……それ、“霊障”がキツイって、誰も嵌められなかったのに……「ウソッ〰!?」と、呟いてしまう。
「お代は?」
と、呟くフラヴィオの言葉になかなか、気付けずにフラヴィオの両の拳に嵌められた【手甲】には、
「地獄への渡し賃“1オボロス貨”だって、それを最初に預かった先代、……の言葉だ!」
と吐き捨てる店主もとうに冥途が近い老齢、云われるままに1オボロス貨を手渡し、サンチョへツケも回さずに【闇市場】を後にした。
ここには、元が何であろう!と命を奪うよりも“護ろうとして、散った魂”に惹かれて邪神だろうが魔神だろうと幼い弱き命を護らん!!とする魂が正邪問わずに【闇市場】へ集い始めていた!?
“自身を護る以上の力を得た!”とフラヴィオが命の重さを冒険者ギルドの営業職として、仕事を請け負ったときと寸分も違わず、その重さを握り締める。
後は、技と技術を磨くためジュゼッペの酒場で管を巻いてるマッシモ爺さんを探し出して、……本心では受けたくないが※「地獄の傭兵育成教室7日間コース」を受けるのみ!
酔いどれが、その傭兵生活で培ったサバイバル技術を新人だろうと歴戦の猛者だろうと血反吐を吐くまで叩き込み、扱き倒して血の小便を漏らさせる!という。
その地獄に自ら飛び込もうとするフラヴィオの決意とは?
※新入社員の思考能力を停止させ、社畜化する洗脳プログラミングではない!
ジョゼッペの酒場へ嫌々、足を進めたフラヴィオが目にしたのは、店の前で店主の女房から「穀潰し!」と罵られ殴られ瀕死状態?の路面へ俯せに倒され馬乗りされた爺さん、また、マッシモ爺さんが公衆浴場で女風呂でも覗いたのか?
黒い瞳、赤い髪を後ろに結って纏め垂らし、木綿のキトンを胸元を大きく開け着こなし、尻も胸も豊かな“ジョゼッペの酒場”店主の女房グローリアが60cm程の木の棒を振り上げ、起き上がると爺さんを蹴り飛ばし、這い蹲らせていた。
「やめろ〰!爺さんが死んじまうじゃね〰か!?」
とパスタを伸ばす為の『延し棒』“マタレッロ”を持って、頭にたん瘤が頬には痣ができている老人を痛みつける手を止めさせようと声を張り上げる。
顔を頭部を守ろうと覆う手には擦り傷が……そんな可哀想な老人をシバき倒す酒場の女房が叫んだ少年の声に“ハッ!”と、その少年の柔らかい手の指で腕を掴まれ……暴力の興奮から醒め……別のイケナイ衝動を覚えた!?
少年の腕に、その張り艶のある肌に頬を寄せ、息が荒くなる!のを必死に抑える。
腫れた瞼を開ける爺さんは、耳慣れぬ少年の声が……“バキッ!ボゴッ!!”悪魔の囁きに聴こえた!!
爺さんの頭上では、少年と店主の女房が何故か?禁断の関係に揺れ動くなか!店主の女房と少年の足は、爺さんの尻を背中を蹴る!蹴る!蹴る!また蹴り続け甚振っている。
“2人共.本気で爺さんを嫌っていた!!”
「あっ悪魔どもめがっ〰!!」
「……うっ!」
“バタン!”と路上で爺さんが事切れたのを見計らって、2人が“禁断の恋愛ごっこ”を中断して、止めの蹴りを一発ずつ放つ!
「それにしても、フラヴィオ、本当に子供になっちゃったんだ?」
マタレッロで凝った肩を叩き店内の調理場へ戻っていく店主の女房グローリアが振り返りもせず、フラヴィオの事情を言い当てた。
驚く筈のフラヴィオも地獄耳の女将さんへ
「そうなんだ!やっと神様に【贈物】を貰ったら……。」
「こんなんなっちゃった!?」
と自身に起きた奇異を明るく戯け話しながら、腰を屈め爺さんの上衣の懐、スラックスの後ろポケット、袖下にある隠しポケットから出るわ出るわ、いくつもの別々の作りの財布、ナイフ、暗器の類い、なけなしの財産であろう硬貨まで剥ぎ取ると店内へ酒場の女房グローリアの後ろに続いていく。
店内は、衛兵、傭兵、冒険者、街の商人・職人、労働者が様々な街の人間がひしめき合いながら、木製ジョッキを掲げて、“Εις υγείαν”「健やかに!」と杯を酌み交わしていた。
「みなさ〰ん!懐から財布や大事なモノをスられた方〰!いませんか〰?」
店内へ大声で叫ぶフラヴィオに“ハッ!?”と我に返り、
「ヤラレタ〰!」、「オレもだ〰!!」、「あっ〰!俺の貞操がっ〰!?」と尻を振るバカは捨て置き……次々と声を挙げる面々に爺さんから剥ぎ取った財布を一人一人へ返しながら、調理場から出てきたグローリアがすすめる席へ歩く。
「あの盗人、どうやって酒場へ入ったんだろう?」
椅子に座った途端に革張りのメニューを翳すグローリアへ感想を溢す。
「マッシモ爺さんといい、あの盗人爺は神出鬼没だよ!」
と嘆くグローリアへ「本当だ!」と相槌を打つ店内の常連達とフラヴィオである。
子供が酒場にいる不自然さも入ってくる早々に店の常連の懐の金を取り戻す機転の利く賢い子だと受け入れられた。
「じゃ〰!パエリア頼みます。」
と海鮮パエリアを指差すのを見て……、
“やっぱり、フラヴィオなんだ!?”
と残念そうに調理場へ戻る女将グローリアに驚かされる。
「あんな奴とワシを同列に語るな!若造〰!!」
背後で憤慨していたのがジョゼッペの酒場へ未払いが重なり出禁を食らってる筈のマッシモ爺さんである。
背筋はまっすぐ、白い頭髪を短く刈り上げ、頬に二筋の爪痕の疵を残す赫灼たる眼光を放つ……“戦場の老害”であった。
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