ダンジョン
金貨の使い道を考えて浮かれていた。
ゾッジに自分の名前を伝えていなかったのを思い出す。急いで戻って再び名乗る。
「何やってるんだろうな……俺は」
ラレッド交易都市は広大なので3つの冒険者ギルドがある。
ギルドで手続きを済ませ、金貨を手に入れた。
初めて見る金貨。10円より小さく、1円よりは大きく感じた。
神様に貰った袋に金貨を入れてみる。
【金貨1枚】【PM 4:57】
と頭に文字が浮かんできた。これは便利な機能だ。100万枚も数えるのは大変だからな。
時間も分かった。寝床を探さないと。
『止まり木』の宿についた。職員の女性から聞いた話によると、中階級者が利用する宿で、おすすめされた。金貨1枚も(日本円で10万)稼いだし、多少はいいだろう。
個室付き。風呂もあって、飯も出た。部屋も綺麗で、ご飯も美味しかった。
「ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
ここ以外で宿を探すのも面倒なので、残りの残金を全て宿代にした。
仕事を探しに冒険者ギルドに行く。
受付の女性職員(昨日と同じ人)のところに行く。
「おはようございます。指名依頼の仕事は来てますか?」
「おはようございます。随分早いですね。ケンさんの【治癒魔法】の腕は確かなようですが……依頼はないです」
昨日今日で名は広まらないか。もっと『目立って』『派手』にいこう。
袋に触って時間を表示させる。
【AM 5:02】
冒険者ギルドは24時間利用できる体制になっている。中(で働いている)の人は大変そうだ。
「掲示板に治癒の仕事。雑用。『ダンジョン』等の仕事があります。そこから仕事を探してみてはいかがでしょうか?」
「『ダンジョン』とは何ですか?」
「魔物が生息している場所です。中は大変危険ですが、その分得られる物は大きいです。ドロップアイテム、貴重な魔導書等。ダンジョンの資源……ラレッドの住民はダンジョンから恩恵を受けて生活をしています。都市の中心地には『ダンジョン』がある。それを頭にいれてください」
「魔物が町に生息しているのですか?危険では?」
「ダンジョンは国が管理していています。入り口は特に警備が固いです。何も心配はありませんよ」
「安心しました。教えてくれてありがとうございます」
「いえ、これも仕事なので……」
掲示板で仕事を探す。文字は読めるので問題ない。中には文字が読めない冒険者もいる。そうした人を相手に商売をする者もいる。たくましい限りだ。
『ネズミの駆除 場所:レッド東通り2-1 期限:6/18 成功報酬:銀貨2枚』
『買い物代行 場所:レッド西通り12-56 期限:6/17 成功報酬:小銀貨1枚』
『花の水やり 場所:南口正面11-0 期限:6/17 成功報酬:銅貨3枚』
『ラレッド迷宮2階の囀りの草 場所:ドオル薬店11-32 期限:7月末 成功報酬:銀貨2枚小銀貨1枚』
『ネルシー盗賊団頭討伐 場所:兵士詰所2階事務所 期限:特になし 成功報酬:大金貨1枚金貨5枚』
『ダンジョン攻略パーティーメンバー補充【猿風】 場所:冒険者ギルドラレッド支社中央 コメント:回復魔法の使い手希望 期限:7/1 成功報酬:応相談』
依頼書には子供のおつかいから本格的なものまである。
銅貨3枚……日本円で300円か。
さらっと目を通しても自分の【治癒魔法】を活かせるものはなさそうだった。面白そうな依頼書もある。ダンジョンか……行ってみるか。
冒険者ギルドは中央に1か所ある。ケンが登録した場所。そこから徒歩5分にダンジョンがあった。「行けば分かる」と言われた。
「確かに……これは行けば誰でもここがダンジョンだと分かるな」
町の中に洞窟がある。中は闇が広がる。入口には重装備の兵士が10人以上常時している。
「身分証の提示と入場料を」
「はいよ」
「行け」
冒険者ギルドのカードとお金が必要なのか。
冒険者の一団が洞窟の中に入るのを眺めていた。
【AM:6:37】
袋に触って時間を確認する。思ったより時間が過ぎていた。朝食を食べないと……!
帰ろうとしたところ、迷宮の入口から冒険者とみられるパーティーが出てきた。一人の瀕死の重傷を負った娘を二人の男が抱えている。その後ろから心配そうな顔の娘がおろおろしてた。
「だから【治癒士】を連れて万全な状態で行くべきだと」
「何だと?タンクのお前がしっかりしていれば」
「今はそれどころじゃないでしょう。早く……ミファを……」
異常事態に気づいた兵士は詰め寄る。
「どうした?」
「見て分かんねえのかよ【猿風】のミファが廃原人に」
廃原人?
「廃原人が出ただと。上に報告しなければ。Bランクの【猿風】すら廃原人に対抗できないのか」
「取り込み中悪いが、俺は【治癒魔法】が使える。彼女の傷を治してやろうか?」
ケンは好都合とばかりに名乗り出る。ケンに視線が集まる。
時間のせいか人が多い。ここで一気に注目を浴びて【治癒魔法】の使い手の存在を世に広めたいと思う。