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時渡りのかえか  作者: 塩引鮭
現代編
24/65

24、道代の家宝

世間での自粛騒動、コロナの問題など

皆さま大変な思いをされてると思います。

そんな人たちの一部でも良いので、楽しんでもらえたらと思います


m(_ _)m


現代編その21


〜道代の家宝〜


帰りに大型店舗のスーパーで買い出しを済ませたのだが、レジで順番待ちをしている間、周りからの視線を、かえかとフィーレラナは独占していたのである。


場所柄、有名人慣れしているためか、この辺りの人達は、ちゃんと場をわきまえて騒がないのだが、この2人の美しさに周囲の奥様達からは、見惚れるものやら嫉妬混じりのもの、様々であった。


「どこの化粧品、使ってるのかしら?」

「えっ?、まさかだけど、すっぴんなんじゃないの?」

「若さだけよ!」

「若いだけにしても美しすぎるでしょ!」



全部、聞こえてますよー

小声なのに全然、隠す気のないだだ漏れの会話に道代は半分、誇らしげであるのだが、どちらかというと、小声で会話を止めない奥様方への同情からくる苦笑いも混じっている。


早く逃げたい!


そうでなくても買い物の最中のフィーレラナのテンションの上がりっぷりは異常であった。


ただでさえ目立つのに、並べられてる食材の山を指差し

「これはなんだ?これはどうやって食べるのだ?」

挙句にタワシまで掴んで、これは美味しいのか?である。

以前に、一度、連れて来てるんだけどねー


幸いにも妖精と使い魔の5人は、ハンバーガーでお腹いっぱいになってくれたらしく

道代のバックの中で全員ゴロ寝中なのでスーパーの食材に、ちょっかいを出される心配は無かった。


赤星達は先日、道代の部屋でご馳走になったからと缶ビールやコーラ、デザートにプリンなどを大量に買い込んでくれた。

部屋で振る舞った24缶入りの倍返しどころではない量である。

いや、何故、男の人は買い物に加減という言葉を知らないのだろう?

缶ビールやコーラをケース買いするにしても、4ケースも5ケースも買うでないわっ!

プリンだけで買い物カゴ1つを、いっぱいにするのは止めようか?

うちの冷蔵庫の大きさ知ってる?ねえ知ってる?

まさかお店の業務用を見据え、、、いやいや、賞味期限があるよね?

眉間にシワが浮かびかけたが、道代は素直に諦め、甘えておくことにした。

どうせ使い魔くん達が食べてくれるでしょ!


お花見自体は早く切り上げた形だったのだが、スーパーでの買い物が、まさかフィーレラナ達にとって、アトラクション扱いになるとは思わず、違う意味でなのだが結果、いい時間潰しになったのではないだろうか?


当初は、あれだけ警戒していた赤星に対しても、食べ物という武器で、しっかりと餌付けされたようである。


外の世界からに対しても、ハンバーガーやら肉やらプリンの力は絶大なのだろうか?


うん、可愛いと美味しいは正義なのだ!きっと。



まだ明るいが、部屋に帰宅してからは、女子4人での即席料理教室が始まった。


もちろん講師は道代で、かえかとフィーレラナ、そして佐々木も道代の横にベッタリとくっ付き、興味津々である。


「も、もう少し離れよっか!包丁持ってるから危ないしね」


道代が言うも、あまり離れるそぶりもなく。

それもそのはず、今日のお題は、かえか達が最初にここで食べた「生姜焼き」である。


男子を落とす料理の奥義の1つであり、かえかとフィーレラナをも夢中にさせる。

女子力も上げたいのだから覚えないわけにはいかない!

佐々木も料理が出来ないわけではないのだが、仕事柄と基本1人暮らしなので、そこまでは自炊するわけではない。

食べさせたい好きな異性が居るわけではないが、やはり乙女なのだ。


佐々木がスマフォを構えて動画撮影まで始めたのには道代もちょっと引き気味だった。


厚めにカットされた豚肉に軽く包丁で切れ目を、まんべんなく入れていく。

その肉を用意しておいた大きめの保存袋に入れると、リンゴを擦り下ろしたものとタレ、生姜はチューブの物を加える。

フィーレラナの何故リンゴなのか?という問いに、こうすると少しだけど、お肉が柔らかくなるのよ!と保存袋の口を閉じ「こうして、しばらく揉んでおいてね」とかえかとフィーレラナ、それぞれに漬け込んだ肉の入った保存袋を渡した。

2人が素直に袋を揉みしだく姿は可愛いを通り越して癒しそのものであったが、気を取り直し。

「本当なら生姜を千切りにした方が良いんだけど、今日は漬け込んで置いたわけでもないから簡単なやり方の方でチューブを使ったからね」

道代は説明することで自我を取り戻していた。


次は大きめのキャベツを2玉取り出すと中の芯を切り抜き、1/4にカットしてから千切りにしていく。


それを見ていたフィーレラナが「私もやる!」と言うので、包丁で手を切らないように気をつけてねと言ったら、包丁は要らないとのこと。


佐々木と道代の頭に「?」が浮かんでる側からフィーレラナはキャベツの芯に向かって指先を、クルッと回したかと思うと、いつカットされたのか?芯だけが抜け落ちたのである。

そのまま両手で1玉のキャベツをボールの上へ持ってきた瞬間、その両手からキャベツが千切り状にボールの中へバラバラと切られた形で落下していった。


何をどうしたのか、佐々木にも道代にも、まったく見えなかったのだが「あら便利!」と、すぐに切り替えるのは能天気なのか前向きなのか。


後に佐々木は、この時のスマフォで録画していた映像を分析に出すのだが、解析不明と言われるだけであった。


「じゃあ次は玉ねぎね!こんな風にお願い出来る?」

道代は炒め用に薄切りにして見せるのだが

やはりフィーレラナは玉ねぎを手に持ち外皮だけを剥いた時には、中が道代の注文通りに切れ上がっていた。


涙が出るヒマもない。

道代はともかく佐々木は心底羨ましがっている。


大皿にまとめてしまおうか?とも思ったのだが、食欲モンスターが別で5人もいる事を思い出し、それぞれ別の皿に分けて盛り付けることにした。

キャベツを乗せ、焼いた豚肉を乗せ、残った肉汁で玉ねぎを炒めて肉の上に、更にその肉汁をソースに。


テーブルの方では既に赤星と村瀬がビールを飲み始めている。


妖精達は大きめの1つのコップに5本刺さったストローで、コーラの早飲み競争を始めて盛り上がっていた。

どんどん無くなるコップに村瀬がコーラを継ぎ足しているお陰で、5人とも顔が真っ赤になってまで吸い上げている。


「そんなに無理しなくても、たっぷりと買ってきたんだから取り合わなくてもいいんだぞ!」


赤星の呼びかけなど知ったこっちゃないらしい。

絶対に負けられない戦いが、ここにはあるようだ。


テーブルに生姜焼きの皿が並べ始められた事で、ようやくコーラ戦争は終わったらしいが、しばらくの間、部屋にはゲップのコーラスが鳴り響いていた。


佐々木も赤星も、ここ数日間、目の前の少女達を見てきたが、こんな風に幸せそうな顔をするんだな!というくらい、生姜焼きを頬ばるフィーレラナとかえかの顔は、ご満悦である。


その後、何故か、かえかとフィーレラナは道代の左右から両腕に抱きつき、次から次へと缶ビールを開けて道代のコップに注ぎ込み、明らかに潰しにかかっていた。

自分達の甘え上手という武器を最大限に発揮して。


「あら、舐めないでよ!こう見えて私はお酒には強いにょ、、、りょ〜ぉ〜」

そう言いながらコテンと簡単に酔い潰れた道代を見下ろし、フィーレラナは

「チョロい」

悪い顔で、そう言い放ったのである。


どこで覚えた!

というかエルフなのに、その顔、止めなさい!

赤星と佐々木の心のツッコミなど知ったこっちゃないのだろう。

気がついたら、横のかえかも同じように笑っている?


何この状況?と赤星と佐々木がドン引きで酔いが醒めかけ横を見ると、何故か村瀬も道代と同じように酔い潰れていた。


なんで?


かえかとフィーレラナは、互いの顔を見合うと「じゃ、始めよっか」

そう言いながら押し入れを開けて下の奥側にある箱を引っ張り出そうとしている。


「道代さんには悪いけどビールと魔法の合わせ技で眠ってもらったよー」

フィーレラナの顔は、いかにもお楽しみはこれからだと言わんばかりである。

かえかは眠っている村瀬の方を指差し「ついで」と、一言だけだ。


「おい!なんだそれ?」

引っ張り出された箱を指し、聞いてきた赤星に

「道代の家宝だよ!」とフィーレラナは視線を箱に向けたままである。


かえかとフィーレラナが2人がかりで引っ張り出した箱は、長さが1mほどで高さと幅が20cmずつであろうか?

細長い木製のその箱にはまるで封印されているかのように、何枚かの札と思える

貼り紙がされている。


「私たちが、ココに呼ばれた理由かもしれないからねー!」


どこか、これから悪戯しますよ!と言わんばかりに、かえかとフィーレラナの2人は、つま先立ちで、膝を曲げた姿勢のまま、箱の前に横並びでしゃがみ込んでいる。


「さてと、この箱の中の物?、、者?、、モノかな?」

どう呼ぶべきか悩みだしたフィーレラナに、かえかが「コイツ、、、でいい」そう呟いた時、いきなりビクっと箱が身震いしたのである。


「ヒィッ」

酔っていたせいで、思わずシャックリのような声を出してしまいながら佐々木は少し後退りした。


赤星は懐にしまってある拳銃に手を伸ばしかけたが、そのまま固まっている。


そんな2人のことなど、お構いなしに、あちこちいじりまわしながら

「開かないねー」

「封印、、、やっかい、、、」


フィーレラナは舌舐めずりをし、かえかはツンツンと封印の部分を指先で突っついている。


「切っちゃえば?」そう言うフィーレラナに頷き「青朧火!」そう呟くと、かえかの左手には青白い炎が揺らめく刀が浮かび出している。


その時である。


「ちょっ!ちょっと待てよ!」

どこかで聞いたドラマのセリフのような言葉がした。


箱の中から。


「すみません、ちょっと待ってください!そんなので斬られたらマジで死んでしまいます」


うん、やっぱり声は箱の中からするのであった。

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