白豚、家族を知る
デデーンと存在感MAXな俺のお腹。
そろそろスタイルが気になるアラサーだった俺は、どんなに仕事が忙しくても週2回のジム通いは欠かしたことが無かったのに。
それも全ては大好きなお酒を飲んでも、腹が出ないようにと思ってのこと。
やっぱり、中年太りって恰好悪いじゃん。
なのに……このお腹。
フリフリの白いブラウスに刺繍がこれでもか!と入れられたジャケットという自分の服装も気になるけど……。
「はあああぁぁっ」
相撲取りレベルのふくよかさに、肺の奥から息を吐きだした。
何か大事な物も同時に吐き出してしまったかもしれない……。
「パパ! なんでお姉様に罰を与えないのよっ!」
キーンと頭が痛くなる高音で叫ぶ、あんたは誰だ?
俺はうっそりと声のした方向に顔を向けて……速攻戻した。
なんだ、こいつら?
よく見てみるとこいつら、変じゃね?
まず、俺の左手側に立つ化粧の濃いおばさん。
真っ赤なドレスを着て、首と指と髪飾りに宝石をジャラジャラ付けて、腕を組んでふんぞり返っているけど、下品な人だなぁ。
んで、その隣に立っているのが、俺を「パパ」と呼んだ女の子。
え? 俺、お前の父親なの?
えーっ、ちょっと遠慮したいな……、だってこの子いかにも「悪い子です!」てオーラ出しているよ。
まだ中学生ぐらいの子なのに、胸元がバァーンと開いたドレスを着て、グリグリと赤い口紅を塗ったくっている。
いや、お前、その胸ニセ乳だろう?
伊達に、姉妹に挟まれた中間子だった俺じゃないぞ。
その胸はめちゃくちゃにパットを入れて、谷間を作っているニセモノだ!
まだ子供なのに……派手な化粧に髪の毛をツインドリルに巻いちゃって。
私、怒ってます! のポーズなのか手を腰に当てて仁王立ちしているが、どう見ても我儘な女の子だ。
そして、その子の肩を抱いている男……、お前も誰だよ?
顔の造りは悪くないけど、こうチャラさが滲み出ているのだよ、その表情に。
そしてニヤニヤと笑って、子供のニセ乳を盗み見ているが、それニセモノだって!
気を取り直して、俺の足元に蹲っていた少女を改めて観察する。
よたよたと立ち上がり、所在なさげに立ち尽くしている彼女は、小柄で可哀想なほど痩せ細っている。
あれ? さっきニセ乳の子が「お姉様」って呼んでいたような?
じゃあ、この子も俺の娘なのか?
俺ってば、知らない間に二人の子持ちか……、全然記憶に無いけど。
んー? でも似てない姉妹だな?この子の顔立ちはスッピンでも分かるレベルの美少女だぞ?
ちょっと黒髪がボサボサの伸び放しで肌が乾燥してガサガサっぽいが……、同じ娘でこの扱いの差はなんでだろう?
「旦那様、いかがしましたか?」
右後方から声を掛けられて、咄嗟に振り向く。
……が、首の肉が食い込んで振り向けないんですけどおぉぉぉっ。
しょうがないから体ごと後ろを向きますよ、よっこいしょ。
「……」
いや、だからお前たち、誰だよ?
いわゆるお仕着せを着た使用人っぽい人たち。
声を掛けてきたのは、男で執事っぽい恰好をしている。
でも、こいつ……性格の悪さが顔に出てんなぁ……。
俺、こういうタイプ苦手つーか、嫌いなんだよなぁ……裏表が激しいタイプって。
その隣にいる二人のメイド服を着た女性も、あんまり良い印象じゃない。
下品な女と同類で、化粧が濃いしメイドなのにアクセサリーをジャラジャラ付けているし、俺のことを蔑んでいる目で見ている…気がする。
あれか? デブだからか? 太っているからか? デブで呼吸音が煩いからか?
うるせぇよ! 本人が一番嫌なんだよっ! さっきから、ヒュー、ゴォー、ハァーッていう鼻息が!
そして立っているのがキツクなってきたので、後ろに鎮座していたドデカイ机の椅子に座ることにする。
なんか、「大会社の社長!」て感じの机と椅子だけど、もう立ってんのしんどい。
「ふうぅぅぅぅっ」
「だ、旦那様。それでお嬢様の婚約はどうしますか?」
「婚約……」
え? まだ二人とも子供なのに、もう婚約とかするの?
顔はポーカーフェイスのままで、内心焦りまくりですよ!
どう、返事したらいいんだ?
「パパ! ギデオン様はお姉様よりわたくしの方がお好きなのよ! 婚約者を交代してもいいでしょう?」
おっと、ニセ乳ちゃんがおねだり甘えモードの上目遣いで迫ってきたけれども、ふふふ、まだまだだな、ニセ乳ちゃん!
俺の妹は生まれたときからの生粋の小悪魔ちゃん属性! あいつのおねだり攻撃に比べたら、お前のおねだりなぞ却下だ!
ん……、ちょっと待てよ。
「交代?」
「ええ、そうよ。ギデオン様はわたくしやお母様に意地悪するお姉様より、わたくしの方が婚約者として相応しいから、お姉様との婚約を破棄したいのですって!」
婚約破棄?
チラッともうひとりの娘の様子を伺うと、俯いて両手をギュッと握りしめて、何かを堪えるように震えている。
ついでにチラッと婚約者であろう、スケベにもニセ乳を盗み見していた男に視線を投げる。
「はい! 僕はシャーロットとの婚約を破棄して、モニカ嬢との婚約を望みます!」
「なんて、素晴らしいことでしょう! 貴方、是非そうしてやってちょうだい」
俺、下品なおばさんの旦那だったのかよっ。
地味にショックだわ……、俺、身持ちの固い誠実な子と結婚したかったのに…。
それより……自分がどうなっているのか?ここがどこなのか? 記憶がこれっぽちも無いのに、婚約破棄問題ってどうしたらいいんだよ……。
誰か助けてくれーっ!




