奴隷の〇
【治癒魔法】を使った高額依頼の仕事を『ラレッド交易都市』であるだけ受けた。(実際の仕事は弟子のミラにやらせた)ラレッド交易都市で金を稼いだので、ケンとミラは次の目的地である南にある『海辺の町ラーロック』に行くことにした。
「ここが海辺の町『ラーロック』か」
「……そう」
ケンの言葉にミアは気の抜けた返事をする。
馬車から降りたケンとミアは町に入る列に並ぶ。
「町全体が白いな」
「……そう」
『海辺の町ラーロック』は全ての建物が白い塗料で統一されていた。
町の景観に感動しながら今日泊まる宿、『ラッパの夜明け』を探している。
「まだ宿に着かないな。そろそろどこかで昼飯にでもするか?」
「……そう」
「……いい加減機嫌を直せよ。あの男の治癒はお前が成功させた。限界まで疲れてたのにやらせた理由はもう話したよな。お前の【治癒魔法】の練習のためだよ。俺もさあ、昔おまえた同じことをやったから気持ちは分かる。(嘘だが・・・・・・)辛いよな?でもな――」
ケンはミラを酷使させて金を稼いでいた。そのせいか、ミラの機嫌は悪い。いつ爆発してもおかしくないほどケンを憎んでいると思う。どうせ1年だ。その間搾り取るだけ利用させてもらう。こっちは「命」が掛かっているんだ。悪く思うなよ?と思いながら言い訳をミアに永延と話す。
弁明に夢中になっていたケンの服の袖を、グイと引き寄せられた。
下に目線を向けると7歳くらいの小さな男の子がいた。
「だんなさん、だんなさん」
「ん?俺の事か?」
ケンは自分に指をさし子供に確認をとる。
男の子は小さく頷く。
「何かようかな?俺ら急いでるんだけどさ」
「しょくじをしていきませんか?ぼくの家はしょくじをていきょうしています」
たどたどしい口調で男の子は話していた。この年齢で仕事をしているのか?よく見れば小さい子が店番をしていたり、働いているのが目についた。意識してなかったがラレッド交易都市でも子供が働いていたな。
「いいタイミングだ。昼飯にしようかと連れと相談していたんだ。飯は美味いか?案内してくれよ」
「はい。おいしいとひょうばんのお店です。ぼくについてきてください」
「ミラ、飯にするぞ」
「……」
男の子に案内された店は通りから外れた寂れた場所にあった。
「隠れた名店的な……か。中に人はそこそこいるみたいだ。ハズレではないな」
男の子は手をケンに差し出す。
「何だ?握手でもすればいいのか」
「チップよ。くず」
ぼっそとか細い声でミアがケンに助言をする。
「金は払いたくないがしかたがない」
一番安い硬貨を一枚だけ渡し店の中に入ることにした。
□
「海の幸も悪くなかったな。どうだい?少しは機嫌を治してくれよ」
「そうね。味は悪くはなかった。でも、それはラレッド交易都市に新鮮な魚介の流通は少ないから。ところで次はこの町で治癒の仕事を始めるつもり?」
「そうか。ここ『海辺の町ラーロック』での、目的をまだお前に言ってなかったな。「奴隷」を手に入れるためだ。南の大陸に近く、奴隷が手に入りやすいからなあ。どんな奴隷にしようかな?綺麗な女性にしようか?」
「屑野郎。あんたはまだ一度も【治癒魔法】を使ってない。ミアに仕事をさせてそのお金で奴隷を買う?……女の奴隷を。欲望に忠実な屑が。……ミアは知っているんだから。お父様からあんたは沢山の金貨を受け取ったことを。そのお金はお父様が【治癒魔法】をして稼いだお金。領地経営とは別に「もしも」のための!」
やっとミアが話してくれた。
「今がその「もしも」の時だ。娘である君に投資をするために俺に金を払う。だから俺が教育してあげる。お前には一度【治癒魔法】を見せただろ」
言い合いをしながら、奴隷商の家に着いた。
待合室でお茶を飲みながら待つこと10分。
ようやく奴隷商の主がやってきた。小太りに太った中年の男だった。禿げ上がった頭を掻きながら、目はギョロっと動きこちらの懐具合を油断なく観察している。俺の恰好は仮にも神様から頂いたありがたい服装。ミラ、彼女は最初に会った時の修道服のようなものではない。村娘が着るような軽装な恰好になっていた。
「お客様、今日はどういったご用件で」
「ああ、紹介状はない。急いでいるんでな、腹の探り合いは無しだ。単刀直入に言う。若くて強い奴隷の男が欲しい。俺の護衛に奴隷が欲しくてな。出来れば従順な性格をしているとありがたい」
「ほう、いいタイミングで来ました。今朝、南の大陸からの奴隷船が着まして。お客様の要望通りの強者を仕入れました。ただ……」
言いよどむ奴隷商人の主。なんだ?怪我くらい俺やミアがいれば治せる。
「ただ、なんだ?はっきりしろ」
「いや、女の奴隷なんですよ……」
「連れてきて紹介してもらえませんか?その女奴隷を」
予想外の展開になったが強ければ問題ない。あとは人柄と値段次第だな。




