39、求められし道代の家宝
いよいよ現代編クライマックスが近づいてきました。
お待たせしている3人目の主人公への手掛かりとなる大事な残り、数話。
どうかお付き合いください。
m(_ _)m
現代編その36
〜求められし道代の家宝〜
道代の悲鳴でかえかとフィーレラナも目を覚ます。
「おはようございます。ご主人様」
そこには我知らずと優雅に挨拶をしてみせるドレンが居た。
「はうす」かえかの一言でドレンは部屋の隅に立てかけてあった棺桶に素早く入る。
「まあったく、アイツは!!ねえ道代、変なことされなかった?」
フィーレラナが心配そうに道代を覗き込んでくれるのだが、素っ裸のままだ。
「おー」と言いながらテーブルの前に座り、用意されていた食事に手をつけだしたかえかもスッポンポンである。
「ちょ、ちょっとあなた達!何か着なさい!」
そんな様子を見ていて堪えきれなかったのか、アハハハと笑い声が響く。
道代に叱られたので、かえかとフィーレラナは、いそいそと服を着ている最中だ。
先程の謎の執事は、立てかけてある棺桶?の中に入ったままのようである。
じゃあ、あれ?この場には居ない他の女性の声?辺りを見回しても誰も居ない。
ふと、いつからなのか壁に掛けられている大きな鏡がある事に気づいた。
楕円を縦にしたその大きさは、道代の頭から腰くらいで、幅は肩幅より少しあるくらいだろうか?
見事な彫刻が施された木製の枠に納められている。
「何かしら?随分と高級品の鏡よね?まさか、かえちゃん達のお土産とかだったりして、、、」
「ハーイ!オミヤゲ、デース!」
「えっ!?ひっ、ぎゃーーー!!!」
思いっきり後ろへとスッ転んだ。まさか自分の独り言に鏡が返事をするなど。
そして転んだはずななのに、自分の身体が何かに優しく抱き支えられている事に。
「大丈夫ですか?ミス道代」
「あ、ありがとう。って、だからお前は誰じゃーー!!、、、あらやだ、私ったら、はしたない」
さらに執事服の男からも飛び退き、身構える。のだが全然、様になってない。
「シャーーーッ」ドレンに威嚇するフィーレラナ。
「シャーーーッ」何故かドレンも威嚇で返す。
「もう、ドレンちゃんったら、セクハラだぞー」やはり声は鏡の中からする。
「初めまして道代ちゃん!私、フェルシー・フェルモンドって言うの!よろしくね!エヘッ。あ、気を失ってる」
午前10時頃には防衛省に報告を済ませた佐々木が赤星と村瀬と共にやって来た。
朝のゴタゴタで道代は寝込んでしまっていたため、心配になったかえかとフィーレラナが道代の横についていたのだが、事情を聞いた佐々木は、フェルシーを鏡の中で、ドレンをその場で正座させて説教をしていた。
ドレンとフェルシー、個々の能力は当然、人間よりも遥かに上なのだが、それは差し置いて、かえかから「逆らったら、、駄目」と言いつけられていたことで、佐々木や赤星の方が立場は上と言う扱いらしい。
もちろん道代もなのだが、当人はまだ、うなされている状態だ。
11時の開店時間の為、道代を訪ねてきたのは桂子だった。
歌舞伎町の事件以来なのだが、退院してからは自宅療養に専念していて、今日からバイトも復帰する予定なのだという。
佐々木とドレン、そして当時気を失っていた事もあり、赤星とも初対面になる。
助けてもらった刑事さんの名前だけは道代から伺っていたので、その場で赤星にお礼を言い、お店のことは任せてくださいと道代に告げて部屋を出ていく。
ドアを閉める前にかえかとフィーレラナの方にも軽く頭を下げると、見つめて心の中でお礼を告げた。
ほんの少しではあったが、意識がなくなる前に彼女たちが助けてくれたのだと分かっていたのだ。
今の自分には何も出来ないだろう。でも、いつか返そう!自分が彼女たちに何をしてあげられるのか、桂子はもう以前の内気で臆病な少女ではない。まだ1歩だけだが進み始めていたのだ。
お昼も過ぎた頃、なんとか起き上がってはみたものの、部屋には大量のハンバーガーにポテト、飲み物が置かれたテーブルを囲む人数の多さ。
かえかとフィーレラナ、赤星に佐々木、ドレンも正座してハンバーガーを食べている。
よく見ると鏡の中に映る金髪の女性も飲み物を片手にハンバーガーにかじり付いている。鏡なのにどうやって?
部屋の隅には村瀬が倒れていた。
ドレンとフェルシーがイタズラで脅かしたらしい。泡を拭いて気絶してしまった為、お昼の買い出しに行く羽目になったのは赤星だ。
おかげで思いっきり機嫌が悪い。
大鏡にドレンの無駄にデカくて高級そうな棺桶。何故かかえかの桐タンスまで出しっぱなしである。
そしてこの大人数。「狭い」トゲを含んだ物凄く低い声で道代は唸った。
「もう!!なんなのよ!あなた達は!!!」
起きがけにハンバーガーを口に放り込みながら説教をしているようだが、口に物が入ったままなので、道代が何を言ってるのかよく分からない。
なんとか落ち着いてくれたようなので「お願いが、、ある」そうかえかが道代に話しかけた。
「箱を、、借りたい」かえかの言う箱が何なのか?この場で化粧品箱とか常備薬の箱で無いのは分かるのだが、他に・・・
そう考えていると、かえかは押し入れを指さした。まさか家宝の事?
何故だか先祖代々が大切に守ってきた物で、お爺さまに「お前が守りなさい」と託された箱だった。
箱の中への興味から開けてみようとした事もあったが、貼ってあるお札のような物は破く事も刃物で切る事も出来ず、たまに揺れるので気味が悪く以後は触る事すら無くなった代物だ。
何故その箱を、かえちゃん達が必要とするのか?ひょっとして彼女たちが、私の目の前に現れてくれた理由と関係があるのだろうか?
「あの箱の中の事を知っているの?」
黙ったままのかえかの代りにフィーレラナが答える「道代、多分それは彼女が教えてくれる」
先ほどまでの、ふざけていた様子は無い。鏡の中の住人、フェルシー・フェルモンドは真剣な顔で頷いていた。