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セクハラですよっ⁉

 綾香の第二研入部から二日後の授業後。いつものようにホームルームが終了し、一颯のもとに、帰り支度を済ませた綾香が近づいてくる。


 もう松葉杖の補助はなく、サポーターの力を借りながら、自分の足で歩いていた。


「行こ?」

「――、」


 ここ数日、放課後になれば毎回一颯のところに真っ先にやってくる綾香。友人たちとは完全に決裂してしまったのか、それとも目下交渉中なのか。いずれにしても、一颯の出る幕はなく、ありのままを受け入れるのみ。


 のそりと立ち上がる一颯。二人は並んで教室を後にした。


 廊下にさえ出てしまえば、クラスメイトたちの視線はなくなる。綾香の表情が和らぎ、ぎこちなげな笑みがとれた。


「ねぇ、藤見君。藤見君って、成績とかいい方?」

「まぁ、それなりには。そう言う三浦は出来ない方なの?」

「ううん、悪いって程ではないわよ? ただ、二学期に入ってから、授業の進みが速くなったじゃない」


 この付属校では、一学年時二学期より、通常の高等学校で学ぶべき範囲に加え、魔道学を基礎とする諸学問を学ぶことになる。すなわち、単純に、一般の高校生よりも勉強量が増加しているのだ。


 中学から高校に上がれば授業スピードも当然上がる。それにやっと身体が慣れてきたところで、更に上乗せされたのだから、無理が生じるのは仕方のないことかもしれない。


 それに中学なんて、魔道具の魔の字くらいしか教えてくれない。精々が、人体内の魔力の役割の概要――脳の神経細胞に作用して記憶保持を促す――程度だ。それがこの高校では魔道具の歴史を学び、理論を、機構を――という風。地盤が出来ていないところに一気に巨大建造物を建てようというのだから、まあ、苦しい。


「なるほど。まぁでも、二年に上がったら更にきつくなるらしいから、さっさと慣れておけよ」

「う……。で、でも『一般』なら、そこまでなんでしょ?」

「まぁ確かに『専門コース』よりかは、量は少ないだろうけど、今より内容の方は難しくなるのは変わらんし、結局今よりかは増えることになると思うぞ」

「はぁ、まあ、やっぱりそうよね……」


 下駄箱に到着し、靴を履き替えていく。そして再び歩き出した。


「三浦、具体的な成績は?」

「え、えーと……平均くらい?」


 より正確に言えば、二一〇人中、一三〇位前後。まあまあのサバ読み具合である。


「へー、意外に低いんだな」

「む――意外って、藤見君は私のことどう見えてたの?」

「ふむ――ああいやでも、よくよく考えてみればそんなもんか」

「ねえその言い方、ちょっと気になるんだけど」

「んー、まあ地頭が良さそうな印象ではあったんだけど、謹慎期間中とかのこと考えると、頭のねじ何個かどっか行ってても不思議じゃない気がしてな」

「はあ⁉ あの時、私がどれだけ心配してたか――!」

「ああ、うん。そうだな、俺が悪かった。だから落ち着いてくれ。怪我に障るぞ?」

「…………、」


 綾香は納得していない様子ながら、怒りを収める。と、今度は訝しげな視線を一颯へと向けた。


「そういえば、藤見君の方の怪我はもうすっかり良くなったのね」

「ん? ああ、まあな」


 またその話か、と一颯は思った。一颯の怪我の件を、綾香はいつまでも引き摺り過ぎている。二週間も経っているのだから、ほぼほぼ完治していることに不自然さはないだろうに。


「昨日も腕とか、それなりに包帯してたわよね」

「あー、ちょうどガーゼとか取っても良くなってな」

「ふーん……」


 じろじろと一颯の身体を観察する綾香。


――そういうのを止めとけって言ってるんだけどな……。


 女から男へのセクハラというものもこの世には存在するのだということを、彼女は知るべきだろう。止めさせるには、いっそ上は全部脱いで完治したことをアピールした方が早いのかもしれないが、そういうわけにもいかないし、根本的な解決になっていない。


――今のうちに、言うべきことは言っておくか。


「そろそろ満足しとけ。周りに誰もいないってわけじゃないんだぞ」

「う……そ、そうね」


 下手すれば直接触ってきそうだった綾香を窘めて、一颯は続ける。


「三浦、この際だから言っておく」

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