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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
社交シーズン春①

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伯爵、元天使だった

緊張して……お腹が痛くなってきた……気がする。


おっかしいなぁ? サラリーマン時代は神経が図太すぎて、やらかした後輩の謝罪パートナーとして無双していた俺なのに?

無事にハーディング侯爵様、この白豚の兄上をお出迎えして、ニコニコと笑って応接室にご案内したのに……空気が重い?


目の前にある華奢なティーカップに注がれた紅茶の香りがふわんと香る、雅かな空間に固い面持ちのベンジャミンとヴァスコといまいち状況がわかっていないとぼけた顔のディーン、そして俺の正面には紳士らしく背筋を伸ばしてソファーに座る無表情のハーディング侯爵、レイフ・ハーディング様。


……えっと、これはどうやって話の糸口を見つければいいのかな?


「えーっ、えっと、えーっ」


ああ、どうしよう? ここが異世界じゃなかったら最近のニュースやら動物の話で始められるのに、定番の天気の話もこの世界で正解かどうかがわからん!


白豚がブヒブヒ言いながら汗をダラダラ垂らしているのを見て、ハーディング侯爵様は憐みを向けてくださいました。


「セシル。久しぶりだな」


「うわっ、はい。はい、お久しぶりです」


ねぇ、もうこれさ、俺の記憶がぶっ飛んでしまったこと、初っ端に話しちゃおうよ。

そこからじゃないと、話しが続かねぇよ。


俺の訴える必死な視線にベンジャミンは観念したように顔を上に向け、静かに声をかけた。


「ハーディング侯爵様。少々、セシル様のことでお話があります。よろしいでしょうか?」


本来、使用人がお客様であり貴族様である上位爵位の当主に声をかけることは失礼だし、下手したら不敬だと断じられかねない。

だが、兄であるハーディング侯爵様は「うむ」と威厳たっぷりに頷くと、ベンジャミンの言葉に耳を傾けた。


つーか、俺も知らない話が続々と出てきたんですけど?

どうなっているの? この白豚にそんな辛い過去があったの?

俺、聞いてないんだけどーっ!





















俺と亡くなった奥さん、オールポート伯爵令嬢との婚約の話が出たのは、まだ幼い八歳のころだった。

亡くなった奥さんは俺よりも年上で、そのときは十三歳……年齢が離れていませんか? この時代の感覚だとどうなの?


しかも、この婚約は正式なものではなく、俺の亡くなった母親、ハーディング前侯爵夫人の一存で決められた。

でも父親である、ハーディング前侯爵は大反対だったので、ぶっちゃけ婚約は未成立なのだ。


じゃあ、婚約違うじゃん……と思うのだが、俺の母親であるグリゼルダ・ハーディングさんは、ちょっと変わった人……いわゆる毒親であった。


ハーディング前侯爵夫人の話から、俺は過去を教えてもらわねばならない。

なぜなら、元凶はすべてこのおばさんだからだ。


グリゼルダは中央貴族で侯爵令嬢だった。代々国政に携わり政治には強かったが、金儲けが下手な侯爵家は徐々に没落していった。

グリゼルダは過去の功績を誇るプライド高めの自己主張強めの令嬢として成長する。

金儲けが下手なグリゼルダの父親は、なんとか人脈を頼って同じ侯爵家であり裕福なハーディング侯爵家との政略結婚にこぎつけることができた。


「母上は、父上のことがお好きではなかった……」


「いや、政略結婚ってそういうもん……だよね?」


沈痛な兄上の表情に、思わず後ろを向いてベンジャミンたちに同意を求めてしまった。

どうやらお年頃のグリゼルダさんは「美人でマナーもバッチリなわたくしの相手は、キラキラとした王子様のような人であるべき」と思い込み、父上の容貌が気に入らなかったとか。

侯爵家に嫁ぐのはギリ我慢できても、どちらかというとガッチリした男らしいタイプの父には不満だったらしい。


「いや、どんだけ自分に自信があるんだよ」


俺が女の自尊心に呆れていると、兄は力弱く頭を振った。


「実際、母は美しかった。前陛下が好色だったら側室に召し上げられていてもおかしくないほどに。ただ、性格に難がありすぎた」


でしょうね。自分の母親だって聞いてても、頭を捻るほど行動と思考が理解ができん。


「そして……母は父に似た私のことも好きではなかった」


「へ?」


不服はあるものの、政略結婚は貴族の義務とばかりに嫁いできたグリゼルダは、すぐに跡継ぎを妊娠出産した。

しかし、父に似た長男を愛することはなかった。曰く、女神のように美しい自分から生まれたのに、なぜこの子は醜いの? ……ダメだ、本当に理解できん。


「だが、セシルのことは溺愛した」


「は?」


待て待て待て、美丈夫といってもいいだろう兄のことを「醜い」と評して嫌った母が、なぜに白豚を溺愛する?


「も……もしかして、目の病気?」


俺の推測に兄は苦笑いで否定すると、胸のポケットから小さな一枚の絵を出した。


「これが、幼いころの私とセシルだ」


前の世界での七五三みたいにお洒落した男の子が二人並んで描かれている。


「……え? こ、これが、俺?」


その絵の中には、目の前にいる兄を小さくした凛々しい少年と、細く小さな天使の姿があった。

おいおいおい、白豚が天使に……ちがう、天使が白豚になるって、俺にいったい何が起きたんだよ!


目をかっぴらいた俺が驚いて周りを見回すと、この衝撃な事実にピクリとも動じないベンジャミンたちの姿が映った。


え? お前たち、俺が元天使だったのを知っていたの?


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