7、借金取り
現代編その4
〜借金取り〜
季節は4月を過ぎた頃であろうか?
まだ暖かくもないのに2人の男達は黒のTシャツ1枚とアロハという、いかにも腕の刺青を見せびらかすかのような服装で来た。
普段から従業員の女の子の事は、趣味も兼ねて、よく観察している道代であったが、今日の桂子が様子がおかしい事には気づいていたにしても・・・
まさか、このヤクザ達が絡んでるとは思いもしなかったことに激しく自分を責めていた。
私、日頃から何やってんのよ!お店で働いてくれる子達は、何がなんでも面倒見るって決めてたのに!
なんでも打ち明けて相談に乗ってあげる良い理想のお姉さんを目指していたのに、桂子の様子がおかしかったのは、いつからか?
自問自答しながらも本能で桂子を背中でかばい、前に立ち塞がるのだが、その膝がわずかに震えているのが目の前の男達にバレてはいないだろうか?
この男達も初めてではない。
何度か客として店には来店しているが、コーヒーを頼むだけで、女の子との会話を楽しむわけでもないのが不気味だったのは覚えている。
そういえば桂子の方を、ずっとニヤニヤしながら黙って見ていたことを思い出す。
今更かよ!私もっと早く気づいてれば
「なあ?他のお客様も居る事だ!静かに話してやるが、金は払えるんだよな?」
更に震えが増し、崩れかける桂子を庇いながらも道代は男に聞き返す。
「、、お金?、、いくらなの?」
この真面目で世間知らずな、お嬢様育ちの桂子が、ヤクザから借金してるなど、どう考えても結びつかなかったが、事情も分からないうちは、お店や従業員を守りたい!
決して良い方法では無いと分かっているが、お金で済むのなら、今は、それで済ませよう!
「そうだな、利息も含めて200万ってとこか?へへへっ」
今にも口の端から汚いものが、こぼれそうな言い回しに殴りつけてやりたかったが堪えるしかない。
「分かったわ!すぐに銀行に行って用意するから!それで今後は、この子に関わらないって約束しなさい!」
軽くヒューっと口笛を吹いた男は「おお!いいぜぇ?待っててやるから用意しな!200万、丁度で完済だ」
こう言う輩は何度でも付け込んでくる。
でも今は、これで凌ごう!その後は、また考えるしかない。
道代は男達から目線を外さないままフロアキッチンの方へ桂子を連れて行き
「純ちゃん!すぐに戻るから、お店のこと、お願いね!入り口には臨時休業を出しておくから、お店のお客様には、悟られないよう、このままでいいから」
遠間から見ていて、なんとなく事情を飲み込んでいた純子は、ただただ、うなずく。
道代は、そのまま小走りで店を後にした。
「さーてと、邪魔者はいなくなったわけだが、、、なかなか面倒見のいい店長さんじゃねーかよ?お前、あの店長に200万の大金、立替させていいのかい?」
キッチン側のカウンターまで来て男は桂子に囁きかける。
桂子の腕を掴んで無言でダメよ!と首を振っては見たが、目の前まで来ている男と目が合ってしまった純子には涙ぐんで頷き、そっと手を振り解く桂子を止める勇気は無かった。
後ろに立つ黒Tシャツの男が「兄貴!あの奥の上玉2人、どうします?あの脚とか、むしゃぶりつきたくないすか?」
「ああ、新顔だろうから、連れてくなら今のうちか?金になりそうだし、先に味わっておくのも悪くねーな」
男達と桂子、そしてかえかとフィーレラナが居なくなり、道代が帰ってきたのは、その5分後であった。
「えっ?なんで?桂子ちゃんは?200万、、フィーちゃんとかえちゃんまで?、、なんで?」
泣いてる純子の頭を撫でながらも頭の中が真っ白なのか真っ青なのか。
ただ固まる道代であった。