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依頼

 ほんの極僅かの知名度。それが今のケンの【治癒魔法】の使い手として、世間からの評価。一部では、凄腕の【治癒魔法】を行使する冒険者が『ラレッド交易都市』に滞在してる……らしい……かもしれない?と噂が流れてるとか何とか……


 「ツキに見放されたか?」


 ここひと月(異世界に来てから……)稼ぎが悪い。とても金貨100万枚を集めることはできそうにない。

 なぜだ?神様から与えられた 治癒の力(チート)は本物だった。自分自身に治癒の魔法を使い、効果を体感した。現代医療と比較にならないほど優れている。魔法で一瞬に痛みが消えうせた。また、ケンが治癒した相手に、手が欠損した者がいた。それでも、【欠損】すらケンの魔法は【再生】させることに成功した。

 さすがに、治癒の魔法でも、【欠損】を【再生】させる力量を持つ者は、国に多くて一人いるとかいないとか。それをケンはいとも簡単に成功したのだ。

 俺以外に、凄腕の【治癒魔法】の使い手がごろごろと、この世界に点在してる?いや、それはあり得ないか。神様は言っていた。 【治癒魔法】としては(・・・・・・・・)この世界で最高の使い手だと。俺以外の有象無象の治癒士と比べてもらっては困る。

 

 『光』を使って、『治癒』の魔法を使う案は悪くはなかったと思う。人々の脳に『光の治癒士』として記憶は焼き付くはずだ。だが、足りない。もっと、派手に、目立ってケンの名を、それこそ何でも治せる治癒士がいることを世界に広めなければ。

 何が足りない。何が。


 ケンは、金を節約するために、『止まり木』の宿ではなく、安宿に引っ越していた。最低限の要望である個室。これだけは譲れない。あとは狭かろう安かろうの造りの宿だった。

 個室の固い床の上にボロ布が敷かれている。その上に座り、ケンはうんうんと唸って必死に金貨を稼ぐ方法を考えていた。

 

 「一日一回の制限がな……」

 

 今日はまだ魔法を使っていなかったな。


 「考えるのをやめよ」


 ケンは若干伸びた髪の毛を無造作に触る。そろそろ散髪に行こうかと思っていた時、異世界に来た。伸びた髪が気になった。次に仕事が成功したら髪を短くしよう。

 俺らしくない。うだうだ考えるなんて俺には合わない。俺には行動しかない。いつもそうだった。それに助けられてきた。


 「行くか。冒険者ギルドに」


 ・・・

 ・・

 ・


 中は仕事を探す冒険者と思われる人が多くいた。依頼書が掲示されている場所に行き、割のいい仕事があるかないか探す。が、今日は【治癒魔法】を使った仕事はなかった。

 

 いつも依頼を受ける立場だったが、依頼を出してみるか。

 袋に触り、現在の所持金を確かめる。


 【金貨2枚 銀貨4枚 小銀貨10枚 銅貨120枚】

 

 「こんにちは。今日はどのような御用でしょうか?ケンさん」


 受付は最初に利用した時と同じ、眼鏡の女性職員の所に行く。彼女は(まだ名前不明)ケンがそこそこ【治癒魔法】を使えることを知っているので話しやすい。



 「依頼を出したい。詳しい手続きを頼む」

 

 数十分かけて、依頼を完成させた。

 

 「ありがとう。仕事を受けに冒険者は来ますかね?」

 「…………報酬、金貨1枚。対象者、剣で魔物を斬ったことがある者。この内容ならすぐ来ますよ。しかし、正気ですか?」

 「何がですか?」


 ケンは不思議そうに職員に聞く。


 「何が……だって、依頼の内容が――――」

 「おい、この依頼書は本当か!」


 女職員の声に割り込むように、野太い男の声が聞こえた。

 声の主は190センチはあろうかという巨漢の大男。でっぷりとした腹。だが、この男も冒険者である。腰には剣が。頭にはナンディの皮の帽子。鋭いぎょろっとした目つきでケンを一瞬見た。実力はありそう。

 男の大きな手にはケンが出した依頼書があった。

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