悪童
雑然と羊皮紙の書類が積み重ねられた机と椅子の簡素な書斎、その部屋の半分を占拠する錬金術でも【禁忌】とされている『疑似生物製造技術』、その創造過程で分裂させ双子にした疑似生物の耳、口を素材にした“双子の同調”を通信に用いた『通信魔法道具』で商談を続けていた髪の薄くなった男サンチョスは、部下が机の隅へ羊皮紙に、
“フラヴィオさんのお知り合いがウチラらのシマにいらっしゃいました。”
と走り書きしたメモを置かれた。
目にした途端に驚きの貌、それでも口調を変えずに先方と商談を続ける。
”……では、仕入れ額は、いつもの……2割り増しにして貰いますよ!”
”ガチャッ!”
受話器を下ろすと痰壺へ吐くように
「得たいの知れない黒い森からの波動に気付けない……ボケどもがっ!」
もう腹が出て、暴れることも出来ないサンチョスは、城壁の外の情報を逐一、冒険者達から仕入れている。
“ギルドの馬鹿ども、この街の近くまで前兆が……!?”
日頃の不満を吐き捨てた。
「フラヴィオの知り合い?」
「どんな奴だ?」
思い出したかのようにメモを机の隅に置いた部下に“聞いていないか?”確かめる。
「まだ、12ばかりのヒヨッコみたいですが……?」
「顔は、フラヴィオさんと同族らしい平たい顔で……ウチラのシマの外でイキッてるクソガキをシメたそうです!?」
報告する部下も見張りを任せた奴からの話をそのまま、伝えながら……どんな奴か?会ってみたくなった。
腕を組み、天井を見上げていたサンチョスが、
「連れて来い。ワリィようにはしね〰️!」
「ガキでも“客人”として扱え!」
後ろに立っていた部下も納得して、
「若い奴だと勘違いするかもしれません!」
「あっしがお連れします。」
アシンメトリーに髪を長く、反対側を短く刈り込み、細面の眼窩に灰色の瞳の麻の下着の上に一枚布のTOGAを纏い股下は“山羊革の洋袴”を穿いた嘗て現世の羅馬市民のような出で立ちのサンチョの“右腕”と云われるデュードが勝手でた。
「任せた!」
とサンチョスが一言で済ませ、別の問題に頭を抱え始める。
この男サンチョスは、……何処かの自治体の首長以上に……実は、人の世話好きの苦労人で容姿からか?”好人物”なのに悪人と誤解されがちだった。
そんなことを露も知らないフラヴィオ、貧民街に入ってから周囲に見張りが付いて……行動しずらい!
誰が初めたのか?蚤の市ならぬ“貧者の闇市場”、武器防具、食糧・生活物資の“市場”もしくは、物々交換、農閑期の農民が兼業する傭兵の呼集・派遣・請け負い……、異民族との交易の窓口まで北方辺境で生き抜くための集い……【集会所】でもあった。
今、手にいれなければならない……“力”、過剰な暴力ではなく身を守る為の武具を探す目は、露店商が地面に敷いた荒布の上に無造作に置いた短剣、斧へ……確かに防御にも使えるし、与える一撃で相当なダメージを敵対者に与えられる!
実は、……ヤクザな冒険者稼業ぐらいしか、成れそうな職の宛もなく得物を見繕うと品定めをしている内に研ぎ直せば、勝手もちの良さそうな斧へ目が食い入っていた。
よく冒険者ギルドが登録仕立ての冒険者に武具防具店を紹介する件があるが……裏で繋がっていて……結構ボッテたりする!
此の世界だけであることを祈る。
鑑定眼など持っていないが此処の連中は、売ることに必死でも粗悪品は、それとして直ぐに屑鉄にして、鋼材の材料に売って儲けを狙う。
悪どすぎても、相手が死ぬ確率を高める事だけは最後の良心で避けていた。
斧から目が離れないフラヴィオをサンチョス配下の見張りの若い衆が
“こいつ、初心者がショートソードに目が移りがちなのに……わかってやがる!?”
自身も農閑期に穀潰しと村を追い出された傭兵崩れだったので嫌でも戦場の惨さを知っていた。
背後への警戒が疎かになっていたフラヴィオの袖の下を狙おうと忍び寄る影?
『技能』/「機先」を習得した所為か?
フラヴィオの身体が背後から襲ってきたスリへ勝手に反応して、懐へ差し込まれたスリの手を掴む。
そのまま、体を落とし、相手の腕を逆手に絡め取り締め上げている。
体が覚えていたのか?
冒険者ギルドの営業に在職中、嫌々でも受けさせられていた護身術の研修で習った『関節技』がここで活かされ相手の細腕を極めていた。
折られてはいないが腕を締め上げられ、
「痛っ~!」
「折れた!折れた!?」
と泣き喚く……薄汚れた身なりの少年、周りの露店商もまた、”あいつか?”と呆れ顔になる。
背丈は12歳に戻ったフラヴィオよりは大きく歳も2つ程上に見えた。
身長160㎝か?ケルト人、エトルリア人現世では【羅馬人】の言葉で「未知の人」の意味するガリア系か?病的に白い肌で高い鼻に赤みがかった金髪の天パー……残念なのは長い馬面だった。
手足は、長いが痩せ気味、鋭い瞳は碧眼、薄い唇……女にはモテね〰️!
無言でフラヴィオがガリア人らしきスリの少年を観察している貌が少年の癇に障り、
「平べったい顔してる癖に生意気に俺様の腕を折りやがってぇ〰️!」
地面に押し付けられても、フラヴィオの顔を見て異民族のガキと侮り、
「ち・治療代払いやがれ!!」
脅そうと睨みつける。
“バシッ!バシッ!!”
フラヴィオが性格に似合わず、少年の両頬を張ると頭髪を鷲掴みにして、フラヴィオを見張っていた若い衆へ目を向けさせた。
「お前、奴等の面子潰して……指切り落とされても知らねーぞ!!」
全て、【闇市場】を仕切る『サンチョス一家』に見られていたことを少年へ報せる為だった。
「わかったよ!俺が悪かったよ〰️!!」
自分の立場を知り、焦り出し泣き叫ぶ。
若い衆もフラヴィオが大人しくなった少年を優しく諭すと思っていたら……
「お前、銭持ってるだろ!」
「跳んでみろ!」
少年を脅して、脛を蹴りあげる。
「ひっ!」
と痛みからの逃れたさに少年は飛び跳ね。
“チャリン!チャリン!”
硬貨の鳴る音がすると、
「これで全部か?」
……全部ではないが有り金の半分をカツアゲした!?
少年が解放され遠くへ走って逃げる途中で振り返り、
「覚えてろ〰️!」
腕を摩りながら負け犬の如く吠えて逃げ去った。
けっして、元上司カエルラに刺されてから性格が幾らか歪んだ……のではなく“面子を潰した!”と若い衆から制裁を受けないように少年が不良にカツアゲされた体裁をとってあげたのだった?
まだ、骨に皹の入った拳を無言で摩り、歯を食い縛るフラヴィオの思いを誰も知らず。
「あいつ、ぜってぇ〰️!フラヴィオさんの息子じゃねーな!?」
12歳に戻ってしまったフラヴィオを若い衆がフラヴィオの“隠し子”と踏んでいたが性格が違い過ぎる行動に驚かされていた。
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