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第一話・エンディング


「タバコ、買ってきたかー?」

探偵事務所に戻りコートを脱いだ秋斗に夏彦の気の抜けた声が掛かる。

「まだ起きてたんですか、夏彦さん」

帰り道にコンビニで買ったタバコを手渡す。

「おお、ありがとな。これが代金だ……まぁあれだ、このくらいの時間が俺らの本来の時間だからな」

秋斗にタバコの代金を渡し、手にしたタバコの封を切りながら話し出す。

「……どうだった、今回のは」

「下級も下級、ですよ。野良と言ったところでしょうか」

「そうか……」

タバコに火をつけ美味そうに吸い、ふぅと息を吐く。事務所の天井に薄く白いもやが掛かる。

「まだ見つからないか、お前の仇は」

「ええ、まったく……」

やや物憂げな表情を浮かべて答える秋斗に、逆に満面の笑顔で夏彦が言う。

「まぁ、最近はこの手の事件も増えてる。手がかりは絶対出てくるさ、気にすんな!」

明るく言う夏彦の様子につられ、秋斗も少し微笑む。

「その能天気さを分けてほしいです」

「欲しいなら分けてやろうか?」

「やっぱり結構です、色々ダメな部分もついてきそうですから」

漫才のようなやり取りが続き、次第に秋斗の表情が明るくなってくる。

「ひでぇな、おい…まぁ、それだけ言える口があれば十分。ガキは元気が無くちゃな」

「俺をガキだと思うんだったらもうタバコのお使いは止めてくださいね」

ちくりと一言言ってから、自室に戻ろうとする秋斗。

「ああ、秋斗、ちょっと待て」

その背に向かって夏彦の声が掛かる。

「何です?」

「あんまり根を詰めるなよ。あと……力を使いすぎるな?」

「……解ってますよ」

秋斗は答えて自室につながるドアを開け奥に消えていく。その背をじっと見つめる夏彦の脳裏に、秋斗と始めて出会った頃の記憶がよみがえる。


最初はただただ無愛想で、誰も彼も、世界の全てを疑う眼をしてる……そんな子供だった。

その癖、常に人の目は気にし、周囲に上手く混ざりたいとも願う……そんな子供だった。

異能の力を持つ事を恐れられ、人に避けられ、その都度悲しみにくれる……そんな子供だった。


「……あの人形みたいだったやつが、よくこんな風に成長したもんだ」

昔を思い出して物思いに耽る夏彦。その脳裏に一人の女性の姿が映る。

「陽子、お前の子はちゃんと育ってるよ」

瞼を閉じ、記憶に残る笑顔をしっかりと思い出しながら、彼女に話しかけるように夏彦は呟いた。

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