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第八話 海底トレジャー・ハント

 翌朝、ログインして港に行くと、二百人以上のプレイヤーがいた。

(これ、すごいな。(うしお)の理が六十名くらいって話だから。百五十人近く集めたのか)


 大木戸が遊太を見つけて、笑顔で声を懸けてくる。

「漁船を出して、海底探査装置を装備してくれ。装備が終わりしだい、空気タンクを積み込む」


「タンクを積むのはいいが、どこに行けばいいか俺は知らないぞ」

「大丈夫だ。遊太の船には俺が乗る。船頭は俺がする」


「わかった。よろしく頼むよ」

 遊太は漁船を出す。漁船から魚群探知機を外す。代わりに海底探査装置を船に装備させた。


 船の装備を交換が終わると、潮の理のメンバーが船の荷台に、三十㎏はありそうな大型の空気タンクを四つ積み込む。あとは大木戸を含めて、四人の人間が乗ってきた。


「よし、船を出してくれ。海岸線にそって港の反対側まで行くんだ。そこから東に行ってくれ」

「了解した。天気もいいし、風もないから問題ないだろう」


 遊太は大木戸の指示に従って、船を出した。

 遊太の船の後方一・五㎞に、全長四十mの貨物船が二隻ついてやってくる。


 大木戸が表情も明るく説明する。

「俺たちが荷物を上げる時は、三人一組でチームを組む。だが。今回は多く宝を引き上げるから、十人でチームを組んでいる。漁船に五人。貨物船に三人と二人だ」


「三人でやるところを十人でやって、利益が出るのか?」

「数を引き上げれば、問題ない。今日は沈没船が多く出現する日だから、諸経費を引いても、分配金は一人当たり十万リーネは固いと見ている」


(沈没船は毎日、出現するって聞いていたけど、多く出現する日って、あるんだな)


 マンサーナ島から船を走らせること一時間。

 海底探査装置の画面を見ていた大木戸が声を上げる。

「あった、沈没船だ。水深三十mに一艘、沈んでいる」


「見つかってよかった。それで俺は、どうすればいい? 海底に潜って作業するか?」

「作業は分担する。遊太は辺りを警戒してくれ。船に浮力玉を付けて浮き上がらせる作業は、他の人間でやる」


(海底に潜って、船を浮かせる浮力玉を着ける作業はやってみたい。だが、今日は雇われの身。おとなしく従っておくか)

「わかった。辺りを警戒しておく」


「じゃあ、頼んだぜ。四人いても、浮き上がらせるのに二十分は掛かるからな」

 大木戸を含む四人は、足ヒレ、潜水帽子、潜水スーツを装備する。最後に、四人で空気タンクを背負って海中に入っていった。


 作業が始まると、後ろにいた貨物船が、ゆっくりと寄ってくる。

 漁船から五百mの位置まで来たので念で報告を入れる。

「先ほど大木戸さんが、海中に作業に入った。作業時間は二十分だ」


 貨物船から感じのよい声に似た念が帰って来る。

「油断はしないでよ。沈没船の引き上げに海賊は付きものなのよ」

「俺は漁船の船長。名は遊太。お宅の名前は?」


 数秒の間があってから、返答がある。

「私は貨物船の船長。ローサよ」

(鏡の騎士団の副団長さんが、海底トレジャー・ハントか)


 普段なら、おかしな状況ではない。

 貨物船も所持するにはお金が掛かる。なので、貨物船は誰しもが持っている品ではない。


 たまたま、潮の理で貨物船を所持している人間を探したなら、ローサが見つかった可能性はあった。だが、現状では、どうもおかしい。

「奇遇ですね。また、お会いしましたね」


「そうね。奇遇ね」と素っ気ない返事があった。

「ローサさんも港で誘われたんですか?」


「私は同じクランの仲間経由で仕事の依頼が来たわ。無駄口もいいけど、警戒も忘れずにね」

(知っているとわかると、急に冷たくなったね。あまり、会話を深めたくないようだな)


 遊太は双眼鏡を取り出す。

 ローサの貨物船の帆を確認する。貨物船の帆には、鏡の騎士団の紋章はなかった。

(紋章をわざと外しているな。鏡の騎士団が海上トレジャー・ハントに参加しているのを隠すためか。でも、いったい何で隠す?)


 何か怪しいなと思って、双眼鏡を覗いていると、視界に小さな影が見えた。

 注視すると、小型艇が見えた。

(小型艇が偶然に、こんな場所を走っているとは思えない。まさか海賊か?)


 海賊の軍艦を探すが、視界には見当たらなかった。

(いちおう、報告を入れておくか)


 海中に向かって念を飛ばす。

「小型艇が一艘だけ見えた。近くに海賊船は見えない。だが、海賊がいるかもしれない」

「わかった。こっちは作業を続ける。引き続き警戒を続けてくれ」


 周囲を警戒すると、やはり小型艇が時折と見えた。

(漁船の周りを大きく回っているな。沈没船が浮かび上がったら、襲ってきて宝を奪う気か)


 嫌な空気を感じた。五分後。海面に影が映る。

 全長四十mの貨物船が浮かび上がってきた。


 沈没船が浮かび上がると、ローサの操縦する貨物船が、ゆっくりと寄ってきた。

 大木戸たちも浮上してくる。大木戸は潜水帽子を外して、真面目な顔で指示を出す。

「沈没船の荷物のうち、金目の物を貨物船に移すぞ。船長以外は手を貸してくれ」


 大木戸の指示で、積荷の積み替えが始まる。この時点でも海賊の襲撃はなかった。

 積み替えが終わると、ローサが操縦する貨物船が動き出す。


 ローサから現場に念が飛んで来る。

「じゃあ、荷物をマンサーナ島まで運ぶわね」

「気を付けてな」と大木戸が厳しい視線で見送る。


 遊太はあまりよい気がしなかった。

「なあ、大木戸さん。操船と戦闘は同時にできない。ローサ一人じゃ不安だ。誰かつけなくて、いいか?」


 大木戸は渋い表情で答えた。

「海賊に襲われたら二人や三人いても結果は一緒だ。殺されて荷を奪われる。なら、一人でも同じことだ。ここで作業員がいなくなるほうが時間の無駄だ」


「そういうものかね」

「ほら、あと貨物船を一隻待たせているんだ。もう一隻、引き上げに行くぞ」


 三十分を掛けて、もう一隻の沈没船を探して発見する。

 遊太は同じように見張りを命じられる。

 二隻目は順調に引き上げられ、遊太たちと一緒に帰島した。

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