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時渡りのかえか  作者: 塩引鮭
消えゆく戦国編
43/65

43、無力の姉妹

新章の始まりになります。

3人目の主人公やよいに訪れる悲しき物語。


現代編とはまた違う、やがて3人が出会うまでの物語です。


どうかこの物語に、お付き合いしていただけるよう努力して参ります

是非によろしくお願いします


m(_ _)m


消えゆく戦国編その1


〜無力の姉妹〜


何処に行くにも一緒だった。今日も姉の葵が図書館へ行くので、そのお付き合いだ。

やよいにとって自慢の姉は優しく頭が良く、いつでも自分の側に居てくれる。


経済的に苦しい訳では無い。2人が遊んで暮らしても余るほどの経済援助を、会ったことは無いが祖父から受けていることも知っている。

だから姉は、その気になれば塾にも通えるのだが、東大も目指せる程なのに自分との時間が減るからと、一緒に図書館を利用したりするなど、常に側に居ようとしてくれるのだ。


自分が養子に出された子だというのは分かっていた。

憧れの姉と、本当の姉妹では無いのだということも。

偽りの両親が亡くなってからも、いや、それ以後、今まで以上に姉は優しかった。


その姉が目の前で倒れている。自分も頭が痛い。

さっきまで目の前にあったはずの、いつも行く図書館の建物は無い。

周りは薄暗い森の中。ここは・・・どこなの?


目の前が真っ暗くなる前。何か声が聞こえた気がした。自分の名前を呼ぶ声。やよい様!どうかこの場から逃げてくださいと言っていたような。


なんとか立ち上がると、姉の側へと駆け寄り、顔を覗き込む。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!葵お姉ちゃん!」


必死に揺すってみたが、打ち所が悪ければ下手に身体を動かすのは危険だ。しかし幼くパニックになりかけているやよいには、そんな事も気づけないほどの恐怖心しかない。


場所も時間も分からない。助けてと声を出しても、こんな場所に誰かが居るとは思えない。


何か獣の鳴き声が聞こえるのは、恐怖からの幻聴なのか。その草木を踏み荒らす足音に、やよいはビクッと身体を震わせて振り向いた。

人だ!助けてもらえる。その考えは、ひと目で違うのだと12歳のやよいにも分かる相手だった。


「こんなところに、女子おなごか?不思議な格好をしておる」

「我らが頑張った褒美なのではないか?常に先行して身体を張って来たのだ」

「そうだ!そうに違いない。若が来る前に」


現れた3人の男達の目は、自分ではなく倒れたままの姉だけを見ている。

先程まで自分が揺すっていたせいで、姉のスカートがめくり上がり、はだけて下着のところまで白い脚を曝け出していた。


1人の男が走り寄り、倒れたままの姉に覆い被さる。

他の2人も、それに続いて左右の位置に前屈みで顔を近づけた。


「駄目!お姉ちゃんから離れろ!」

覆い被さっていた男にしがみついたが、後ろ向きのまま肘打ちを喰らった。


姉の右側に居た男が腰から刀を鞘ごと引き抜いて、やよいの横っ面を水平に殴打する。

意識を失いかけながら3mほど吹っ飛び、そこにあった木の幹に背中から当たってしまった。


息が詰まるのだが、幼い身体なのが幸いしたのだろう。なんとか前のめりで四つん這いになって前を向いた時には、姉の衣服はほぼ剥ぎ取られ、男は自分の腰布をまくり上げていた。


「やめろおお!!」12歳のやよいの必死の叫びだった。


そこに鳴り響く蹄の音。駆け寄って来た大きな黒い・・・馬だった。


その巨大な馬は、倒れたままの姉の頭の手前で立ち止まると、馬上からは若い男の声が響いたのである。


「申せ!貴様らは何をしておる!」

凛と響き渡るその馬上の若き男。薄暗い森の中で、わすがな空の光が逆光のようになり、やよいには判らなかった。


「わ、若・・・」3人の男達は、すぐに姉から離れ横に並ぶと頭を地面に擦り付けるように平伏している。


姉は助かったのだろうか?この馬上の男は姉を助けてくれるのだろうか?

今ごろ激痛に身体を襲われたやよいには、もう意識を保てるほどの気力は残っていなく、そのまま前へ倒れ込んだ。


「源次郎!」「はっ」呼ばれた男は、そのまま立っているだけで、若と呼ばれる馬上の男と同じ目線の高さに並ぶほどの大柄な男だった。


「その小さき方は、我がこの馬で運ぶ。そちらの倒れている女子おなごを頼めるか?」


「造作も無く」そう言うと源次郎と呼ばれた男は、倒れている葵の身体を大きな雨除けの布で包み、肩口に担いでみせた。


「この者が何者かは知らぬ。だが武器も持たぬ女子を3人がかりで襲えと、いつ教えた!弱き者を守るのが武士というものだと、我は言わなかったか!」

その語尾は強い。平伏したままの男達は、そのまま動くことすら許されないのだろう。


気絶したやよいを黒き馬に乗せ、男は進み出した。

その後ろを、葵を担いだ男が歩いて続き、更に腰に刀を備え、手には長槍を持った20人ほどの男達が続く。




葵とやよい。2人の最期の3年が始まった日。


そして更に2年。やよいの長く孤独な戦いが始まる日だった。



残念ながらこの新章には、しばらくかえかとフィーレラナは登場しません。

といっても彼女達の出番は、後半までのお預けになりますので、どうかお待ちください。


消えゆく戦国編。

これからもよろしくお願いします。


m(_ _)m

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