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Merry Christmas! ~2025年クリスマス~  作者: 青璃


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13歳のクリスマス


君が13歳のクリスマス。

今年はツリーが飾られていた。

部屋の中はパッと見は整っている。

まだ塵や埃があったり、少し物が散らかってはいるが去年とは比べ物にならないくらいとても綺麗だ。

なにより、冷たかった空気が温かい。


綺麗に拭かれたテーブルの上にはミルクと市販の個包装されたクッキーがお皿いっぱいに置いてある。

その中で大きな1枚だけ、個包装じゃないものがあるのに僕は気づいた。

透明なビニールに金の針金で閉じてあるそれは、聖夜が自分でしたのだろうか。

中に入っている大きなバニラクッキーの表面にはチョコペンで


“サンタさん

ごめんなさい”


と書かれていた。

僕は何故謝られているのか分からずに首をかしげる。


「サンタさん…」


名前を呼ばれ、振り返ればそこには去年よりも大きくなった君が、初めて会った時と同じ様に扉に隠れながらこちらをチラ見していた。

目が合えばそらされ、また目が合うを繰り返す。


「聖夜、Merry Christmas!」


僕はいつかと同じく両手を広げて笑顔で君を迎える。

もうしゃがまなくていいくらい、君は大きくなったんだね。

君はゆっくり照れ隠ししながら近づいてくれば、ぎこちなく背中に手を回して抱擁してくれた。


「め、メリークリスマス…サンタさん」


「うん。ところで、あのクッキーのメッセージはどういう意味だい?僕は君に謝られる様な事はされてないと思うんだけど」


頭を撫でればプイッと顔を逸らす。

うーん…思春期というやつだろうか…

ちょっと寂しい。


「去年…サンタさんに酷い事沢山言ったから…」


「酷い事?……あぁ、あれか。」


去年のクリスマスは君が大好きなお母さんが亡くなったばかりだった。

“お母さんを生き返らせて”という願いを断ったら“サンタさんのバカ!意地悪!ひどい!大嫌いだ!”って言われたっけ…。


僕に抱き着いている君の腕の力が強くなる。


「意地悪って言ってごめん。…大嫌いって言ったけど、違うんだ…サンタさんの事、嫌いじゃない。」


「うん、本心じゃなかったって知ってたよ。」


ほっとして腕から力が抜ける君。


「良かった……」


「嫌いじゃないなら、僕の事どう思ってるんだい?」


少し身体を離し、君の顔を覗き込みながら首をかしげれば、君は顔を赤くして口をモゴモゴさせ…

それから僕の顔を掌で押し離した。


「近い!!言わなくても分かってるだろ!!」


「えー、分からないなー?なんだろー?」


勿論分かっているよ。

でも君が可愛い反応をするから、からかいたくなったんだ。


「〜〜〜っ!前言撤回!今日のサンタさんは意地悪だ!!」


「ははっ!ごめんごめん。お詫びに一緒にクッキー食べよう。今年は沢山用意してくれたんだね」


「全部市販だけどな。…酷い事言ったお詫びで沢山用意したんだ。」


「そっか、嬉しいな」


「手作りじゃないのに…?」


「君が僕の事を思いながら選んで、買ってくれた。

その気持ちが、僕はとても嬉しいよ。」


「ふーん…」


そっぽ向く君の手をとり、ソファーまでエスコートする。

途中でクッキーのお皿を君に持ってもらい、僕はミルクを持った。

ソファーへと先に座り僕の膝に乗って貰おうと、君を見ながら膝をポンポンしたら君は首を横に大きく振り


「もう、俺は大人だから乗らねーぞ!!」


「えー、去年は乗ってくれたのに?」


「去年は…?……???……………」


眉を寄せ少し考えた君は、ハッとし


「乗ってねーよ!!」


「ははっ!残念、騙されなかったか。」


「もーっ!!なんなんだよ!サンタさんってこういう性格だったっけ?!」


クッキーのお皿を持ったまま、乱暴にドカッと隣に座った君は、クッキーのビニールを破いて口に放り込む。

小学生から中学生になって、少し口調が変わったね。

乱暴だけど、こんな話し方するのも今だけだろうと思うと可愛く感じるよ。



「こうして揶揄(からか)えるくらい、君が大きくなったんだよ。」


「大人は俺ら(中学生)を、まだガキだ。って言うよ」


「そうだね。今は大人と子供の中間くらいだろうね」


君は、話しながらメッセージが書かれているクッキーをビニールから出して僕に差し出してくれた。

だから僕は口を近づけて君の手から直接クッキーを食べ


「なっ!?」


真っ赤になる君。

今日はよく真っ赤になるな。

…いや、初めて会った時からよく真っ赤になってたっけ。


「自分で食えよ!!」


「ミルクを持ってて手が使えないんだ。」


両手でミルクの入った大きなグラスを持ち上げて見せる。


「片手で持てよ!」


「重くて…」


「そんな重くねーだろ!俺だって片手で持てたぞ!」


「初めて会った時は、床にミルクを零していた君が…こんなたっぷりのミルクを一人で運べるだなんて…感慨深いね…」


しみじみ言えば、恥ずかしかったのか、やけくそになったのか…

君は向かい合うように僕の膝を跨いできた。

そこまでするなら膝に乗ればいいのに…乗らないのもこの歳特有の小さな反抗なのだろうか。

そんな事を考えていたら、君は残りのクッキーを口に押し込んできた。


「むぐっ!」


「どんだけ昔と比べてんだ!あぁもう!食わせりゃいーんだろ!!」


クッキーで口が塞がっているから、にこにこ笑って軽く頷く。

サクサク食べ進め君の掌からクッキーが無くなれば、僕はお礼にと掌に口付けを落とした。ら、すぐに掌が離れていった。

目の前にはプルプル震えて真っ赤な君。


「な、な…!!」


「ん…どうかした?」


にこっと笑ってはぐらかす。

真っ赤になって可愛いなあ…

どうしよう、少しのつもりだったのに、あんまり可愛い反応するからついやり過ぎてしまう。


「次はチョコチップがいいな。」


「〜〜〜っ…ほらっ!!」


チョコチップクッキーを袋から出せば、ギリギリを摘んで差し出してくる。

指先だけじゃなく、身体まで仰け反って私からギリギリまで離れようとする姿も面白いなあ。

そんなに恥ずかしいなら、僕の上から退けばいいのに…。


「ありがとう」


そう言ってクッキーを二口に分けて食べる。

大きな一口目を食べ終わり、小さな二口目を食べれば、君の手が引っ込む前に指先へ口付けをした。

君は勢い良く手を引っ込め、また、顔を真っ赤にしてプルプル震えている。


「〜〜〜っ…!…」


「聖夜、顔が真っ赤だよ?大丈夫?」


ミルクを片手で持てば、片手で君の頬を撫でる。

ミルクが重くて…、なんて嘘だから軽々持っているがそれを指摘する余裕は君には無いらしい。

掌が頬に触れた瞬間、ビクッと身体を震わせ僕の上から退く君。

ソファーの端ギリギリまで下がれば緑のクッションを私と自分の間に置き


「大丈夫!大丈夫だから!あんま触れんな!!」


「えぇ…」


触るなと言われるのは寂しい。

思春期って難しいな…


「もう意地悪しないから、こっちに来て聖夜」


ブンブン横に首を振られた。


「……じゃあ、僕がそっち行っちゃうよ?」


少し聖夜の方へ近づけば、聖夜が足でクッションをグイグイ押してきた。


「ダメだ!!」


「……口付け嫌だった?嫌ならもうしないよ」


ボンッと音がしそうな位、今までで一番真っ赤になる君。


「…やっぱキスしてたんじゃないか!」


先程より強めにクッション越しにゲシゲシ足蹴にされる。

でも痛くない。

君は13歳になって、足癖が悪くなったんだね。

君の成長を感じる度、胸がポカポカする。

足蹴にされた事で寂しげに眉尻を下げて微笑めば、そんな僕の表情を見た君はモゴモゴ口を小さく開き


「〜〜〜っ…!…い、嫌じゃない…嫌じゃないから、パニクってるんだよ!!」


もう一つあった赤いクッションを胸に抱えて顔を埋める君。

でも真っ赤になった耳は隠せてないよ。


僕はクスクス笑えば、ミルクを近くのローテーブルに置いてから君の方へ身を乗り出す。

君が可愛い事言うから、つい剥き出しの耳にも口付けを落としてしまった。

君はガバッと顔を上げてクッキーの皿を持っていた手で耳を隠す。

支えを失ったお皿はソファーへと落ち、散らばるクッキー。


「な…な…なんで…そんな…き、キス…すんだよ…!」


「…んー…僕は、君に口付けするのが嫌じゃないらしい。」


「へ?!」


今までも大好きだった。

けれど、今年のクリスマスは君への大好きが少し形を変えたらしい。

君が大きくなったように、僕の精神も少し大人になったみたいだ。


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