天体
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三層を目指すなら、昼食を摂って、二刻ほど昼寝をしてから出発するといい。馬のルルから、アドバイスを受けた。彼女は、荷馬車を引くだけではなく、優秀な案内人でもある。
もっとも、里山の町のお背戸に向かう道が、途中で分岐していようとも、迷いようがない。山の頂上へと続く道は、極端に狭く、到底、馬車を取り入れることなどできないからだ。
突き当りに見えてきた、整備された洞穴といった印象の入口をくぐる。一層から上がってきた時と同様の、螺旋に続く岩の道が現れた。
出口から差し込む光の色に、オレの期待は高まる。
「おおっ」
勘違いなどではなかった。外に出ると、水平線に赤々とした夕日が沈むところだ。
朝日とさほど見え方は変わらないはずだが、感傷的な気分になるのはなぜだろう。
「懐かしいな」
「そうですね」
ブルーノが思い出しているのは、きっと海に面した男村のことだな。たしかにそれも懐かしいが、より強く思うのは前世のこと。まあ、考えても仕方のないことだ。
視線を転じると大きなヤシの木があり、デフォルメされた、いかにもな無人島を思わせる。差異は、足元が滑らかな岩棚であること。そこから海に向かって石畳の道が伸びていること。もっとも、その道は数メートル先で波間に消えていくのだが。
残照が消えると同時に、真逆の方角から月が上りはじめる。ルルに尋ねたところ、常に満月らしい。
水平線が緩やかにカーブしていたから、少しだけ期待してしまったが。いくら待っても星は見えないし、やはりここは地中の不思議な空間で間違いない。
「うむ。話に聞いていた通りの現象である」
美しい景色を眺めるというより、これまでの常識をくつがえす事象の観測をして、感動しているネジ先生。
月は昇るほどに小さくなって、そんなところまで芸が細かい。呼応するように潮が引いていき、海中にあった石の道が、完全に姿を現す。その先に見える影絵の城は、実のところ、ごつごつ尖った岩山らしい。
お手製の日時計を組み立て始めていたネジェムを、説得するのに少し時間がかかる。
「そういうのは、落ち付ける場所で、腰を据えてやった方がいいんじゃないか?」
オレたちより後に二層から上がってきた馬車や、馬上の人、徒歩の一団までもが、まだ濡れたまま月光を反射する道を悠々と進んでいく。
まあ、急ぐ旅じゃない。抜かされても、腹は立たないが。天体の観測なんて小一時間やったくらいじゃ意味がないだろう。このままでは埒が明かないので、ネジェムの首根っこを掴んで持ち上げる。その隙に、ブルーノが木製の日時計をばらして、馬車に積み込もうとする。
「やっぱり、それも影に入れておこう」
「お願いします」
太陽と月の違いについて、自分なりに気付いたことを、もごもご言ってるネジェムと荷物を交換。やっと出発することができた。
あくまで上の世界の常識だとことわって、天体の形やその運行、引力について説明させられたのは言うまでもない。
夕焼けも潮の満ち引きも、ここではそのための装置があるとしか思えないけどな。
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