波間 -hazama-
波が湧き立つ瞬間に
私はその波間に一人の女を見た
波に呑まれようとしている彼女の手は
波と化してしまわないよう あがいている
しかし彼女の目は静かにこちらを見つめ
全て承知していることを私に知らせる
私はふと考える
やがて波が崩れて引いたそこに
はたして彼女はいるのだろうか
波もろとも彼女が消えてしまったら
私は彼女の姿を思い出せるだろうか
私は彼女が存在していたことを思い出せるだろうか
存在していたことを信じることが できるだろうか
私が見たものは現実なのか幻なのか
波がさらった後は
もはや確かめようがない
だから
私は彼女を描こうとした
波が消えぬ間に
彼女が消えぬ間に
彼女を救えぬ 自分を忘れぬ間に
これが 私が絵を描く理由だ
この詩を読んでくれてありがとう☆
ぜひ感想を聞かせてください。
瑛彪・玄彪