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時渡りのかえか  作者: 塩引鮭
現代編
16/65

16、道代への訪問者

現代編その13


〜道代への訪問者〜


休業なので店内には他に誰もいない。


普段はコスプレやメイドの衣装を来たアルバイトの女の子達とお客様で、それなりに賑わっているのだが、今は最低限の照明に照らされたテーブルの席に大人が4人だけである。


「あのー、コーヒーでよろしいですか?」

道代の問いに赤星が「すみません、遠慮なく頂きます」と頭を下げる。


これからのことは、この店主も少なからず巻き込んで協力してもらうことは必然なので、相手の申し出を断って印象を悪くするよりは甘えておくのが得策だった。


しばらくして出されたコーヒーと、砂糖とミルクはおいくつずつ?という言葉に

「お構いなく、自分達でやりますので」と、それぞれカップに口をつけてから辺りを伺う。


「早速ですが、彼女達は?」

赤星の問いに道代は「今日は彼女達だけで図書館に出かけてます」

どこか嬉しそうに微笑んでいる。


「今日は?彼女達だけでという事は、昨日も出かけられたと?」


「ええーっ!?、ねえ、道代さん!あの格好で2人だけでって、目立つんじゃ?」

最初の赤星の疑問の問いに、村瀬が心配事を被せてくる。


「ああ、それなら大丈夫ですよ!いくらなんでも、あんなパンツが見えそうなハレンチな格好で歩かせません。ちゃんと、お洋服もコーディネートして着替えさせてありますから安心してください」


いや、何が安心なのだろう?

赤星は少し眉間にシワを寄せる。

見た目は美少女達なのだが、正直、得体の知れない者を、簡単に信用しすぎてる。


まさか、この目の前の女性は既に洗脳されてるわけでもないとは思うが。


「分かりました、では本題に入らさせて頂きますが、佐々木」

赤星からの振りに、はい、と横の女性が短く返事をする。

ここからは佐々木が説明を続けるようだ。


「では、話の続きですが、私達は政府からの要請で、彼女達2名を警護しながら、その正体、目的、能力などを観察し、日本にとって友好的な関係を築きたい」


道代はただうなずくのみで、緊張していた。

たぶん意味は頭に入っていない。


構わず佐々木は続ける。

「ただし、これは彼女達が友好的ならばというのが前提になります。悪い言い方ならば、監視。正体と能力を把握して、我々人間が太刀打ち出来るのか?付け入ることは可能なのか?調べてこい!ということです」


「えっ!!ちょっと待ってください!!あの子達は普通に」


「ええ、見た目は、です。そして不法入国、住民票やパスポートは有りますか?確認されましたか?歌舞伎町のビルについての器物破損や暴行罪に至っては、彼女達が行なった明確な証拠はありません。映像からもハッキリとは分かりませんが、訴えてくる被害者が居る訳でもないですし、見方によっては囚われていた他の少女達を救い出したヒーローとも言えます」


政府が権限を行使せず、探りだけで静観している理由は、ここにもある。


万が一、第三者が現場の様子を目撃、既に録画していて、今後ネットやSNSなどに拡散されていく可能性である。


現在、その歌舞伎町のビルは、現場周辺の立ち入り禁止が続いているが、ちょっとしたインスタ目的の観光名所になっている。


諸外国からの、何が起こっているのか日本政府は調査、公表すべきだ!との声も来ているが、今は、無許可で誰かがビルをアート化しようとしたようだ、などという苦しい言い訳で、どうやって持ち込んだか設置したかは調査中と誤魔化してる。


国内でも野党から、未知のウィルスだの病原菌だの騒いでいるが、ウイルスなどの病原菌が飛び回るようなものではないと、桜の木の遺伝子調査の資料を配り、今後も調査は続けると黙らせた。


今現在ではあるが、かえかとフィーレラナの存在は公になっていないはずである。



「彼女達の能力、上手く処理する言葉が見つかりませんが、言い方としては超能力、はたまた魔法のような力があるのはご存知ですよね?隣に居るこちらの刑事2人が、それぞれ目撃、体験していますので、信じられないではなく、使えるのだと私達は思ってます」



人前で見せちゃ駄目とは言っているものの、自分だけでなく目の前の刑事達も体験しているのだ。

隠し通すとかのレベルではないのだろう。


諦めてうなだれかけるが「それで、、、かえかちゃんとフィーちゃんは、何処か別の場所に連れてくのでしょうか?」

なんとか希望として声を絞り出してみた。


赤星と村瀬が横目で意地悪だなあという視線を佐々木に向けている。


口調が強くなりすぎていたのか、道代の今にも泣き出しそうな表情を、慌ててなだめるかのように

「い、いえ、安心して下さい!当面は、そんなことはありませんから」


キツイ言い方をしたつもりはなかったのだが、愛想が無いとか、ぶっきらぼうとか、上司から言われたことなど気にもしないでいた事が今、裏目に出たかもしれない。


今は自衛隊のままで居る必要は無いのだと佐々木は心の中で自分の人当たりの不器用を反省していた。


「当面、、は?、、」

その部分をしっかり聞き逃していない道代の問いに思わず、ううっ、と、少したじろぎかけたが

「本当に安心してください!彼女達のことを政府としても、私達としても知りたいんです!その上で、何か私達の生活に有意義な事が彼女達から教えられるかも知れない!いわば大事な国賓待遇というわけで」


なんだか最後の方は言い訳っぽくなっていた気がするが、国賓待遇という言葉に道代の顔がパーっと明るくなったのでホッとする。


この人の喜怒哀楽はジェットコースターか。


「そういうわけで、私達が彼女達の邪魔にならない距離を保ちつつ、これからしばらく付き添う形になる事、どうかご了承下さい」


立ち上がる佐々木に合わせるように赤星と村瀬も立ち上がり、3人同時に頭を下げたのだが、道代は、ただ顔を引きつらせて苦笑いするのみだった。


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