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奴隷は魔王となり、復讐を決意する。  作者: 影月命
第1章「奴隷落ち」
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第3話 『裏切り』

なんで、みんな僕が魔人であることを知ってるんだ?


「ど、どういうこと?僕、魔人じゃないよ?」


とりあえず、否定してみる。

なんで、バレた?

ふと、昨日の出来事を思い出す。

まさか、エルザが?

否、そんなまさか、エルザがそんなことするはずがない。

だったら、なぜ?

わけがわからず、頭が混乱する。


すると、みんなの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「嘘つくなよ。あんな姿を見せといて、言い逃れできると思うなよ?」


後ろから、歩きながら僕に喋っているのは、僕の友達であるはずの、エルザだった。


「エルザ、どうして…」


僕はまだ状況を理解できてない。なのに、なぜか涙が流れた。

この涙がどんな感情で出てきたのか、まだ僕はわかってなかった。


「ハッ、何泣いてんだよ。気持ちわりぃ」


エルザは僕を見ながらケラケラと笑っていた。

笑ってるはずなのに、いつものような笑顔ではない。


僕はこのとき知った。

エルザが僕を裏切ったということを。


「どうして…どうしてそんなこと!」


思わず、声が大きくなる。


「決まってんだろ。お前が魔人だからだよ。魔人じゃなかったらこれからも仲良くしていこうと思ったのによ。まったく、期待を裏切ってくれるな」


なんだ、心の底から、どす黒い感情が盛り上げてくるような感覚に襲われる。


「魔人は人間に従って、犬みたいに吠えてればいいんだよ!ったく、俺がまさかこんな奴を友達と思ってたとは。思い返すだけでも気持ちが悪い」


「何が……何が」

「え?何?」


エルザは僕をバカにするような感じで耳を傾ける。


「魔人の何が悪いんだよ!種族が違うだけでなんでこうも差別を受けなきゃいけないんだよ!」

「あ~あ~、うるせ~な」


エルザは耳を指で穿りながらニヤニヤしている。


「とりあえずここにいても不快だから、奴隷商のところに行って奴隷として売ってもらおうぜ」

「それはいい案だな」


すると、村の人たちは僕を取りおさえ、動けない状態になった。

こんなの、すぐに魔人の力で振ればよかったものを、このときの僕はまだ良心が残っていた。

そのまま取りおさえた奴を振り飛ばして村人全員を殺せばよかった。


僕はエルザが裏切ったという事実をまだ受け入れられなかった。

悲しみと怒りの感情が混合して、僕は初めて『恨み』というものを感じた。


僕はされるがまま、二人に腕を引っ張られ、肩を抑えられて動けない状態になった。

エルザは僕に顔を近づけて、


「そうそうそれだよ。魔人は怯えたような表情してればいいんだよ」


と、声のトーンを落としてニヤニヤといやらしい笑みを見せる。

魔人とバレる前のエルザと全然違う。

あのときは演技をしていたのかと思うくらい。


「じゃ、これを飲んでもらうか」


エルザがポケットから出したものは液体の入った瓶だった。

紫色で、なんだか毒々しい。


「なんだよ、それ」


すると、ニヤニヤしながら、それがここにあるのが、さも当然のように言った。


「え、毒に決まってんじゃん」

「ど、毒?なんでそんなものが」

「ほら、この前、蛇と出会ったことがあっただろ?そのときに倒したあと、とってたんだ。まさかここで役に立つとは思ってなかったよ」


説明を終えると、瓶の蓋を開けて、僕の口に近づけてきた。

これを飲んだら死ぬかもしれない。


僕は激しく抵抗するも、口に含まれ、それをゴックンと飲み込んでしまった。

魔人の力でどうにかすればよかったって?

このときの僕は頭が混乱して、その考えには至らなかったのだ。

それから数秒が経過すると、体が痺れてきて、ついには動けなくなり、倒れてしまった。


「これは……?」

「体を麻痺させる毒だよ。お、今の俺めちゃくちゃ優しい。魔人に麻痺だけさせる毒を飲ませたんだぜ?」

「それは優しすぎだろ」


それのどこが優しいんだ。

エルザは僕を見下すような表情をしていた。

それを見て、僕は何とも言えない気持ちに至った。


すると、僕の家のドアが開いて、母さんも二人に抑えられて出てきた。


「そいつが魔人ってことはこいつも魔人だな」

「あぶね、忘れてた。君たちがそいつを連れてこなかったら、これからもずっとこの村に魔人がいることになる」


エルザを見ると、僕たちを見て、あざ笑っていた。


母さんを見ると、まるで、この世のすべてに絶望したような怯えた表情をしていた。

それに、恐怖で体が震えている。

このあとのことを想像したのかもしれない。

僕も無意識にこんな表情をしているのだろうか。


「おら、お前も飲め」


強引に口を開けて毒を流し込むエルザを見て、また激しい怒りと憎しみを覚えた。


毒を飲んだ母さんは数秒後に倒れてしまった。

麻痺しだしたってことか。


「おら、行くぞ」


力のある人に担がれ、僕はされるがまま、どこかに連れていかれた。


みんなは僕を取り囲むような立ち位置で歩いていた。

エルザはまるでリーダーみたいに先頭の真ん中に立って歩いていた。

後ろには母さんもいる。

ごめん、母さん。魔人であることがバラしてしまって。


僕たちはこれからどうなるんだ?

奴隷にして売るとか言ってた。


僕は今、どこに向かってるんだ?

歩いていくにつれ、徐々に恐怖が大きくなる。


なんでこうなったんだっけ。

そうだ。エルザが僕を、裏切ったんだ。

やっぱり、人間は人間だ。

人を簡単に裏切り、魔人を見下す。


エルザたちを信じた僕がバカだった。


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