6歳のクリスマス
それから毎年クリスマスの日になると用意される君の掌サイズのクッキーとミルク、赤い靴下。
クッキーと赤い靴下のサイズが大きくなる度に君の成長を感じるよ。
今年のクリスマスもそうだった。
君が6歳のクリスマスを向かえた日。
皆が寝静まった頃、僕はいつも通り部屋に姿を現してミルクとチョコチップクッキーを食べる。
最初と比べると大きくなったクッキーは食べるのに時間がかかるが、君の成長を感じて嬉しかった。
乾いた喉を潤そうとミルクを手に取った瞬間、視界に何かが映り、僕は顔を上げてそちらを確認する。
少しだけ開いた扉の隙間から見える、クッキー色の髪とチョコ色のクリクリした瞳。
僕と視線が合うと、隠れてしまった。
「Merry Christmas!My little boy!」
クッキーとミルクをテーブルへと置き、床に膝を着いて視線の高さを合わせれば君に向かって両手を広げてみた。
チラッと扉から顔を出した君は、赤いサンタの衣装と帽子を被る白いちゅるちゅるカールした髪を持つ金瞳の若い青年(僕)に恐る恐る近づき、途中からは小走りになって僕の胸へ飛び込んできた。
「……サンタさん!本物?絵本のおじいさんと違って若いけど……本物なんだよね?!」
「ははっ!!そうだよ、僕は本物のサンタクロースさ。メリークリスマス、いつもクッキーとミルクをありがとう聖夜」
「僕の名前、覚えてくれているの?!」
「もちろん。」
「嬉しいな!プレゼント、いつもありがとう!!クッキーとミルクも毎年完食してくれてて、嬉しかった!」
「どういたしまして。僕も美味しくて毎年大きくなっていくクッキー、嬉しかったよ!ごちそうさま。」
「えへへー!毎年ママと手作りしてたんだ!」
「知っているよ。毎年、僕のクッキーを君がつまみ食いしている事も。今年も僕のクッキーからチョコチップを数個、取って食べていたよね」
君の鼻頭をチョンッとつついて笑えば、君は顔を赤くしながら驚き
「どうして知ってるの?!」
「それは僕がサンタクロースだから、かな?」
僕がウインクし茶目っ気たっぷりで笑いかければ、君は「凄い!凄い!」と興奮してはしゃぐ。
君を抱き上げてソファーへと座り、膝に乗せたまま僕は聖夜の手作りクッキーを食べようと手に取る。
自分の口に運べば、それを君はじっと見つめてきたから
「……聖夜も食べたくなっちゃった?」
首を傾げて聞けば、聖夜は頬を赤くして首を横に振り
「ち、違うもん!それはサンタさんのだから……」
目を背ける君。
クスクス笑ってしまうのは許して欲しい。
ずっと見てきたから分かるよ。
君は甘い物が大好きで、特にお母さんの手作りが好物だもんね。
真夜中でちょっとお腹も空く時間だ。
「笑わないでよー!」
「ごめんごめん。お詫びに半分こしよう」
「だから、それはサンタさんの……」
「受け取ってくれないって事は、許してくれないのかい…?」
「許す!許すよ!」
「ありがとう、じゃあ許してくれた印に受け取って」
「う、うん!」
もう一度クッキーを差し出したら、今度は受け取ってくれた。
二人で仲良く半分こして食べるクッキーはさらに美味しい。
「おいしーね、サンタさん!」
「そうだね。来年も作ってくれる?」
「うん!来年もその次も、その次も、ずーっと!ママと一緒に作るよ!毎年少しずつ大きくなるから、楽しみにしててね!」
「ははっ!それは楽しみだな。全部食べられる様にお腹を大きくしとかないと」
「絵本のサンタさんがお腹大きいのは、みんなが用意したクッキーとミルクを全部食べるため?」
「なるほど、そうかもしれない。聖夜よく気づいたね」
頭を撫でれば聖夜はにこにこ嬉しそうに笑った。
「えへへー、そうだったんだ。みんなの分食べられるなんて、サンタさんは凄いね!優しいね!……あ、ならクッキーは小さい方がいい?」
クッキーのサイズを考え込む聖夜の頭を撫でながら優しく見つめ
「僕は聖夜だけのサンタさんだから、毎年少しずつ大きくなるクッキーがいいな」
「僕だけのサンタさん?」
「そうだよ。サンタさんはね、子供が初めて「サンタクロース」って言った時に産まれるんだ」
「へぇ!そうなんだ!じゃあ、サンタさんは子供の数いるって事?」
喉がグッと締め付けられる感覚がした。
出てきそうになった言葉を飲み込み、別の言葉を口にする。
「そうだよ。世界中の子供の数、だからたーっくさんいるんだ」
「凄い凄い!!僕、他のサンタさんにも会ってみたいな!」
「えー?僕だけじゃダメ?」
「サンタさん拗ねた?」
「拗ねちゃった」
「ごめん、拗ねないでサンタさん!僕は僕のサンタさんが一番大好きだよ」
「…ほんと?」
「うん!」
「そっか。良かった、僕も聖夜が一番大好きだよ。My little one」
「まい?りとる…わん?」
分からず首を傾げる君と、ふふっと笑う僕。
意味が分かるのはもう少し先かな…?




