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時渡りのかえか  作者: 塩引鮭
現代編
22/65

22、隅田公園でお花見

現代編その19


〜隅田公園でお花見〜


3人がメイドデビューした翌日。


週末ということもあり、お昼前の店内は賑わっていたのだが・・・

明らかに雰囲気が悪かった。


というのも、来店しているほとんどが、昨夜のエゴサーチで話題になっていた、かえかとフィーレラナを目当てに来ている客だと思われたからである。


「居ないね!」

「見当たらない」

「天使は?エルフは?」


流石にマズイ!と思ったのか、バックヤードから様子を伺っていた道代が、佐々木の携帯に電話をかける。


「あ、もしもし?道代です!由加ちゃん、お願いがあるんだけど」


昨日はすれ違いだったが、佐々木由加は、本来の任務を果たすべく、日課となっている、かえかとフィーレラナの図書館に同行していた。


館内には入らないものの、離れた場所に止めてある車の中で、赤星と村瀬も待機している。


今現在、あの少女達に何かしようとか誘拐、拉致など接触をはかろうとする者達は居ないが。


万が一のこともある。


ケガや被害が出ないに越した事はないのだから。


襲ってきた相手が・・・なのだが。



どうせ夕方までは暇だろうと、昼飯はコンビニでもいいか?と村瀬と話していたら、3人が揃って図書館から出て来た。


というか慌て気味で、こちらに向かってくる?


「悪いですが、道代さんのお店までお願いします」

佐々木が、そう言いながら、かえか、フィーレラナと3人が後部座席に勢いよく飛び乗ってきた。


「何かあったんですか?」

村瀬が尋ねると、道代さんからのSOSです、とだけ佐々木は告げる。


運転席の赤星は無言で車を急発進させて秋葉原方面へ向かった。




「・・・なるほど・・・SOS・・・ね」


呆れ返る赤星と村瀬を別にして、話題のメイド3人の登場に店内からは地響きも混じった歓声が上がる。


ごった返す店内と別に、1階のエレベーター前には、店内へ入店する順番待ちの行列も二桁ほど出来上がっている。


「幸ちゃん、赤星さん、ゴメンね!なんで3人が居ないんだ!って暴動になりそうだったから、、、テヘッ」


悪びれる気もない道代が悪戯っ子のような笑顔を見せる。


ネット社会、恐るべし。


昨日の今日で、これかよと赤星はゾッとしたのだが、これでは、今後の警護も難しい。


なんとなくだが有名人化していくのも目に見えている気がする。


このまま極秘裏に彼女達を政府側に取り込み、いろいろと情報やら秘密を引き出せる関係になる前に、必ず第三者からの横槍が入りそうだ。


それが彼女達にとって、良い意味でも悪い意味でも。



当面は観察と、好きなようにさせながら彼女達が何を目的に行動しているのか?

そして友好的かつ協力してもらえる関係を築く土台を作り上げるようにと言われているのだが。


それはつまり人体実験にも参加させたい上の本音も含まれている。


公にしたくないのは、人権問題で世論から叩かれるなどという生優しい理由だけでない。

世界から見ても2人は丁重に接しなければいけない客人でありサンプルなわけで、何故、日本だけが世界にとって重要な異邦人との接触という、このイベントを隠し独占しようとするのか?となるのは必然だからだ。


そうなると手段を選ばない国が必ず出てくる。

拉致誘拐という国同士のなりふり構わない争いが起こるかもしれない。

この日本で。


国としても、まだ公には出来ないから人数はかけられない。

彼女達をいきなり拘束も出来ない。

そもそも拘束出来るのか?なのだが。


この矛盾しまくった現状のまま、悪い方へ進む未来しか思いつかない自分のネガティブな思考を、直そうと分かってはいるのだが、今の赤星には見守るしかない。





怒涛の週末を乗り切り、月曜の定休日。

隅田公園は平日にもかかわらず花見客で賑わっていた。


前日の天気予報でも晴天になるということだったので赤星が、かえか達に行きたいところは無いか?と尋ねてみたのである。

まさかの定番中の定番、観光名所であるスカイツリーという言葉が、彼女達の口から出てくるとは思わず、赤星だけでなく佐々木も驚いたのである。


とはいっても登ってみたいというのではなく、近くまで行ってスカイツリーの外観を見たいだけと言うので、じゃあ!と道代が、お花見に行きましょう!と提案を出し、今こうして隅田公園に6人で出かけてきたわけである。


程よいベンチに腰掛け、大量のテイクアウトしたハンバーガーと飲み物を抱えて村瀬もやって来た。


それぞれに割り当て、頂きますと同時に妖精の2人と使い魔の3人が、道代やフィーレラナの膝の上、紙袋の中、佐々木の二の腕に捕まりポテトをおねだりしたり、それぞれ夢中にかじりついている。


その様子に村瀬は慌てたが、佐々木、赤星、村瀬の3人には隠す必要が無いから視認魔法を解除しているのだという。


「それって魔法を解除することで自分達だけが見えるって事は、他の人は魔法にかかってるということ?

あれ?逆に解除ってことは、今まで俺たち、魔法にかかってたってこと?」


ややこしそうだがフィーレラナが説明してくれる話では、それぞれが自分達の身体を認識させないようにしてるだけなのだが

それを特定の条件で指定した人物からの視線のみ・外す・だけなのだそうだ。


つまり、わずかでも魔力の省エネにはなるそうで、全部を理解したわけでは無いが村瀬は黙って、うんうんうなずいていた。


その手に持っていたポテトを全部、妖精や使い魔達に取られて、道代や佐々木が笑いを押し殺してるのに、まだ気づかない。



そんなやり取りの間も食事をしながらではあったが、かえかとフィーレラナの視線は、ずっとスカイツリーの上の部分を眺めたままだった。



赤星が「高い塔は珍しいのか?」と聞いてみると


「同じだから」


そう答えつつも、フィーレラナの視線は、スカイツリーから離さないままであった。


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