8歳のクリスマス
「なつにいがね、「サンタさんなんて居ない」って言うから、喧嘩しちゃったんだ…。」
8歳のクリスマスの夜、ソファーに座る僕の膝に乗って、二人でクッキーを分け合って食べながら、君が寂しそうに話してきた。
“なつにい”というのは、親戚のなつきお兄ちゃんの事だろう。
祖父母の家で親戚が集まる時によく聖夜が遊んでもらっている面倒見が良い中学生のお兄ちゃんだ。
「サンタさん、居るのに……」
クッキーに付いていたドライフルーツを指でイジイジして取れば口に運ぶ君。
「そうだね。」
「なつにいのサンタさんは居ないのかな……だから、お父さん、お母さんがサンタさんの代わりにプレゼントを置くの…?」
「なつくんのサンタさんは、去年まで確かに居たはずだよ」
「去年?じゃあ今年は?」
「今年からは、聖夜の言う通りお父さんとお母さんがサンタさんの代わりになるだろうね。」
“プレゼントを用意したのは自分達だ”と両親の記憶を書き換えるのは、プレゼントの存在を疑問に思わせない為が一番の理由だけど…
僕達が消えても、君達がプレゼントを貰えるように…ってサンタクロースの置き土産でもある。
僕達が最後に出来るクリスマスプレゼントだ。
「どうして?なんで?なんでなつにいのサンタさん今年は居ないの?」
「僕達は自分を生み出してくれた大切な子に、「サンタクロースなんていない」って言われたら消えちゃうんだ。」
「………っ!…きえ、ちゃ…」
ヒシッと僕の赤い衣装にしがみつく君の身体を抱き締めて、背中をぽんぽんしながら安心する様に笑いかける。
「大丈夫だよ。僕を生み出してくれた、僕の大切な聖夜が信じてくれているから僕は消えない。」
「ほんと…?僕はサンタさんが居るって知ってるよ!ずっとずっと信じてるから、ずっと来てよ!約束だよ!」
「うん。毎年、君が作ったクッキーも食べたいからね。また来年も来るよ、約束だ。」
「約束!」
「さ、食べ終わったなら歯磨きをしてそろそろ寝ようか。君が眠らないとクリスマスプレゼントを置けないんだ。」
「はーいっ!」
笑顔になった君は、最後の一口を頬張って僕の膝から下りる。
歯磨きを終えて、ベッドに潜り込んだ君の額にキスを落とし
「Good night my little one」
「ぐっどないと、ぼくのサンタさん…」
欠伸を一つ。
まだ子供な君はすぐに深い眠りに落ちた。
傍には君の赤い靴下が片方。
今年は君の欲しがっていたゲームのカセットだけど…うーん……靴下を最大まで伸ばしても入らな…いや、いけるか?……むりだった。だから、靴下をプレゼントの上に置いた。
「あと何回、君に会えるかな…」
早い子は6歳から…長くても高校生くらいでサンタクロースの存在を信じなくなる。
会えるのは5回から13回くらい。
13回も会えたら奇跡だ。
人間の子供達は遅かれ早かれ、みんな言う。
“サンタクロース(僕達)はいない”




