表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やることやったら転生していた  作者: 御重スミヲ
17/87

釣り


 皮子があまりに興奮して、寝付かれない。()がして、水差しに()()んでおいた。いつの間にか、腹に戻ってる。起こしてくれて、ありがと。

 まだ、真っ暗。夜釣り? 朝マズメ? アーニャも寝てるようだし、別に(ことわ)らなくていいよな。

 ドクは、カンテラを(とも)し。準備を整え待っていた。なんか、手ぶらですみません。

「リュウイチさんは、目もいいんだな」

 お手製だっていう、釣り竿(ざお)。五十センチくらい。竹、じゃない? (あし)だって。オレ、ザリガニ釣ったことくらいしかないんだが。あとは各自、手桶(ておけ)とバールを持って、出発。さすがに人通りは皆無(かいむ)

 白の区画に入ってすぐの水路。(ふた)も当然、岩を加工したもの。会議テーブルの天板(てんばん)サイズだ。厚さは十センチを越えてる。一枚を引っ掛け、移動させる。このためのバールか。

「こんなこと、していいのか?」

「んん。まあ、内緒」

 水深は浅いが、思いのほか勢いよく水が流れてる。おっと、糸が(から)まないようにしないとな。指の先ほどの(かたまり)が、ぷらんと揺れる。

(なん)で岩塩?」

「たいていの動物は、()めにくるから。いけると()んだら、これが大当たりだ」

 魚なんていないのに。並んで釣り糸を()らしてる。

 音で逃げることは、ないらしい。周囲に配慮(はいりょ)して、小声でおしゃべり。

「村にいた時から。(もり)は苦手でな」

「先生もか? あれ、難しいよな」

「ああ。それに加えて、魚の位置を(さっ)することができないから。よく一人で釣り糸を()れてた」

「いまは趣味で?」

「ぼーっとするのに、丁度いいんだ」

 いろいろ()まってそうだもんな。それにしても。

「なんでまた。水路で釣りしようなんて考えたわけ?」

「患者の一人に。清掃中、(へび)が泳いでるのを見た、と聞いた」

「うへぇ」

「上水道だから、(えさ)を仕掛けるのは自重(じちょう)して。ふつうに、釣り針で」 

 ふつうって、何だっけ? 

「その頃は、まだ仕事も(ひま)だったし。釣れるかどうかは、気にしてなかった。結局、(へび)は行方不明のまま。透明な(まく)が引っかかったわけだ」

 ゴミではない。生き物かどうかもわからない。あれこれ(ため)した結果、いまの使用法に落ち着いた、と。釣り方も、当然オリジナル。

「誘っておいてなんだが。釣れる保証はないぞ。一つ()れたら、いい方だ」

 ドクによると。チャンスは夜明け前から一時間くらい。明るくなって三十分もしたら、もう望みはない。

「不思議とここだけなんだ。街中、あちこち(ため)した。森の方も探してみたが」

「オレに、教えてよかったのか?」 

「別に、隠してないぞ。ここで釣られなければ、どこかへ流れ行ってしまうのか、何かに食べられてしまうのか。結局、手に入らないわけだし」

 街の許可をとって、あちこちに(あみ)を張ったりもしたとか。

「集めるのは大変だろうが。リュウイチさんのアイデアは、面白いと思う。ただ、少し工夫が必要だろう」

 ドクによると。イリは、まれに(つな)がるものもあるが。大抵(たいてい)は、ばらばらなままだそうだ。

()い合わせるとか?」

「そうだな。塩水を塗った部分は、くっ付き合う。しかし、持続するのが一時間程度だ」

「へぇ」

「その上、(じか)(まと)えば、すぐに肌と同化してしまうだろう。イリは金気(かなけ)を嫌う。あとは、クローメの汁だな。先に肌に()るといいかもしれない」

「クローメ?」

 極小(ごくちい)さな、橙色(だいだいいろ)の果物だそうだ。言われてみれが、その辺の鉢植えにあったような。

「なるほど」

 さすがに、よく調べてる。

 まあ、オレには皮子がいるから。当の本人は、やきもきしっぱなし。はいはい。真面目に釣りもしてるよ。だから腹、圧迫するのやめて。

 オレは、エイトとのことを話す。ドクは当然、奴を知っていた。

「数がまとまれば、商売の仕様もあるのに。と、残念がっていたよ」

 いかにも、エイトらしい。

 手応(てごた)えより先に、かすかな気配(けはい)を感じた。

 いきなり現れた感じ? 皮子でさえ、そうだ。発するものが微弱すぎて、距離があるとわからない。

 力はいらない。見た目も、何も掛かってないみたい。小石ごと(つか)んだことで、やっと、ドクも気付いた。

「お。釣れたか。良かったなぁ」

 誘った手前、ぼうずは困る。プレッシャーを感じていたらしい。しばらくして、ドクも一枚、釣り上げる。

 人目に付く前に撤収(てっしゅう)

竿(さお)(おけ)はあげよう。頑張(がんば)ってくれ」

 目標枚数を聞けば、誰だって苦笑する。

「ああ。いろいろ、ありがとう」

 ドクは、八時から診察だって。アロハな背中に礼。

「よかったな」

 いちばん喜んだのは、皮子だ。すぐに物陰で、水桶(みずおけ)へダイブ。って、オレがつまんで入れたんだが。また、見逃(みのが)した。同化だけは異様に早い。

 子分一とニに、(へそ)カバーを(まか)せて。自分は、自由に動き回る。速度は、カタツムリくらいになったか?

「お疲れ」

 同じ所を、ずぅーーーーーーっと回ってるなんて。オレだったら、発狂するわ。

 お礼は、さらなる部下探しへの協力でいい? (まか)せろ。何。あと、たったの百五十九枚だ。

 朝食、昼食、検体を渡して、アーニャを黙らせた後。

 (くだん)のポイントから、流れを(さかのぼ)ってみた。気配を(さぐ)りながらで、そう速くは進めない。行き着いたのは、赤の区画の街壁(がいへき)に接する空間。誰でも入れる。

 ごうごうと水の流れる音が反響し。そこに木材の(きし)む音が重なる。直径二十メートルはある水車。(なか)ば岩盤に埋もれる形で、延々(えんえん)、水を()み上げてる。全部で八()

 思わず探査。地下水脈だ。枝分かれし、また合流しながら、街の真下を通ってる。街の南側、つまり上流側で()み上げて、街中に()(わた)らせてるのか。

 枝分かれしていく上水道を、無作為に辿(たど)る。いまさらだが、下水道がない。そうか。用所(ようしょ)ごとに穴をあけて、地下水脈に捨ててるんだ。水場での落とし物に注意だな。

 肝心(かんじん)の皮については。何の収穫もなく、釣りポイントに戻る。

 縁石(えんせき)に腰かけ、昼飯を食う振り。ちょっと行儀の悪い奴って感じで。それ以上の関心を示す者はいない。

 あらためて水路内を(さぐ)る。いないよな? もしや、夜行性か。あの時間帯のみ、掛かる理由は謎。

 一旦(いったん)引き上げて、夜に(そな)えよう。ようするに、昼寝。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ