4、出会いは生姜焼きと共に
いよいよ現代編です。
人物像の説明とか言葉の問題など
説明不足気味なのですが、
そういったことも物語が進むことで伏線として回収していく予定なので、どうぞ暖かく見守りください。
m(_ _)m
現代編その1
〜出会いは生姜焼きと共に〜
今日は豚バラ肉が安かったのよねー!とは言うものの、何故私ったら3人前も作っちゃったのかしら?
まあご飯は冷ましてから小分けにして冷凍するとして、お皿に盛り付けるまで気づかないとか、働きすぎ?
ブツブツ言いながら道代は3枚の皿に盛りつけた生姜焼きを見つめて、ため息をつく。
でも今は体重、3kgオーバーなのよ!若い子達は帰しちゃったし、寝る前だから、なおさら太るわよね?
自分で食べるしかない諦めの覚悟を決め兼ねつつも、テーブルに手際よくご飯と味噌汁も用意して、ちょこんと正座する。
「私、お疲れ様でした!今日も働いてくれた若い子達に感謝をしてと、頂きま、、、!??」
言い終わらないうちに目の前の生姜焼きが光り出した。
いや、生姜焼きではなく、その少し奥の辺りから光り出したのである。
決っして眩しくはなく、不思議と淡く優しい光だった。
その光が大きく形づくと共に消えていったかと思うと、目の前のテーブルの上に女性?が2人、互いに膝を曲げて抱き合いながら横座りで、こちらを見つめたまま居るではないか。
いや、よく見ると女性というより2人とも少女?のようである。
1人は目の上で綺麗に切り揃えた黒髪。
いわゆるぱっつんなのだが、その大きく綺麗な目に吸い込まれそうな深み。雪のような白い肌。
もう1人は銀色の綺麗な髪。
こちらも切れ長ではあるが大きく綺麗で、まるで星を宿してるのかのような瞳。
あれ?耳、少し尖ってる?
ファンタジーアニメとかのエルフのようだ。
それにしても、エロいわね!この子達。あら!2人ともスカート?あ、1人は着物?短くしたの?とても良いじゃない!!
光が収まり2人がテーブルの上に現れておよそ10秒。
3人とも固まっていたのだが、道代が目線は2人から外さないまま、右手に持った箸で生姜焼きの肉を、おもむろに1枚、口に放り込む。
「あにゃららち、おにゃらえは?」
どうやら、貴女達のお名前は?と聞いているらしい。
どれだけ肝が座ってるのか天然なのか
今しがた目の前で起こった超常現象アンド不法侵入など知ったこっちゃないらしい。
テーブルの上で固まっていたままだったが、ようやくかえかがボソッと一言だけ呟く。
「肉!」と。
「ええー!?お腹空いてる?空いてるのね?」
道代は嬉しそうに立ち上がり、その勢いで初めて2人はビクッと後ずさりするようにテーブルから降りて、行儀良くチョコンとお座りする。
正座である。
「あら!お行儀いいじゃなーい!ちょっと待っててね!」
先にご飯と味噌汁を2膳ずつ。
その後ラップをかけておいたばかりの生姜焼きの皿を2つ持ってきて、2人の前に差し出す。
このために?
あたしなんで分かってたんだろ?3人分必要だって分かってた?
難しいことは考えないようにする。
「そこそこ自信はあるわよ!遠慮なく食べてね!」
道代の言葉にフィーレラナが「ほ、本当に良いのだろうか?」と申し訳なさそうに答えるのだが、その横で、かえかは食べ始めていた。
「あ、ヲイこら!」
フィーレラナが止める間もなかったのだが、かえかは目を大きく見開いてこちらをガン見している。
いや、こんなに目を丸くしているかえかは初めて見たかもしれない。
普段から表情は滅多に変わらないのだが目の輝きが尋常じゃない。
「フィー!フィー!美味しい!これ!美味しい!」
こんなキャラだったか?というか興奮するんだ!へえー
新しいかえかの一面を見て、クスッとした事で安心したのか、目の前の相手が初対面なのにもかかわらず「すみません、頂きます」と、つい気を許してしまう。
一礼してフィーレラナも手に箸を持ち、ひと口運んで・・・固まる。
こちらもかえかと同じく目がいきなりまんまるである。
「あら、いけない!エルフさんにお肉はダメだったかしら?」
何かのアニメの設定通りだと思っていたのか道代が慌てふためきかけたが「いえ、問題ないです!というかこれ、とても美味しい!」
その言葉が終わった瞬間にフィーレラナは、まるでどんぶり飯をカキコムかのようにスピードを上げる。
横でかえかがフィーレラナの分も狙っていたからギアを上げるかのように必死である。
ひととおり食事が済んで落ち着いた頃合いで道代が切り出す。
「さてと、貴女達は何処から現れたのかしら?」
目の前で起こった事を思えば、明らかに説明できる現象ではない。
でも、この2人は間違いなく目の前に現れた。
出で立ちや姿を見れば特殊メイクやコスプレではなく、その耳も本物なのだろうと想像はつく。
警察に相談しても無駄なのだろうし、なにより。
うちのお店で働いてくれたのなら間違いなく売り上げは跳ね上がるのよねー
道代の頭の中ではチャリーン!チャリーン!と音が鳴り響いているのかもしれない。
「すまないが何処から来たという説明は難しい!その前にここが何処なのか分からない」
フィーレラナは初めて見るであろう自分達に対して、危害を加える様子が無いどころか食事まで施してくれた目の前の恩人に、どう誠意を尽くすべきか悩んでいた。
それよりも。
「先程、私のことをエルフと言っていたが、ここには他にもエルフ族は居るのだろうか?貴女はエルフを知っているようだが」
フィーレラナの問いに「やはり本物なのね!でもゴメンね、この世界にエルフは居ない、、、というか見たことは無いの!人間だけかしらね」
道代が答えた瞬間だった。
2人が身構えたのである。
フィーレラナは右手を左の手首に当てながら。
かえかは左右の手を左の腰に置き、まるで何かを握りしめているようだった。
気配など感じなかったが?
フィーレラナの思念の問いに、この子達も寝たまま、と、かえかが同じく思念で返す。
肩口で寝息を立ててるかのように使い魔や妖精達はグッスリしている。
かえかもフィーレラナも周りを疑いつつ警戒を解き、座りなおした。
冷静になってみれば、目の前の道代と名乗る相手も人間ではないか。
でも何も悪意は感じない。
道代からは武器など持ってなさそうな2人が、何かを構える仕草が不思議に見えた。
人間という言葉に反応したわよね?と自分なりに分析していた。
「訳ありなのね?行くところはあるの?」
その問いに顔を見合わせあったが、かえかが、導きの指輪はここを選んだ!意味が知りたい。
そのかえかの思念にフィーレラナも同意だった。
「すみませんが、それも分かりません、ですが、図々しいのですが何かお役に立てるのであれば、しばらくお邪魔させてもらってもよろしいのでしょうか?」
そのフィーレラナの答えに道代の心の中は、してやったりである。
「あら〜ん!お邪魔だなんて、も、もちろん、お役には立ってもらうけれど、ちゃんとお給金も出すんだからねっ!あ、寝るとこも食事も心配要らないわ!ずっと居てくれていいのよ?というか居なさいっ!!」
最後は本音ダダ漏れである。
なんだろう?
目の前の人物は、とても良い人なのだが、なにか、、、
表情がエロいことを考えてる気がする。
あ、そうだ!
こういう表情をする人を私は知っている!
しばらく考えて思いついた。
ソーザ師匠だ!!
「お風呂の準備が出来たからね!」
道代の案内で入った小部屋には水が溜まっていたのだが何か湯気が出ているような?
「温泉?なのですか?部屋の中に、こんなに小さな温泉とは!」
手を入れてみてフィーレラナは驚いていた。
その後ろではジト目のまま、相変わらずマイペースなかえかが着物を脱ぎ終わってスッポンポンである。
「ううん、ただのお湯だけどね!私の好みで申し訳ないけど、こっちがボディーソープ、これとこれがシャンプーとリンスね」
道代が教えてくれたものから、良い匂いがする。
説明が終わらないうちに湯船の中には、かえかとのぼせかけた使い魔と妖精達が居る
共和国では、いつも水場だったけれど温泉もあるにはあった。
ただ150年戦争で精霊達が安定するまでは温泉どころではなかったわけだし、この狭さは逆に落ち着く。
お風呂から出た後、案内された部屋には布団が1組、用意されていた。
「ゴメンね!予備で用意してたものが1組しかなくて、明日には用意できるけど今夜はこれで2人一緒に寝てもらえる?」
道代の好意は本当にありがたかった。
いきなり現れた私たちのことを深く追求もせず、食事や風呂、寝床まで用意してくれている。
しかも悪意はまったくないようだ。
殺意や悪意があるのなら使い魔や妖精が教えてくれるが、彼女達はまったく無反応だ。
なにより、かえかのこの馴染みよう。
人間だらけらしいとのことだが、あの鬼神のような戦いぶりの片鱗もカケラもない。
ソーザ師匠の睡眠魔法も無いのに、静かに寝息を立ててるくらいだ。
導きの指輪が、ここに運んでくれたことには必ず何かの意味があるはずなのだが、慌てても仕方ない。
とにかく寝よう。
明日はこの世界がどんなところか調べてみよう。
フィーレラナは寝ているかえかの唇を見つめる。
あの指輪をはめた時から、ふと何故か意識するようになった。
何故こんなに欲情するのか?
いけないと思いつつも自然と手が自分自身の敏感なところに伸びる。
「アッ」と短い吐息を漏らし、堪える。
ちゃんと寝なきゃと分かってはいるのに。
異世界の最初の夜は過ぎていった。
初めに3人の少女達の物語と書いた?と思いましたが、
「かえかとフィーレラナ」だけで現代編は進んでいきます。
3人目の「やよい」についてはまだ登場が先になるのですが、
現代編は、やよいに深く関係する場所でもあります。
どうか今後も、お付き合い頂けると嬉しく思います。
m(_ _)m