10 第五階層へ
「ライトニングフォール!」
バリバリバリバリッ!ズドーーーーーーーーンッ!!!
無数の雷撃が天から鉄槌のごとく降り注ぐ。
落雷の威力たるや大地を揺らすほどだ。
ディアルとミーナの周りをぐるっと囲んでいたアクアオーガの大群は、殲滅の雷撃によってほどんどが吹き飛んだ。
それにしてもこの威力。迷宮が崩壊したりしないのだろうか。
迷宮内は魔力に満ちていて、多少の破損程度ならそのうちに修復される。
それでもあまりにも大きな魔法を使えば、その威力に耐えかねて崩壊することもある。
しかしこの雷属性上級魔法、ライトニングフォールの使い手はミーナその人。
これでもきちんとそのことを考慮して迷宮が耐えられるように力を抑えてあるのだ。
「本当に何時見てもとんでもないな。ミーナの魔法は。」
ディアルも圧巻のミーナの魔法。百体は居たアクアオーガの大群も残りは四体。これなら余裕だ。
ディアルは抜剣すると共に疾走。
一瞬のうちに間合いを詰めまずは一体。高速の剣閃でアクアオーガの首をはね飛ばした。
恐らく首をはねられたことにも気付かずに死んだことだろう。
続けてそのまま刃を返し隣に居た二体目を斬った。
しかしその時、残る二体が同時にディアルを撲殺せんと、水の魔力で構成された巨大な戦斧を振り下ろした。
ディアルはアクアオーガを斬り倒したばかりで体勢が最悪だ。
回避はおろか防御も間に合うかどうか。
ミーナの魔法による援護も距離が遠いためアウト。
ディアル絶体絶命か!?
「パパーーーーーーーーーーっ!!!」
ディアルの死を予見したミーナが涙目で声の限り叫んだ。
しかし
「俺を舐めるなよデカブツ共がっ!」
両戦斧がディアルの頭を押し潰そうとしたその時、ディアルは起死回生の一手を打った。
ディアルは振り抜いた剣を逆手に持ち変えて両戦斧を受け止めた。
そして巧みな技量でそのまま受け流し、力に逆らわず身体を回転させて完全に力を逃がした。
ディアルはこの危機を脱してみせた。
今度は逆にアクアオーガたちの体勢が悪くなった。
これを見逃すディアルではない。
透かさず懐に潜り込み、目にも留まらぬ速さで白刃を閃かせ、二体のアクアオーガを一瞬で斬り伏せた。
ディアルが剣を鞘に収めると、ミーナが泣きながら走って来た。
「パパぁぁ。良かった。・・・ぐす。助かって良かった。」
ミーナはディアルに抱き着き、安堵の涙を流した顔でディアルを見上げた。
その可憐な表情がディアルをキュンとさせ、暴走させた。
「あぁ、ミーナ。何て可愛いんだ!もう可愛い!可愛い!可愛すぎる!」
ディアルはミーナの頭をわしゃわしゃと撫で、だらしない表情で可愛い連呼を始めた。
ミーナは嬉しそうににっこり笑った。
その顔にもう涙は無かった。
「さーて、とっととリヴァイアサンをぶっ飛ばしてミーナをもっと可愛がりまくるぞーっ!」
しかしディアルが何時ものように暴走し出したので、ミーナは何時ものようにディアルを窘めた。
「もうパパ!そんなこと言ってないで早くリヴァイアサンを倒しに行くよ!」
「あ、ああ。そうだな。こほん。そろそろ行かないとな。」
「もう、しっかりしてよ。」
ディアル、こんな所で娘のミーナに窘められてどうする。
だがミーナは呆れているようで、何処か楽しそうでもあった。
さあ、いよいよ最奥部第五階層は目前だ。
二人は互いの気持ちを確かめるように視線を送り合って、意志の籠った眼で二人同時に強く頷いた。
二人の想いは一つ。この先に眠っているリヴァイアサンを倒し、シーリヴァイの街を守り抜く。
リヴァイアサンがどれだけ強いのかなんて分からない。
でも怖くはない。何故ならお互い信じているから。
ディアルはミーナの魔法を、ミーナはディアルの剣技を。
信じ合える最強の力同士が合わされば、もう怖い物なんて存在しない。
そう思えるほどに今二人の心は一つになっている。
二人は同時に一歩踏み出し、第五階層への階段を踏んだ。
ディアルとミーナは階段をゆっくりゆっくり下りていく。
「パパ、魔力がとっても濃くなって来た。大丈夫?」
階段を下りていくにつれて迷宮内に満ちている魔力濃度が更に強まって来ている。
ディアルはかなりの濃密さに頭痛を覚え頭を押さえた。
「ヤバいな。魔力を持たないことがこんな所でデメリットを発揮するなんて。」
魔力が多少なりともあればここまで苦しくなることは無いのだが、魔力を一切持たないディアルはリヴァイアサンの魔力の濃密さに激しい酔いを覚えているのだ。
これではリヴァイアサンの前に出たら善戦出来るどころか真面に戦えないだろう。
ミーナが回復魔法で酔いを覚ましてくれた。
ディアルは楽になったので少し歩く速度を速めた。
「早歩きして大丈夫なの?」
ミーナがディアルを心配して言う。
「早く倒したいしな。それにこの濃密な魔力にまた当てられたらミーナに更なる負担をかけることになる。自然治癒の効果が切れる前にリヴァイアサンの所に辿り着きたいんだ。だからむしろ早歩きした方が俺的には良いんだ。」
ディアルはそう言って歩を進める。
ミーナは分かったとディアルに続いた。
そして早足で階段を下りること小一時間。
一向に第五階層に辿り着けない。
「ミーナ、この階段本当に第五階層に行けるんだよな?」
「うん。リヴァイアサンの魔力が強くなってるから多分合ってると思うよ。でも・・」
ミーナは魔力を感知してこれまで正しいルートを割り出して来た。
この階段だって正しいルートのはずなのだ。
なのだが、下りても下りても第五階層は見えて来ない。
延々と続く螺旋階段。魔力濃度は増していくばかり。
自然治癒の効果も切れた。進むうちにまた頭が痛くなって来た。
「くっ。」
上から襲って来る濃密な魔力にディアルはどうかしそうになる。
「パパ、もう一回かけるね。」
「ああ。たの」
頼む。そう言いかけてディアルは言葉を紡ぎ出すのを止めた。
上から魔力が襲って来る。
その感覚を疑問に思ったディアル。
何故そのような疑問を抱いたかというと、今までは進めば進むほど魔力の濃密さが増し、前方から襲って来るようだった。
ならば今回は下に降りているのだから、下から濃密な魔力が上がって来るはずだ。
しかし何故か魔力は上から下に押さえ付けるように流れて来る。
まるで上に来るのを阻んでいるかのようだ。
「いや、実際に阻んでいるのか?」
「どうしたの?もしかしてパパ、何か分かったの?」
「分かったっていうよりはもしかしたらって感じなんだけど。一つ試して欲しいんだ。」
ディアルは自分が抱いた疑問をミーナに話した。
「なるほど。確かにこの魔力の流れ・・・何か上にある?」
ミーナは顔を上げて上を見た。目を閉じ魔力の流れを感じ取る。
かなり濃い魔力が流れて来る。まるで何かを隠しているように。
意識を集中させ上にある真実を見る。
何分間そうしていただろうか。すると漸く見えた。
「パパ!」
「何か分かったのか!」
「あのね。リヴァイアサンは上に居るよ。それにもう一人誰か居る。」
「何だと!もう一人誰か居るだと!」
「うん。この様子だと戦ってる。」
「まさかあの冒険者か?兎に角上にリヴァイアサンが居るんだな?」
「うん。」
「行き方は分かるか?」
「それならもう分かったよ。でもちょっと大変かも。」
「大変?何か大きな力が必要なのか?」
「この魔力を吹き飛ばすよ。」
そう言ってミーナは両手を上に掲げ、魔力を両手に収斂した。
雷の魔力がミーナの両手に集まっていく。
その光は見ていると眼が焼けてしまいそうだ。
物凄い電撃で大気が震える。その場に立っているだけでビリビリと痺れる。
念の為ディアルはミーナに結界を張ってもらっていたので痺れたりはしないが。
遂にミーナの両手に収斂された雷の魔力が竜の形を成した。
そしてミーナは雷竜をリヴァイアサンの魔力の波涛にぶつけた。
空間が割れるような轟音が迷宮内に鳴り響く。
雷竜と魔力の波涛が激しくぶつかり合い、大きな振動波が周辺を叩き付け破壊する。
ディアルを護る結界もピキピキとひび割れ出した。
しかし僅かにミーナの雷竜が押している。
徐々に水の魔力を削っていく。すると段々と天井が見えて来た。
「パパ、あれ!」
「ああ。転移陣だな。」
リヴァイアサンの魔力の波涛で今まで見えなかったが、第五階層への正しい行き方は天井の転移陣から転移する形で行くようだ。
だがここで一つ問題がある。
「でも困ったな。転移するにもまず届かないぞ。」
そう。転移陣に届かないのだ。
転移陣はその中に入り立つことで転移が可能となる。
しかしこの転移陣は天井にあるので、どうやって中に入るのか見当がつかない。
「よじ登るとか?」
「いや、それ無理だろ。」
「だよね。じゃあ風魔法で上に飛んで逆さに立つ。とか?」
「無理だな。風魔法で上に飛ぶことは出来るけど立つのは普通に無理だろ。」
ミーナが色々案を出すがどれも不可能。
途方に暮れていたその時、ミーナはある違和感に気付いた。
「あれ?あの転移陣何か付与されてる?」
「どういうことだ、ミーナ?」
「最初見つけた時から何かあの転移陣おかしいなって思ってて。」
ミーナは最初にあの転移陣を見た時に何か違和感を感じた。
何か余分な箇所があるような気がしたのだ。
ミーナは転移陣を作ったことはないので詳しくはないのだが、知識としては頭に入っているので分かる。
「あの転移陣は何か付与されてる転移陣だよ。だって外周円が光ってないもん。」
「外周円が?ああ。確かに外円だけ光ってないなあ。で、それがどうしたんだ?」
転移陣の外周円が発光していないことには何か意味があるのか?
ディアルは魔法に詳しい方ではないが、ある程度は勉強している。
だから知っている。そもそも転移陣の上に魔法を付与することは不可能だということを。
それに転移陣が何処か一部分でも発光していないということは、転移陣として欠陥があり機能しないということだ。
だから逆に説いた。付与なんて有り得ないと。
「ミーナ、そもそも転移陣に何か魔法を付与することは出来ないんだ。それをやると転移陣として機能しなくなるからな。」
しかしミーナはディアルの説明を聞いて逆に申し訳なさそうに苦笑した。
「ミーナ?」
「あのね。パパの言ってることは正しいよ。正しいんだけど気付いてないの。」
「気付いてないって何に?」
「私たちが天井に立ってたことに。」
「・・・は?」
ディアルはミーナの突拍子もない説明に理解が追いつかず、思わず間の抜けた言葉を発してしまった。
今の言葉はまるで天と地が逆転していたというような言い方に聞こえる。
ディアルはそんなこと有り得ないと首を左右に振ったが、
「天地逆転・・・・・あ!そういえば階段に足を踏み入れた瞬間、一瞬目眩がしたような。」
「そうなの。私も転移陣を見るまで気付かなかったけど、ここは天地が逆転した逆さの空間なの。だから私たちが今立ってる場所は天井なの。」
「なるほど。それで天井に転移陣があったってことか。でも転移陣の上に逆転の魔法を付与したら転移出来なくなるぞ。」
「出来なくていいんだよ。リヴァイアサンは誰も第五階層に来させる気なんて無いんだよ。だから態と転移陣の上に直接付与する形で逆転の魔法を使ったんだと思う。あれが逆転の魔法の式だよ。」
そう言ってミーナは転移陣の一部分を指差した。
ディアルもそこをを見ると付与されている魔法の式が見えた。
しかしそれは全く読めない文字で構成されていた。
竜言語だろうか?ミーナに訊くとこくりと頷いたのであれは竜言語らしい。
「ミーナは竜言語が分かるんだな。」
ディアルは感心したとミーナの頭を撫でた。
するとミーナはえっへんと胸を張り、誇らしげにとんでもないことを言った。
「だって私天使だもん。天使は竜言語が分かるんだよ。それにドラゴンを飼ってるお隣のおじさんに詳しく竜言語を教わったから竜言語魔法も多少は使えるんだよ。」
「は?え!天使は竜言語が分かるのか!?それに隣のおじさんがドラゴンを飼ってる!ドラゴンペットにしちゃってるの!天界って本当に凄い所なんだな。」
ディアル驚く。天使が竜言語を理解しているということでは無い。
まあそれも驚きだがドラゴンがペットとして飼われていることの方がもっと驚きだ。
ドラゴン飼えるの!?でかいぞ。危なくないの?噛まないの?火噴かないの?
等とディアルは驚愕のあまりミーナにマシンガンのごとく質問を捲し立てた。
ミーナは落ち着いてとディアルを宥め、質問に答えた。
「ペットとして飼うって言っても人間が犬や猫を飼うみたいにするんじゃなくて、契約してドラゴンを眷属にするの。そうすると眷属形態っていう小型の状態になるの。だから問題なく飼えるの。」
「へー。そうだったのか。」
安心したと胸を撫で下ろしたディアル。
あのサイズのまま家の前に座らせておくとか、あのサイズの竜小屋とかがあったらどうしようかと思っていたので、ミーナから安心出来る答えが返って来てほっとしたディアルだった。
「さてと。えいっ。」
ディアルが他愛もないことを思っているうちに、パリンという音がして竜言語魔法の付与が破壊された。
ミーナが手際良くやったのだ。
そしてまたも一瞬目眩がディアルを襲い、
「うっ。・・・お?」
瞑っていた眼を開けるとディアルは転移陣の上に立っていた。
「歪んでいた空間が元に戻ったのか?」
「うん。これで転移陣は正しく機能するよ。」
ミーナがそう言うと、今まで光っていなかった外周円が淡い青色に光り出した。
するとディアルとミーナを青光が包み込み、
「おおっ!」
「何か綺麗。」
二人が転移陣の上から消えたと同時に転移陣の光は消え、再びその空間は天地が逆転した。
気が付くとディアルとミーナは大きな扉の前に立っていた。
扉の向こうに途轍もなく濃密で巨大な魔力を感じる。リヴァイアサンだ。
ディアルは嫌な汗が流れ出るのを感じた。
ドラゴン討伐の時に対象のドラゴンを眼前にしてもこんなにも恐ろしい気はしなかった。
ディアルは初めてドラゴンに恐怖した。
剣聖の名を恣にしてから久しく感じていなかった濃密な死の気配。
それが今ディアルを襲っていた。
それを察してかミーナが手を握って来た。
大丈夫だよ、私が側に居るから。絶対に護るから。
ミーナの手の温もりからそう言外に伝わって来た。
「ありがとう。ミーナ、俺はもう大丈夫だ。恐怖なんて吹っ飛んだ。リヴァイアサンをぶっ倒そう。」
ミーナの温かい手とほっこりする笑顔が、自然とディアルから恐怖を取り払った。
すると不思議と何でも出来るような気がして来た。力が湧いて来た。
このままリヴァイアサンを倒せるかもしれない。
そう思えて来た。
ミーナの想いがディアルを勇気付けた。
「行くぞ!」
ディアルの声にミーナは
「うん!」
と元気良く力強く頷き、一歩踏み出した。
扉の前に来て、ディアルは一つ深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。
この扉の向こうにリヴァイアサンが居る。
まだ完全には力を取り戻していない。今なら倒せる。
「ふぅ。」
どれくらいそうしていただろうか。長い沈黙の後、ディアルはミーナに言った。
「扉を開ける。開けた瞬間何か攻撃されるかもしれない。魔法を準備しておけ。」
「分かった。パパは?」
「俺には魔晶石がある。飛びっきり良いのがな。だから大丈夫だ。」
ミーナはディアルに言われた通り超級魔法を撃てるようにまで準備した。
高まる緊張感がその場に静寂をもたらす。
「扉を開ける。」
重々しい一言を吐いた後遂にディアルは扉を開けた。
扉を開けると二人の眼に真っ先に飛び込んで来たのは、青い魔力を全身に纏った巨大な竜。
他でもない、リヴァイアサンだ。
リヴァイアサンはディアルとミーナに気付き、徐にそれでいて威圧感を存分に放ち、顔を二人に向けた。
顔を向けられたディアルとミーナは、それぞれ剣を抜き放ち雷魔法を展開した。
リヴァイアサンがこちらを睥睨する。
しかし見下すような眼ではなく、待ち侘びていた者が現れ期待しているような眼だった。
油断なく構えるディアルとミーナに魂に響く力強い声が聞こえた。
「漸く御出座しか。天使の子よ。そして聖魂の持ち主よ。我は汝等を待っていたぞ。」
突然聞こえた魂に残る声にディアルはたじろいだ。
ミーナはあまり驚いていないようで、顔色を変えることなく油断なく構えている。
ディアルは頭を振って気を取り直し、リヴァイアサンに問うた。
「今のはリヴァイアサンの声なのか?」
「如何にも。我は人語を理解する。だが汝等のように言葉を発することは出来ぬ故、直接汝等の魂に声を届けている。」
なるほどと思った。神竜ともなると人間の言葉が解るようだ。
だがそれはさほど問題では無いためこれ以上は訊かない。
それよりも是非とも訊きたいことがディアルにはあった。
先リヴァイアサンの口から聞いた言葉に違和感を感じた部分があったのだ。
しかもそれは何だかとても重要なことのように思えたのでディアルは質問した。
「突然聞こえた声のことは分かった。だがもう一つ気になったことがある。リヴァイアサンは今俺たちを待っていたって言ったな?」
「そうだ。」
「それでその時の俺たちの呼び方なんだが、それに俺は違和感を感じた。天使の子って呼んだのはミーナのことでいいか?」
「その幼き娘は天使で間違い無い。人間界に堕とされ本来の力は大きく失っているようだがな。」
「で、肝心なのはその次だ。聖魂の持ち主。そんな言葉が聞こえたんだが、それは俺のことなのか?」
「如何にも。汝は特殊な魂を持っている。」
「特殊な魂?」
ディアルは自分の心臓に手を当て瞑目する。
特殊な魂とは何なのか。意識を集中させても分からない。
ディアルはリヴァイアサンの言葉を待った。
「汝の魂は聖魂と呼ばれる極めて希有なものだ。」
「聖魂?何だそれは!?一体どんな魂なんだ!?」
聖魂。そう聞いてディアルは食い気味に尋ねた。
聖魂など初めて聞いた言葉だ。
ディアルは子供の頃本をよく読んでいた。
この世界の歴史や魔法のこと。ドラゴンや精霊のこと。
それらに関する本は好きで結構読んだのでそれなりに詳しい。
しかし聖魂のことはどの本にも記述されていなかった。
しかもそれは自分のことなのだ。
知りたくて仕方がないのは当然だろう。
ミーナも自分のことのように真剣な表情で耳をそばだてている。
二人が固唾を飲んでリヴァイアサンの言葉を待つ。
緊張と期待が臨界点まで高まったその時、遂にリヴァイアサンが聖魂について話した。
「聖魂、それは・・・・」
「え?え!?えええええええええええええ!!!!!」
その真実はディアルを、いやミーナをも驚愕させるには十分過ぎる内容だった。