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第一話・第一幕

「お~い秋斗、ちょっと来てくれ~」

5階建てのビルにある探偵事務所に間延びした声が響く。その事務所の一室で、ぼさぼさ頭の茶髪の中年男性……茅場夏彦が大きな背もたれのついたアンティーク調の椅子に座っている。

「……なんです、夏彦さん」

声に反応して奥の部屋から、長身でやや目つきがキツイが端正な顔立ちをした、一般的には二枚目といって差し支えないであろう黒髪の青年が姿を表す。

「おう、来たか。ちょっとこれを見てくれ」

部屋に入ってきた青年……風見秋斗に向かって写真を二枚投げる。投げた写真は宙を綺麗に飛び、風見の目の前でひらひらと舞い落ちる。

「これは……なるほど」

目の前を舞う写真をキャッチして一目見て全てを把握する。

「被害者は二名とも同じ路地裏で殺害されてる。その上その状況だ。あとは解るだろう?」

秋斗の手にした二枚の写真に写っているのはどちらも惨殺死体。一枚は女性らしき被害者の物で、もう一枚は警官らしき被害者の写真。どちらも「らしき」と言わざるを得ないのは、その写真に写った死体が殆ど人間の原形を留めておらず、内臓が飛び散り骨が噛み砕かれ、一見して死体と解らないぐらいの状態になっていたからである。かろうじて写真の端端に写る女性物と思われる衣服と、警官の制服が故人の名残を残しているのみだった。

「恐らくホシは狼系…奴らなら骨ごと丸かじりだからな。時間帯は詳しくは解らないが、そのガイシャと思われる警官が最後に目撃されたのが夜の1時くらいだったそうだ」

「夏彦さん、その中途半端な警察用語やめてくれません?」

間髪居れずに突っ込む秋斗に、夏彦は苦笑いを浮かべながら顎の無精ヒゲをさする。

「まぁそうカリカリすんな。お前さんが幾ら警察が嫌いでも、アレの被害者となれば別だろう?」

「ええ……まぁ……」

頭をぽりぽりと掻いて複雑な表情をする秋斗に、逆に夏彦は満面の笑みを向ける。

「よし、なら決まった。秋斗……頼むぞ」

「解りましたよ。行きますよ、行ってきますってば」

しぶしぶといった感じで答える秋斗だったが、そう言ってからの彼の行動は素早かった。眠たげに開かれていた目はしっかりと見開かれ、それまでは緩慢だった彼の動きが急にきびきびとしだす。部屋の隅に掛けてあった外出用の黒のコートを手に取り着込み、皮製のロングブーツを履いてすぐさま外出しようとする。

「ああ、秋斗ー……」

「……なんです?」

またかという顔で夏彦の方に向き直る秋斗に対し、いつも通りの無駄に良い笑顔で言った。

「タバコも忘れずにな、代金は後でやるから」

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