ダチ公
「情けからだろうが……悪童がすぎるぜ!」
フラヴィオの背後から声を掛けたのは、サンチョス一家の若頭デュード、見張りをしていた連中と違い彼だけは、フラヴィオが取った行動の真意を汲み取った。
振り向くまでもなく、声の主がデュードと分かり、フラヴィオも右手の拳の骨に皹が入っているのに……“やり過ぎた!”と反省していた。
「反省していたところです。」
年下のデュードに言い当てられ頭を掻く姿は、子供っぽく見え、見張りの連中もほっとする。
近寄り、フラヴィオの顎を手で軽く押さえ、前、左右に向かせ……腰を落として、じっくり見聞する。
この無拍子で飛び込まれるの苦手なんだよな?
“男に近寄られるのも、触れられるのも嫌なんだけど!!”
害意がないとせっかく神様に貰った『技能』/「機先」も発動しないらしい。
繁々とフラヴィオの顔を見定め、何か?に“ハッ!”と気付いたらしく。
「お前ら、持ち場に戻れ!」
「このガキは、俺がBossのところまで案内する。」
人払いして、デュード一人で貧民街の奥まで案内してくれるらしい。
付いていくことにしたが……無口じゃない筈の若頭デュードが先を歩き、フラヴィオに何も質問して来ないのが不思議だった。
昔は、ここいら辺りは、貧民街ではなかった。
貧困層が増える一方でここも貧民街に呑み込まれていた。
嘗て、ケルト人達の【集会所】だった建物跡を「サンチョス一家」が勝手に根城にしている。
基礎こそ石が積み上げられた造りだが建物の大半は木の建築物で所々に板を当てただけの荒い補修の跡も散見される。
出入り口をガタイの良さそうな男が2人、両手を組んで周囲に眼を飛ばしている。
見張り番の2人が先に若頭デュードを見つけ、
「「若頭、お疲れさまです。」」
直立不動で揃って挨拶する。
「お疲れさん!」
デュードが若い衆2人へ軽く手を振り返し、鉄板と鉄鋲を打ち頑丈に補強された木戸を開けて、フラヴィオを迎え入れる。
何度も入った「サンチョス一家」の根城だが男所帯なのに掃除を任せている舎弟に厳しく躾ているので清潔な空間である。
後ろからフラヴィオの前へ出て、
「こちらです。」
とサンチョスの部屋、奥に入って階段を昇り、廊下を進み右へこれも頑丈さを優先した武骨なドアの前に立ち、
「Boss、客人をお連れしました。」
デュードの報告の声を聞き、
「中へお通ししろ!」
ドスを効かせた声がドア越しに聴こえてくる。
“ギィ〰️!”
重いドアをデュードが開け、フラヴィオがサンチョスの書斎に入ると
“ギィ〰️!バタン!!”
と重いドアが閉められた。
「それでは、あっしは此処で失礼します。」
何かを知った素振りも匂わせず、デュードが退室していく。
「サンチョス……、説明、聞いてくれるかな?」
後ろを一度振り向き、前に
“でぇ〰️ん!”
と書斎机の椅子に腰を降ろして禿げ始めた髪に仏頂面を下げているサンチョスへ目をパチパチさせながら笑顔で語り掛けるフラヴィオ。
自身の事になるといつもの拍子抜けした調子に戻ってしまう。
まだ、“老眼じゃない!”と眼鏡を拒んでいたサンチョスが目を細めて12歳に若返ってしまったフラヴィオを睨む。
背も縮み声も若返って、いくらか高い声だが……口調と身振り素振りがフラヴィオ、そのもの……まぁ〰️!当人だからね。
「お前〰️?フラヴィオか!?」
「何でまた、若返ってちまって……禁術にでも手だしたのか?」
前にせり出た腹を机につかえさせても、気にせずフラヴィオの顔を覗き込む。
「神様が此の世界に来て12年経ったから『賜物』をくれたんだけど……思わぬ副反応でな!」
フラヴィオもお手上げのポーズで次第を話す。
「何てこった?」
「まぁ〰️!座れ、話を聞こう。」
言葉に甘えて、一応揃えられている応接セットの皮張りのソファーに座る。
両手で天を仰ぎ、手をこめかみに翳し、自分から席を立ちフラヴィオを抱擁して、難儀を労る。
“おっさん臭いから止めろ!”
と言葉にせずにサンチョスを体から離す。
応接セットのソファーに座ったまま、此迄の経緯をフラヴィオが話し出した。
・
・
・
「そりゃ、難儀だったな!」
聞き終えたサンチョスが腹を突き出し、椅子の上で両手を広げ、ほんの数日の内にフラヴィオに起こった数々の厄介な出来事に同情する。
「まったくだ!」
頭を掻き途方に暮れるフラヴィオを見て、
「うちで働くか?」
【闇市場】で「サンチョス一家」の身内として働くか?と誘われる。
フラヴィオもサンチョスの誘いに乗りそうになるが、
“ぽっと出のガキがBossサンチョスに顔が明るいのは不味い!”
少し考えて、
「それも悪くないが見てくれが……ガキだ。」
「冒険者で箔が付いたら、世話にでもなるよ!」
最初の考えを変えず、サンチョスから目をそらして、冒険者になると告げた。
それならば、早速!とサンチョスが機械技巧に小さな双眼鏡が付いたオペラグラスのようなモノの持ち手を握り、フラヴィオの顔を凝視する。
「冒険者ギルドへ納品予定だった『魔法道具』で誰でも【鑑定】出来るアイテムだ。」
とサンチョスに説明され、固まるフラヴィオ、何を言い出されるか?
不安しかない。
自身を過小評価ばかりしてきたフラヴィオには、『技能』に自信が持てなかった。
――ステータス――
●種族: 種族「人間」、「転位者」、Lv.41
●個体名称:ヘレナス「フラヴィオ」、現世「Φ∀⊇★Πγ※Ο」
●称号:『拳聖』
●HP:140
●MP:50
●AGI:250m1/4秒
●【職能】:『拳闘士LV.Ⅲ』
●『賜物』: 【特異技能】/『日ノ出』、翌朝、全HP・MP・全状態回復…etc.
●『技能』/「機先」
●『魔法』:なし
●『特技』:なし
●【権能】:なし
●『守護神』:「アポローン」
羊皮紙に羽ペンで書き写して貰った鑑定結果を読んでフラヴィオも珍妙な面持ちになった。
「近接戦闘に特化してるな!」
「やっぱり、うち向きか?」
「それとも、闘技場の剣闘士向きだな!?」
とサンチョスが見ても、近接戦闘、対人戦闘向きの拳闘士は、冒険者には向いていない?
喧嘩上等の街中での対人戦闘なら兎も角、自然環境下での魔獣相手には不利にしか見えなかった。
「マッシモ爺さんが今、何処にいるか?」
「知ってるか?」
フラヴィオが羊皮紙のステータスをじっくり目を通して、傭兵から冒険者になって、3年前に引退したマッシモ爺さんの名前を出した。
懐かしい名前を出され、サンチョスも思い出そうとする。
「住まいは、知らねーが毎夜、ジュゼッペの酒場で管を巻いてる筈だ!」
いくら、“酒を控えろ!”と皆が口をしょっぱくして注意してるのに……、呆れながら
「頼み事があったのに……、止めなきゃダメか?」
「ありがとう!市場で買い物してから酒場へ顔出してみるよ。」
これでサンチョスもフラヴィオも話は済んだとフラヴィオもサンチョスへ礼を言ってソファーから立ち書斎から出ようとする。
「黒い森から山脈を越えて魔獣、得たいの知れない魔物が出始めている。」
「冒険者稼業も気ぃつけな!」
「あの爺々も昼から管、巻いてねぇ〰️だろうから、市場で必要なもん、俺の名前出してツケで揃えとけ!」
難儀してるダチを思い情報と市場と言っても闇市場での便宜を図ろうとする。
「助かる!出世払いでいいか?」
いつもは、遠慮しがちな筈なのに素直に甘えるフラヴィオにサンチョスも面食らう。
「期待してるよ!新人!!」
顔を潰さずに答えたのか?
それだけ、苦しいのか!?
口で問わずにフラヴィオを送り出した。
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