前世の妹がやっていたBLゲームの主人公の妹に転生しました。
神崎 玲乃。十五歳。生まれて育って十五年。私が今居るこの世界は、前世の妹がプレイしていたBLゲームの世界らしい。私は、そのBLゲームの主人公の妹に転生していた…。(思い出した原因については…言わなくても、いいかな…?アレちょっと…いや結構…衝撃的だったから、さ…)
前世を思い出し、まず最初に思った事と言えば…
うっひゃ〜!!俺の今世、女!!女だよ!!ヤッタね!!見た目も、兄に似てるけど可愛いし。これだけで、もう勝ち組じゃねえか!!
お気づきかと思うが“私”の前世の性別は…男だった。
何が悲しくてヤロー同士(しかも身内)のイチャラブを見なきゃならんのだ!フザケンナ!マジフザケンナ!!夢見て魘されたわ!!…おっと、失礼。
ギャルゲーの世界に変われ!とか思っていたけど…見たい放題、触りたい放題じゃないか!!
…何をかって?そりゃ女体を、だ!!
「ふへへっ」
やべっ、変な声出た。
誰にも聞かれてないよな?
…と、思ったが。今日は兄の晴生(晴ちゃんと、普段は呼んでいるけど、晴生呼びでも構わないだろう)も、両親も出掛けていて留守だった。
ドキドキ、ワクワク、ソワソワと落ち着かなく、かなり挙動不審な動作で。休日のこの日。俺は昼間から風呂場に向かった。
普段は両親も兄も家に居るので、マジマジと自分の身体を眺める…なんて事をする勇気は無かったのだ。万一に、そんなとこ見られたら……おお、怖っ。
「ふふふっ」
やべぇ、鼻血出るかも…なんて、思いながら。脱衣所で、いそいそと服や下着をを脱いでいった…けど。
「……」
自分の身体を見て興奮するような性癖を俺は生憎と持ち合わせていなかった事に気づいた。
少し控え目な胸も。揉んでみても、特に何も感じなかった。(傍から見れば、胸を大きくしたくて揉んでんの?と思われそうだ。本当にそれで大きくなるのかは知らないけど)
勝ち組で居られたのは、ほんの少しの間だったようだ。短い幸せだった…。
素っ裸で鏡の前に突っ立ってんのも間抜けだなと思ったので、そのままシャワーを浴びて、ふて寝でもしてやろう。
そう思い、出力強めに、少し熱めのシャワーを浴びながら…
「ふー……気持ちいい」
あーあー。ギャルゲーなんて贅沢言わないから(あれ?そもそも、ギャルゲーの世界だとしても…女の子にモテモテで幸せなのって、晴生だけじゃねーか!)
…せめてBLじゃなくて乙女ゲーの世界だったらなぁ。
その場合、晴生は攻略対象だろ?そうなれば、晴生が可愛いヒロインちゃんをGet出来れば。いや…Getされれば、か。
ヒロインちゃんに甘える振りをして、キャッキャッウフフ出来たかもしれないのに…。
…なんて事を考えつつ。髪と身体を洗ってシャワーから脱衣所に出て、バスタオルでササッと身体を拭き、下着だけを身に着け、頭をガシガシとバスタオルで拭いている(ロングヘアだから中々乾かないんだよな…髪切ろうかな)と、急に脱衣所の扉が勢い良く開いた。
「…え?」
「うへー、すげー土砂降りに遭っちまったよなぁ…晴生ー、タオル、どこだっけー?って!!?………え!?…うわああああ!!れっ、玲乃!?ご、ごごごごごめんっっ!!!」
うげっ!?
何故か“私”に、まさかのお約束が起きた!こういうのは晴生担当だろう!?(俺は見たくないが)
バタンッ!!
混乱している間に勢いよく、脱衣所のドアは閉められた。
ちなみに、脱衣所の外には…
『うおわああ!玲乃、すまん!!入ってるって知らなくて!!』
俺達兄妹の幼馴染みであり、晴生の攻略対象の一人、青月 奏斗。通称、奏兄が居るようだ。
俺は咄嗟の事態に頭がついていかなくて、バスタオルを頭に被ったまま、間の抜けた顔をしていた…。
「……へっぷし!」
…とりあえず、服を着て髪を乾かそうか。
それから。タオルを二枚持ってリビングへ行くと…
「…晴、ちゃん。何してんの?…あ、これ。タオル」
晴生は、なべのフタを片手に奏兄の頭目掛けて振り降ろそうとしていた。
晴生…知らねえのか?なべのフタはな、武器じゃないんだぜ。防具なんだよ、初期の防具…じゃなかった。ホント、何やってんの??
「ああ、玲乃。ありがとう、使わせて貰うね。いや〜、急な土砂降りに遭っちゃって急いで帰ってきたんだけど…冷えて風邪でも引いたらいけないと思って、ホットミルクでも淹れようと準備していたんだよ。その間に、カナにはタオルを持ってきて貰おうと思ったんだけど…ねえ?」
あー、それで俺の風呂上がり(ん?シャワー上がりか?)に遭遇した訳ね。
「何があったか解ったからさ。だから、ね?コレ(なべのフタ)で、奏斗の記憶を抹消しようかなって」
ニコニコと笑っている筈なのに、言葉も笑顔も怖いよ晴生!
「ままままって、晴生!!ホントにわざとじゃ無いから!!玲乃、さっきはごめん!!本当に、ごめん!!…だから、助けてっ!?晴生の目、ヤバい!!」
おお、晴生。なべのフタをブンブン振ってるよ。
「晴ちゃん…私は気にしてないから。奏兄もワザとじゃないんだし、もういいよ。はい、奏兄にもタオル。頭拭いたほうが良いよ」
「玲乃〜!なんて優しいんだっ…あだっ!殴るなよ、晴樹〜」
「本当、玲乃は優しいね?」
いや、別に…そういう訳でもない。ヤロー同士だし(…あ、でも俺の方は中身だけか)、奏兄も俺の下着姿を見て純粋に驚いただけだろ?それなら、別に気にする事もないだろう。
「私も使用中の札を掛けていなかったから…変なもの見せちゃって、ごめんね?奏兄」
眉を下げて微笑む俺に、奏兄は顔を真っ赤にしてブンブンと勢い良く頭を左右に振る。
「俺こそ、確認もせずに開けちゃってごめんなっ!それに玲乃の下着姿はへんなものなんかじゃないからっ!!むしろ…あ、いや。何でもアリマセン」
晴生がマグカップに、熱々のホットミルクを淹れ、奏兄の目の前にズイッと差し出した。
「っ、危ねっ!?」
「…チッ」
晴生…今、舌打ちしたよね?
「玲乃も、ホットミルク飲む?」
「ううん、私はいいよ。今は冷たい飲み物の方が良いかな」
「そっか。…カナ」
ニコッと笑った晴生は、奏兄を呼ぶと冷蔵庫に視線をやり…
「オレンジジュース、入ってるから」
と、だけ言った。
「はい!只今!!」
それだけで意図が通じた奏兄は、直ぐにオレンジジュースが注がれたコップを手に戻ってきて、俺に渡してくれた。
すげーな、この二人。
「奏兄ありがとう。それにしても、二人は本当に仲が良いんだね」
笑ってそう言えば、二人は複雑そうな顔をして、ハハハ…と笑っていた。何だ?俺は変な事、言ってないよな?




