第2話 『力を発揮』
「く、来るなぁ!」
エルザは怖がりながら、斧を振っている。
このままだと二人とも死ぬ。
僕が死ぬだけならまだいい。
でも、エルザが死ぬなんて耐えられない。
僕は魔人だ。
だから、僕は魔人にしかない力を秘めている。
でも、それを発揮したら、僕が魔人であることがバレてしまう。
……でも、もしバレたとしても、エルザだから、きっと僕を軽蔑しないだろう。
きっと、みんなには内緒にしてくれるはずだ。
僕はエルザの前に立ち、エルザを手で守る。
「エルザ、下がってて」
「え」
エルザが僕の後ろに行ったのを確認すると、僕は体に力を込めた。
すると、体から赤いオーラが出てきた。
目も赤く光り出す。
髪はフワリと浮き、角が見え隠れしている。
「ラング……?」
エルザは僕を見て驚いていた。
それも仕方ないだろう。
僕が魔人である衝撃の事実を知ったのだから。
「僕に任せて」
僕はエルザに精一杯の笑顔を見せ、ゴブリンに向き直った。
後ろから襲いかかってきたが、気配で行動を感じ取ることができるから簡単に避けることができる。
続いて、横から同時に飛びついてきた。
それを僕は、右のゴブリンの手を掴んで左のゴブリンに向かって投げた。
また後ろからかかってきたが、それも華麗に避けてゴブリンの背中を思い切り殴る。
今度は全員で襲い掛かってきたけど、威圧で弾き返した。
「終わりだー!」
最後に僕は手から火を放ち、ゴブリンを全員燃やし尽くした。
体が落ち着き、元に戻る。
「ラング…お前……魔人だったのか…?」
「エルザ…今まで黙っててごめん!」
しっかりと腰を曲げて謝る。
「…僕、魔人だったんだ」
「……魔人…か。でも、魔人でもラングはラングだから、俺の友達だから…俺は魔人でもお前のことは軽蔑しないよ」
最初は僕を怯えたような目で見ていたけど、徐々にいつものような表情に戻り、笑顔で僕と接してくれた。
「エルザ…ありがとう」
エルザの優しさに思わず涙が出る。
「泣くなって。差別しないのは当たり前だろ?それに俺を守ってくれたんだし。俺は差別する考えは好きじゃねえんだ。でも、もしかしたら村の中に差別をする奴がいるかもしれないから、内緒にしておくよ」
「エルザ……本当に、ありがとう」
また涙が出る。
「だから泣くなって」
今日はそのまま帰り、動物が見当たらなくて魔物と出会ったから帰ったと報告をした。
もちろん、僕が魔人ということは言っていない。
その日は、魔物にあって怖い目にあったから精神が不安定かもしれないから休みなさいって感じでずっと寝ていた。
毎日の疲れがとれるから、結果的にゴブリンと出会って良かったのかもしれない。
その日はもう眠った。
次の日、起きると、なんだか外が騒がしかった。
なんだろうと思い、着替えて外に出ると、村の人たちが集まっていた。
なんか話してる。
気になって近くに行くと、僕はみんなに何してるのと話しかけた。
全員が一斉にこっちを向く。
あれ、おかしいな。
みんな、僕を見る目がおかしい。
僕を見て怯えてる人もいれば、僕を睨んでる人もいた。
「ど、どうしたの、みんな…?」
僕は笑顔をつくり、みんなに話しかける。
だが、みんなはその表情は少しも崩そうとしない。
なんで、みんな僕を睨んでるの?
すると、その中にいる誰かが衝撃的な一言を口にする。
「なんだよ、魔人」
え?