【003】最強の変態紳士爆誕!! 『YES妄想! NOタッチ!』
「あのぅ~、すみません~~………………………………チェンジで」
「残念ながら一度実体化した魂は返品できません。クーリングオフもありません」
「?!………………………………ガクッ」
うな垂れる女神。
「何、案ずることはない! その異世界、私が欲望のままに救ってみせよう!」
「ちょっと黙ってなさいよ、この変態っ!?」
「女神よ。私は変態ではない…………『変態紳士』だっ!!」
「あぁあぁぁ~~~~~~~~~どうしてこうなったぁあぁああ~~~!!!」
リディアは目の前の変態……失礼、変態紳士こと御伽塚翔を見て動揺を隠し切れないでいた。
「何? 何で? どういうこと? どうしてこんな変態が目の前に姿を現しているの? 意味が……意味がわからない……」
現状がまったく把握できないでいたリディアはもう一度、資料に目を通してみる。
------------------------------------------------------
『御伽塚翔』
享年18歳
※異世界転生した際のスペック
【勇者:LV.100】
体力 :100,000
魔力 : 50,000
攻撃力: 8,000
守備力: 12,000
敏捷性: 7,000
特技 :愛の独唱、愛の抱擁
魔法属性:火、水、風、土、雷
魔法耐性:火、水、風、土、雷
【一口メモ】
生前、善行に善行を重ね続けたままその生涯を終えた為、その善行を重ね続けた者が異世界転生した際のスペックは『魔王に匹敵する』ほどの超絶スペックを宿す。バカみたいに強い。
…
……………
------------------------------------------------------
「御伽塚翔……十八歳。やっぱり間違いない」
リディアは名前を再度確認するがやはり目の前の男と同じ名前が記載されている。
「そ、それにしても…………改めてスペック見てもやっぱりすごいわ。なんで初っ端の転生した瞬間からすでに『Lv.100』で、魔法属性や魔法耐性も『全属性』網羅してるのよ? いろいろと冒険ものの『お約束』無視し過ぎでしょ?!」
改めて、その『超絶スペック』を見るとただただ溜息しかでない。
「で、でも、やっぱり間違いじゃないんだ……この変態がその『超絶スペックの人間の魂』であることは。で、でも、どうしてこんな変態が『善行に善行を重ねて』……いたの?」
まだ納得がいかないリディアに翔が説明を入れる。
「うむ。私のこれまでの人生は『町の安全を守ること』『町民の生活を豊かにすること』……それだけにすべての時間を費やした。そして、それこそが代々、御伽塚家の男子が受け継いできた『変態紳士』の使命でもあるっ!」
「だ、代々、受け継いできた『変態紳士』? ね、ねえ、その『変態紳士』ってあなただけじゃないの?」
「うむ。『変態紳士』は我が御伽塚家男子の誇り高き称号であり、それは初代から今の時代まで脈々と受け継がれてきたものだ。『弱きを助け、強きをくじく』『YES妄想! NOタッチ!』…………それが『変態紳士』の至上命題である」
「な、何? 二つ目の、その…………」
「『YES妄想! NOタッチ!』……これこそ、本物の変態紳士かどうかを試される言葉だ。愛でる対象に触れるなど以ての外! ただの外道でしかない! 本物は脳内で愛でるもの……」
「おいっ! それ『視姦』じゃねーか! こ、この、変態っ……!!!!!!!」
「…………ふぅ」
「お、おい…………なんだ、今の間は? お、お前、まさか、今、私を…………」
「……なかなかどうして、久しぶりにこの私が翻弄されました、さすが女神!」
「ぎゃああああ~~!! な、何言ってんの、お前!! 私が今、お前の脳内で何を……」
「あ、お気になさらず。墓場まで持って行きます故……」
「気になるわよっ! ていうかお前、もう死んでんじゃねーか!」
「まあまあ、女神……お美しい顔が台無しですよ? これは挨拶みたいなものなのでスルーしてください」
「できるかっ!…………ていうかやっぱりありえない、ありえないわっ! なんで、こんな格好も中身も変態の奴が十八年も世に蔓延っていたんだよ! ううん、今の話だと先祖の時代からということであれば、一体、何百年その格好を許してきたってのよ、その世界はっ!」
「……ざっと400年ほどだと聞いています」
「大丈夫かっ?! 地球っ!!」
リディアはもはや本筋とは関係のないことで半ギレとなっていた。
「な、なんでこんな変態が出てきたんだよ、おかしいだろ? そんなの資料にはどこにも書いていな…………………………んっ? んん~~……??」
リディアが尚も資料を詳しく穴が空くほど調べていると、ある『※注意書き』をみつけた。その注意書きはパッと見はわからないほど小さく書かれていたためリディアは最初その『※注意書き』を見落としていた。その為、改めてリディアはその『※注意書き』を目を細くしてじっくりと確認した。
※【注意】
ただし、その者…………『変態紳士』につき。
「さ、詐欺だーーーーーー!!!!!!! こんな小さい文字、気づくわけねーだろ、ごるぁああぁぁあぁ~~~~~~~~~!!!!!!」
しばらく、リディアは周囲を気にしないほどの絶叫でのた打ち回っていた。
――――10分後。
「御伽塚翔よ…………さあ、今回の任務を拒否るのです。今ならまだ間に合います。魂自身のキャンセルは合法です」
女神リディアは何事もなかったように翔に任務を拒否するよう言葉をかけた。
「いえ、私は全力で女神リディアと共に異世界で『魔王討伐』に勤しみたいと思います。これから長い付き合いになりますね、よろしくお願いします」
「いいいいやあぁああぁぁぁぁああぁぁぁぁあああぁあぁ~~~~~~~~~~!!!」
リディアが絶望の雄たけびを全力で上げると、後ろから『窓口のお偉いさん』という方が現れ、『やっかましいーー! さっさと行けっ!!』と言いながらリディアをボコボコにした後、強制的に私とリディアを異世界へと転生させてくれました。
私が『変態紳士』の名にかけて、異世界の平和を取り戻すと心と息子に固く硬く誓ったことは言うまでもない。
イキオイ……
ホント、それだけですのでラク~な気持ちで読んでくださいね。