発覚
「加藤、加藤、大丈夫か…」
吉岡の声がうっすらと聞こえる…
目が覚めた綾は保健室にいた。
そこには吉岡と保健室の本田先生の姿がある。
「加藤、すまない、先生そんなつもりじゃなかったんだ!!」
(そんなつもりではなかったかもしれないけど、ドラマに影響された事には間違いないだろ…)と綾は思う…
「いや、大丈夫です そもそも先生のせいじゃなくて、私昨日から左奥歯がいたかったんです…」と綾が吉岡をフォローすると…
「左奥歯…」
本田先生の血相が変わった。
「ねぇ、加藤さん、その事はお家の人はしってるの?」と、本田が綾に問いかける、
「いぇ、昨晩からなんで、まだ…」
「左奥歯ズキズキって…まさか…」
吉岡が頭を抱え始めた、本田も口を手でふさぎオロオロしている… どうしたんだろう?と不思議に思う綾、すると本田は
「とにかく今から病院に行きましょう」と綾に言う、
そして綾は、本田の引率にて学校を後にした…
綾の通う高校から、徒歩十分ほどの所にある
「薮 歯科」そこに綾は連れて来られた、
「歯医者位、一人で来れるのに…」と思う綾、 しかし本田は何故かけわしい顔をしている、 ガラガラの院内、綾はすぐに診察室に通される、綾の前には院長の薮がいる、
「とりあえずレントゲン撮って、それから奥歯見せてもらいますね」
綾はレントゲン室にて歯のレントゲンを撮り、再度 薮の診察を受ける…
「じゃあ、一度外でお待ちいただけますか」
レントゲン撮って、歯を見ただけで何もしてない…どうせ来たなら、痛いからなんか処置してほしいんだけど…と思う綾、そう思いながらも待合室に向かう、 しばらくすると、慌てる様子で何故か久美子が現れた。
「綾!!大丈夫なの!!」慌てる久美子に対し綾は、
「大げさだなぁ…大丈夫だよ」と答える
「やはりご家族にも報告したほうがと思ってね、お母さんに連絡したの」と本田が言う、
「ガチャッ」と音がすると、診察室から薮が出てきた。
「ご家族の方ですか?、どうぞ中へ」
綾と久美子が診察室に通される、「お答えにくいのですが落ち着いて聞いて下さい、綾さんの病気は…」もったいぶる薮、
「虫歯じゃないんですか?」
ケロッと綾が言うと薮が、
「知っていたのかい?」と綾に問いかける
綾にはさっぱり空気がよめない…
「だって、ここ歯医者さんじゃないですか?昨日から左奥歯が痛いんです、今日治してもらえるんですか?」
横を見ると久美子が泣いている…綾はやっぱり空気がよめない…
「虫歯は今の医学だと凄く難しい病気なんだ、治すどころか、未だに研究が進んでいない位なんだよ…」
……綾には理解しきれない話になっていた……
「はぁ〜ここ歯医者ですよね?私、ただの虫歯ですよね?黙って聞いてますけど、さっきから大げさな話ばっかりで、なんの処置もしてないじゃないですか」
「興奮する気持ちはわかるが、そういう病気なんですよ…」と答える薮とさらに号泣し始める久美子、
「わけがわからないんですけど…頑張って話合わせて、先生はよくそんな難病を専門に病院やって生活できますね、理解できないんですけど」
綾の怒りは完全に頂点にきていた。
「研究の為だよ…院内の奥はコンビニエンスストアを妻が営んでいる、収入のは全てそこからだよ…」
薮の病院は裏口からコンビニエンスストアの入口となっていた…「海外とかにも治療法はないんですか〜」と久美子が問いかける、
(ちょっと、お母さんまで何言ってるの)
綾には完全理解不能の診察室…
「日本の方が研究は進んでいます…成功しても銀歯は免れられません…」
「銀歯〜」久美子は診察室を飛び出した…
「あの…とりあえず銀歯でもいいので治してもらえますか…今日…」
無言になる薮…
「とりあえず今日は薬を出しとくから、一緒に頑張ろう」薮は綾に伝えるが、ちがう病院に行こうと決意する綾であった…