影収納
結局、フィルター越しに誘引の気を吸い出すことは、承知したネジェムだが。あまり興が乗らなかったようで、感覚的に半分は、成分が体内に残っている。
皮子さん、引き続き、お世話になります。
オッケー、任せて? ありがとう。
いま、別のことに夢中になってるネジェムは、誘引の気のこびりついたフィルターにも興味を示さず。オレが保管することになった。
完全に密閉できるものといったら、皮子か、オレのつくりだす前世的なものだけ。ジッパー付きのビニール袋をつくって入れたら、試したくなるよな。
影に、仕舞えました。
「おおっ。やった」
オレとしては、これがいちばんの収穫かもしれない。せっせと収納容器や箱をつくり、馬車の荷台をほぼ空に。
あとはひたすら雪掻きして、ついでにかまくら作ったり、雪像を作ったり。
氷室造りはすでに町民たちの仕事だから、オレは口も手も出さない。
男性陣が、せっせと雪を集め、洞窟の入口にあわせて、分厚い木の扉を製作している。
麻の皮は、すでに削ぎ終えたそうだ。
「いくら町のためとはいえ、やることやってからでなけりゃ、なに言われるか」
ああ。ねぇ。
ちなみに、削がれた麻の皮を丁寧に解し、梳いて、紡いでいくのは、女性陣のお仕事。
こちらは余計に、オレが手伝えることはないな。
不器用で、芸術性があるとはお世辞にもいえなくても、ものづくりは楽しいものだ。氷像のモデルたちには、思いっきり不評だったが。いちおう、馬と羊ということはわかるようだ。
その前に立った、町長の息子がぽつりと言っていた。
「喪中でなければ、これで人が呼べたかもしれませんね」
ああ、そうだった。うっかり目立つことをしてしまった。誰も怒ってる様子じゃなかったことに、ほっとしてる。
「来年でも、再来年でも、皆さんでつくったらよいですよ」
「そうですね。絶対にやってみせます」
お世辞だけでは終わらない。熱意のある青年だ。大商会相手にそうとう食い下がってるようだし、そこそこ商才もあるそう。
ブルーノは、せっせと籠を編み、雪掻きをし、頼まれれば祈祷師として仕事をする。
その合間に、ネジェムの研究の手伝いもしていて。主に、羽化した蛾から、紫外線に反応する鱗粉だけを集めるという、地味で根気のいる作業を。あー。見てるだけで、気が遠くなる。
彼の協力あってこそ、ネジェムは、特殊インクを完成させられたわけだよ。それに適した溶液を用意したこともすごいんだけど。
「お疲れ」
「申しわけありません、リュウイチ様」
「いいよ。気にするな」
連日、おさんどんもできないくらい、疲れ切ってたもんな。特に目に来ているんだろう。
さあ、風呂に入れ。ちょとくらいアルコールも摂取しろ。そして飯を食い、血行よくして、さっさと寝てしまえ。
「うむ。くるしゅうない」
同様にして寝入るネジェムは、やっぱり憎めないやつだ。
だって、ブラックライトがなければ、見えるのブルーノだけだろ? 彼専用に開発したとも思えない。
明日になったら、一体何を言い出すか。チャレンジしそうだよ、読み取り機。
オレ、さすがにそこまでの知識はないんだが。




