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Merry Christmas! ~2025年クリスマス~  作者: 青璃


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16/16

~おまけ ~ クリスの大切な子 7

ラストがクリスマスまでに間に合いませんでした…


なつきとクリスのその後をギュギュッ!!ギチッ!と無理矢理詰め込んでいます。


前話

26歳×6歳


後話

40歳×20歳


なつ君が大好き。

だからずっと一緒に居たい。

でもなつ君は大人だから、お仕事がある。

分かってるけど、寂しくてたまらないから…

週末のお休み、なつ君の家にお泊まりした日になつ君がお仕事いく時は「行ってらっしゃい」の時に大泣きしてしまう。


「なつ君お仕事行っちゃやだぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!行くなら僕も行くぅ!!!離れるのヤダぁぁぁぁぁっっっ!!!」


我儘言ってなつ君を困らせても、なつ君は困った顔しつつどこか嬉しそうにしてたと思う。

泣きじゃくる僕を抱っこやハグ、額や頬、髪にキスしてくれるから…僕は我慢しなかった。


いつもいつも…


だからか、とうとうなつ君は僕になにも言わずにお仕事に行ってしまった。


いつも通り一緒に朝ご飯を食べて、一緒に歯磨きして、一人でおトイレ行って戻って来たら、家のどこにもなつ君は居なくて、お仕事バッグも靴も無かった。


「………なつ君?」


「なつきならさっき仕事に行ったわよー?」


なつ君のお母さんにそう言われて、それでようやく、自分がどれだけなつ君を困らせていたか気づいた。






保育園へ行く朝は決まった時間に家を出る。

ダディもマムも聖夜お兄ちゃんも。

1、2分遅くなるくらいはギリギリ大丈夫だけど、3分以上誤差があると、皆バタバタする。

まだなつ君に出会う前、聖夜お兄ちゃんを引き留めて大泣きした時はサンさんから「ダメ」って言われた。

遅刻すると聖夜お兄ちゃんに迷惑がかかるから、お仕事前は絶対ダメだって教えて貰ってたのに…。


なつ君といる時間が幸せ過ぎてのぼせあがっていた。

僕はなつ君が大好きで、なつ君も僕が大好きだから、何でも許されるって思ってしまってたんだ。

それに気づいた時、思い上がっていた自分が恥ずかしいし、なつ君を困らせていた事に気づかなかった自分が憎らしくて泣いた。


そして次の日から「行ってらっしゃい」する時に泣くのを止めた。


その次の週末からなつ君のお家に行くのも止めた。


なつ君のお休みはなつ君が休む為にあるんだ。

僕の子守りをする時間じゃないもん。








「今日もなつき君家にお泊まりに行かなくていいの、クリス?」


週末の土曜日、朝ごはんの片付けをお手伝いする僕にサンさんが聞いてきた。

僕は頷く。


「…僕、良い子になるの。なつ君が気持ちよく過ごせる様に…。

……お手伝いするの、良い子?」


テーブルから運んできたお皿をサンさんに渡せば、手に泡が付いているサンさんは髪を撫でる代わりに髪にキスをくれた。


「いい子だよ。だけど、クリスはまだ子供なんだから僕の聖夜を困らせないワガママなら、言っていいんだよ。」


キスしてもらったのが嬉しくて、でもサンさんの僕を甘やかしてくれる言葉が辛くて、眉尻を下げてくしゃっと笑う。


「ふふっ、僕のなつ君を困らせる我儘もダメなんだよサンさん…。だから、僕がなつ君を困らせる事してたら教えてね?」


そう言ったけど、サンさんは微笑むだけだった。


ピンポーン…


「はーい」


チャイムの音にサンさんが出る。


「クリス、なつき君が遊びに来たよ」


「え?!」


なつ君が!!

僕は嬉しくて、走って玄関へと向かう。


「なつ君!!」


なつ君の姿が見えれば、その身体にぶつかるようにハグする。

なつ君も笑顔で抱きしめてくれた。


「クリス!最近全然来てくれなかったから心配したぞ、元気にしてたか?」


「うんっ!!元気だよ。」


それから今日は家で沢山遊んで、一日中ずっと一緒に過ごせて幸せだった。

幸せ過ぎて、だからつい…


「なつ君!これね、僕の好きなおもちゃ!!なつ君にあげる!これも、あとこれも!」


「ははっ!ありがとな」


僕の持ってるお気に入りのおもちゃをなつ君に全部プレゼントして


「なつ君!なつ君!一緒にお散歩行こう?」


「そうだな、いい天気だしデートするか!」


ポカポカな日だったから外に連れ出して


「なつ君!あのケーキね、凄く美味しいからなつ君と一緒に食べたい!」


「ん、二人で半分こ?」


「半分こ!!」


前に食べて美味しかったケーキをなつ君にも食べて欲しくてねだり


「あ、ちょっと待ってなクリス」


一緒にいる時になつ君のスマホが鳴り、なつ君はスマホを確認すれば何か文字を打ったり電話したり…

なんだかスマホになつ君との時間を邪魔されたみたいで、ムッてしちゃったから…


「よし。…ごめんなクリス、お待たせ」


「やだ!」


「う゛…ほんとごめんな……」


「やだ!…今、なつ君は僕と遊んでるの!!お仕事しちゃダメ!!今なつ君は僕だけのなのっ!」


頬を膨らませて怒ってるのに、なつ君は困りつつ幸せそうに笑う。


「そうだよな。もうしないから、機嫌なおしてくれないか?」


「むぅ………なつ君が僕と結婚してくれたら、機嫌なおるよ!」


「結こ…?!…ふはっ!いいよ」


なつ君はビックリしてたけど、すぐ破顔して嬉しそうだった。


「僕本気だからね!約束だよ!」


「あぁ、約束だ」


なつ君が約束してくれたから、僕は頬を膨らませるのを止めて手を繋いでご機嫌で歩く。


「なつ君大好き!」


「ん。俺も大好きだよ」


相思相愛と分かって僕はさらに嬉しくて、その夜はなつ君が好きなハンバーグだったから、僕のハンバーグを全部なつ君にあーんしてあげた。

そしたら、なつ君が耳元で「もう腹いっぱいで食えないから、クリス俺の食ってくれないか?」って困り顔でお願いされたから、僕は「いいよっ!」て、こっそりなつ君と自分のお皿を入れ替えた。

困ってるなつ君は僕が助けるんだ!


夕ごはんも食べ終わり、外が真っ暗になればなつ君が僕を膝から下ろしてため息をつき


「じゃあ俺、そろそろ帰るな…」


「えっ?!」


幸せいっぱいポカポカのぼせていた僕は、その一言が冷水となり一気に冷静にさせられた。


冷静に戻ってなければいつもみたいに「帰っちゃやだ」「僕も一緒に行く」「なつ君ちにお泊まりするから連れて帰って」って大泣きして我儘言っていただろうから、言う前に冷静になれて良かった…


なつ君の服を掴もうとした手を途中で止めて、自分の服の裾を握る。

なつ君が帰るのはやっぱりどうしても寂しくて、その気持ちを我慢するのは無理で泣いちゃいそうだから下を向く。


「…そか…なつ君バイバイ…気をつけて帰ってね…」


お見送りする余裕は無いから、まだソファーに座っていたなつ君に1回ハグをして自室へと走って逃げた。


「クリス?!」


なつ君の声を振り切り、自室の扉をパタンと閉める。

室内の明かりを付ければ部屋に散らばった玩具達


「あ……」


全部、なつ君にあげるって言ったお気に入りの玩具。

「ありがとう」って言ったのに、そのままだ。

それもそうだ。

なつ君はもう大人なんだから、小さい子の玩具を貰っても困るだろう。

なつ君の事を考えず、相手のいらない物を押し付けようとしていた自分が恥ずかしい…

きっと喜んでいたのは自分だけだ…


玩具を片付けながら、今日の事を思い出す。


お仕事で疲れているのに、おうちまで来てくれたなつ君をお散歩に連れ出して、さらに運動させて…なつ君疲れたかな…


ケーキだって、考えてみたらあのケーキはなつ君が前にお泊まりに来ていた僕に買ってきてくれたものだ。

なつ君も美味しいって知ってるものだし、僕はお金を持っていないから、ケーキやココア代を出したのはなつ君だ。

誘っておきながら、当たり前に相手に出させて笑ってる自分が恥ずかしくて顔が熱い。


「うぅ………」


お仕事の連絡もたった数分だったのに、僕は「やだ!」って我儘言っちゃった…。

なつ君申し訳なさそうに謝ってくれたのに、僕は「いーよ、大丈夫だよ」ってなんで言わなかったんだろ。


夜ご飯のハンバーグだって、ただ…なつ君に沢山食べて欲しくて僕のをあげたけど、僕はまだ小さいから皆より少し小さいハンバーグだ。

なつ君が食べきれないからって交換したお皿に乗っていたハンバーグは手付かずで僕のより大きかった。

大人ななつ君が僕のハンバーグだけでお腹いっぱいになるわけないって、なんで気づかなかったんだろう…。

結果、僕の方が沢山食べてしまってる………


「ふぇ…うぇぇぇん……」


片付けの手が止まり、床にしゃがみボロボロ涙を零す。

なつ君と一緒に居るのが幸せでポヤポヤしていた自分がやらかした事に気づいて消えたくなった。


挙句、僕はなつ君に


「結婚してくれたら、機嫌なおるよ!」


なんて、なんて…大切で大好きななつ君への初めてのプロポーズが自己中で脅す様な内容だなんてっ!!!

自分で自分が許せない。

時間を巻き戻せるなら巻き戻したいよ!


コンコン…


「クリス、入るぞ…って、どうした?!」


ノックの音と共に入ってきたのは、さっきバイバイしたなつ君だった。

部屋の真ん中でしゃがんで泣く僕を見たなつ君は慌てて僕のとこまで来て、全身くまなくチェックしながら自分の胡座の中に座らせてくれた。

それから袖で僕の濡れた頬を拭う。


「なつ君…今日、沢山…ごめんね…」


いきなり謝られたなつ君は不思議そうに首を傾げ


「何か謝るようなことあったか?」


僕は一つ頷き


「だって……」


今日やってしまった失態を話し、沢山謝った。


「ははっ、全部可愛いかったから、俺は迷惑とか我儘って思ってないけどな。玩具だって、クリスが俺に一生懸命愛情表現してくれてるのが伝わってきて嬉しかったし、クリスがお気に入りの玩具や美味しいケーキやハンバーグを俺に与えたくなるように、俺だってクリスにケーキだってココアだってハンバーグだって沢山あげたいんだよ。」


なんだそんな事か、となつ君は笑ってくれるけど…


「でも…僕のは、空回りしてて、プロポーズだって……あんな…あのプロポーズ…忘れて、約束無しにして?お願いなつ君…」


もっと大きくなったら高くて綺麗な指輪を用意してなつ君にかっこよくプロポーズしたい。

今日みたいなプロポーズはやだったからお願いしたけど、なつ君はムッとし


「例えクリスのお願いでも却下だ。忘れないし、無かったことにしない。」


「そんな……」


ガッカリする俺になつ君の眉間のシワが更に深くなる。


「俺と結婚すんの、嫌になった?最近お泊まりどころか遊びにも来なくなったし、俺が仕事行く時も泣かなくなったし、さっきもあっさりバイバイって…前は大泣きしてくれたのに…

やっぱ20も離れたおじさんはいやか…?」


自嘲して笑う姿に僕は慌ててなつ君を抱き締めるつもりで抱きつき


「違う!!嫌じゃない!!結婚もしたい!!なつ君大好き!沢山…1秒でもずっと沢山長く一緒に居たいくらい大好き!!でも、なつ君が…僕に「行ってきます」って言わないでお仕事行っちゃったのは、僕が朝沢山グズってたからでしょ?僕、「行ってきます」と「行ってらっしゃい」をおじいちゃんになってもずっと言い合える関係で居たいから、良い子になるから…っ…だから…!」



「あ……あー…あれか!…クリス……ごめんな、あの日は早く出社しないといけない日だったの忘れてて、大慌てで家を出たから言う暇が無かったんだ。一応大きな声で「行ってきます」って言ったつもりだったんだけど…声が届かなかったんだな。」


「そうだったの…?」


「あぁ。俺がクリスを迷惑に思うわけないだろ?毎朝グズるのも、家に居る時ずっと一緒なのも、食べ物や玩具で求愛してくれるのも、プロポーズしてくれたり、二人の時間邪魔されるのを拗ねたり嫉妬してくれるのも、愛されてるなーって感じてすげー幸せなのに。」


抱きつく僕の背がなつ君にポンポン叩かれる。

僕が顔を上げれば、なつ君が額をコツンと合わせてきて


「だから、クリスは俺だけに沢山我儘言ってくれよ。クリスが良い子になると俺が困るんだ。」


「どうして?」


「寂し過ぎる。」


「寂しくなるの?」


「そ、すげー寂しい。出勤する時にあっさり「行ってらっしゃい」って言われた時も一日落ち込んだし、帰ったらクリスの「おかえり」がねーし、今朝起きた時もクリスが居なくて寂しかった。たくさん一緒に居たいのは、俺の方だよ」


「……そうなんだ…そっか…じゃあ僕は今まで通りでいいの?」


「あぁ。だから、今日もお泊まり来てくれないか」


僕が甘える時に額をグリグリ押し付けるのを真似して、なつ君も額をグリグリ擦り付けてきた。


「うん…行くっ!」


そう返事すると、なつ君は嬉しそうに笑ってくれた。







〜14年後~


なつ君は40歳、俺は20歳になった。

ようやく、なつ君を恋人と紹介してもいい歳になったんだ。

俺が20歳の誕生日でありクリスマスの日に、なつ君に似合う最高の指輪を考えて小さい時からモデルの仕事をして稼いだお金で購入し、プロポーズのリベンジを果たして理想のプロポーズをする事が出来た!

その後、お互いの両親にサプライズ報告したらビックリしてくれた。


「まだ交際してなかったの…?」

「そういえば、キスもほっぺや額だけだったような…」


と、思ってたのとちょっと違ったけど…。

それからなつ君のお家に(俺は嫁入りする気持ちで)同棲も許された。


40歳になったなつ君は落ち着いた大人の魅力が溢れてて素敵だ。

俺のダディは中年太りでぷよぷよお腹なのに、なつ君のお腹は腹筋が割れて身体は引き締まってる。

俺とケーキ半分こしたり、沢山あーんして食べさせてるのに…どうして?と聞いたら、


「クリスの自慢できる恋人でいたいから、努力でどうにか出来るとこは頑張ってんだよ。」


と、言われた。

なつ君が魅力的なのは、努力の結晶らしい。


俺はというと、お人形さんと言われた姿は10歳を過ぎた辺りから中性的な美人と言われるようになり、金のストレートになった髪も腰まで伸びて身長もなつ君を追い越した。なつ君みたいに筋肉はないけど、代わりにスラッと綺麗なプロポーションと肌はあるよ!

モデルの仕事でも色んな服が着れるのが楽しい。






「なつ君…起きて…朝だよー」


一緒に暮らし始めてから寝起きも一緒。

なつ君は室内着のシャツとズボンを着て寝るが、俺は何も着ずに寝るのが好き。

それは同棲する前からずっと。

最初はなつ君もビックリしてたけど、たぶん慣れてくれたと思う。

1ヶ月くらい経った今でもよく顔が真っ赤になってるけど…


「んん゛っ…もう少し…」


「む………………………」


眉間に皺を寄せ、枕に顔を埋めるなつ君。

起きてくれないのは悲しいけど、眠そうななつ君は可愛い……

いつもは寝起きがいい彼がこうなるのは仕方ない。

昨日は仕事のトラブルで帰ってくるのが日付が変わってからだったのだ。

そして今は朝4:30。

3時間も寝ていない…。


俺は今日、なつ君の職場近くで早朝から撮影が入っている。

数日前なつ君がその日の出勤はお昼からって聞いていたけど、一緒に出勤したいなっておねだりしたらOKを貰えた。


「俺もクリスと出勤楽しみだよ」


って言ってたけど…

だけど、まさかこのタイミングでトラブルが起こるなんて…


昨日は一緒にお風呂もご飯も出来なかったし、寝る時も一人で寂しかった。

今朝は一緒にご飯食べたかったけれど…


なつ君の目の下にまだ残るクマを撫でる。


昨日…いや、今朝帰宅が遅かったのに加えて最近残業続きで仕事が大変ななつ君にこれ以上声はかけきれなかった。

せっかく遅くまで寝られるんだから、寝かせてあげよう。

俺はスヤスヤ眠るなつ君の項にキスを落としてからベッドから出た。


身支度を整え、フルーツ入りのヨーグルトを食べながら皆の朝ごはんとなつ君のお弁当を作る。

歯磨きを終え、仕事に行こうとしていたらなつ君のおばあちゃんがリビングに現れた。


「おはようクリスちゃん」


「おばあちゃん!おはよー!!」


杖を付いて歩くおばあちゃんを抱き締めておはようの抱擁をする。

それから腕を貸しておばあちゃんの定位置であるソファーまでエスコート。

その時、どこからかドタバタ音がした。

家の誰かが起きたのだろう。

おばあちゃんがソファーに座れば、俺はおばあちゃんの手を握り


「じゃあ俺、お仕事行ってくるね」


「今朝は早いねぇ……気ぃつけて、行ってらっしゃい」


「うん!行ってきます」


おばあちゃんのほわほわした微笑みに、ちょっと心が軽くなった。


「まってくれ!俺も行く!!」


おばあちゃんに行ってきますの挨拶をしたら、俺となつ君の部屋の方からなつ君の声がした。

どうやらドタバタ音はなつ君だったらしい。


「わるいクリス!!!寝坊した!!」


シャツのボタンが2、3個空いて、ネクタイを握りしめたなつ君が慌てた様子で玄関にやってきた。

一度リビングに入り俺のお弁当を持って玄関に来る。


「寝てて良かったのに…」


玄関でなつ君のボタンとネクタイを締めながら小さく呟けば、カバンにお弁当を入れてコートを羽織り靴を履くなつ君の眉尻が下がった。


「そんな事言わないでくれクリス…」


「だって、なつ君疲れてるでしょ?せっかくお昼近くまで寝れるんだよ…」


「睡眠よりクリスとの約束が優先に決まってるだろ

。……ばあちゃん行ってきまーす!」


「はいはい、行ってらっしゃい。気ぃつけてな」


立ち上がったなつ君が俺と手を繋いで家を出る。

一緒に駅に向かって歩きながら、俺はモヤモヤしていた。


「やっぱりなつ君帰ろう…?」


繋いだ手を引っ張るが、なつ君は首を横に振り


「…起こしてくれたのに、起きなくてわるかった。ほんとに大丈夫だ。出勤してから会社のソファーで寝るからさ」


「でも、それじゃあ疲れとれないよ……」


「クリスと約束破る方が元気なくなるんだよ、俺は。」


「でも……」


「……体力や気力より、クリス不足が限界なんだよ。最近忙しかったし、昨夜も話せなかっただろ。それで朝もクリスに会えず、約束も破ってしまったなら、もう俺仕事行けないくらい落ち込んだぞ。」


「…………っ」


それは…ズルいよなつ君。

そんな事言われたら家に帰ろうなんて言えなくなるし、嬉し過ぎる…。

繋いでいる手を1度離せばすぐに指を絡めて恋人繋ぎをし


「もう10年以上一緒にいるのに…なつ君はいつまでも甘過ぎるよ…あんまり無茶しないでね…?」


なつ君はクスッと笑い


「そうか?クリスは成長するにつれて良い子になってしまって俺は寂しいよ」


「うっ……」


なつ君はたまにサラッととんでもない甘やかし発言をしてくる。

俺をダメにする言葉だ!


「ダメだよなつ君!そんな事言ったら、もーっと我儘になるよ、俺」


ただでさえ、なつ君には我儘の甘えたなのに…

これ以上甘やかされたら…


「例えば……もっとキスしたいとか?」


ギクッと肩が揺れる。


「毎朝俺の通勤に付いてきて、帰りも迎えに来たい、とか…」


絡めている指にギュッと力が入ってしまう。


「寝る時に服を脱いで欲しい、とか…」


カァッと頬が熱くなる。

全部当たりだ。

でも、思ってるだけだから!


「図星か?クリスは分かりやすいな」


なつ君が隣でクスクス笑っているのが悔しい。

俺はムスッとしながらなつ君の顔を覗き込み


「…なんで分かったの?」


目が合えばなつ君の唇が弧を描いた。


「クリスの事が大好きで、甘やかす隙をいつも狙ってるからだよ。クリスはもっともーっと我儘になっていいんだよ。とりあえず、キスと服は叶えてやれるぞ」


カバンを脇に挟んで空いた手で頭をポンポンされた。

俺の恋人は…ほんっとに…俺をグズグズに甘やかすのが上手過ぎる。

一緒にいる時間が長くなればなる程、そのグズグズの深みにはまって抜け出せなくなってしまいそうだ…。








(side:なつき)


その日、なつきの会社では…


「あ、課長首にキスマーク付いてますよ。」


「ふふっ、また恋人さん拗ねさせたんですか?」


課長であるなつきの後ろを通った社員二人が項にある赤い痕を見つけ揶揄うように声をかけた。


「え゛?!まじか…どこにある?」


社員の言葉になつきは首を掌で触り


「後ろの方ですよー」


「後ろは分かんねーよ…教えてくれてサンキューな」


はぁ…とため息を付けばデスクの引き出しから常備している絆創膏を取り出し、教えてもらった場所へと貼り付ける。


「どういたしまして!」


「で?で?今日は何があったんですか?」


恋バナ大好きな社員がワクワクしながら詰め寄るのに、苦笑するなつき。


「あー……今朝一緒に出勤する約束してたのに起きなかったからだな、…たぶん」


クリスがベッドから出る時に項にしたキスがまさかキスマークだったとは…

思い返せばちょっとチリッとした痛みがあった気がする。


「えぇ、それは仕方なく無いです?最近忙しかったり昨日は遅かったですし…」


「恋人もそう思ってくれたけどさ…、「仕方ない」であっさり許されるのも複雑だぞ?すげー寂しいって。」


「…なんか…恋人さんのイメージもドン引くくらい凄いですけど…課長は付き合ったら面倒くさそうですね…」


何年も前から週末や学校の長期休暇の時は手作り弁当持ってきていた課長は、ここ1ヶ月は毎日ずっとだ。

課長の恋人さんは拗ねると見える場所にキスマーク付けるというのは社員で知らない人は居ないし、

たまに不在着信やメッセージがストーカー並みにえげつない量入ってるのが見えたり、

GPSも付けられているとか…


それだけ聞くと恋人さんの執着具合に、

すぐ別れるのでは?

刺されたり監禁されたり、犯罪に巻き込まれないか…

課長大丈夫か?

と心配になるが、当の本人は恋人のお弁当や着信履歴や留守電、メッセージを見ればデレデレに頬が緩むのだ。

キスマークに関しては申し訳なさそうにしょんぼりしている。

これだけ愛情たっぷりな事が毎日の如くあってるのに、一回一緒に出勤しないだけでそんなに寂しく感じるだろうか?

…普通はならないだろう。


「面倒くさい…?!…えっ!?」


「あー……確かに……」


「どこが?!」


「だってそこは恋人に甘えて寝かせてもらえばいいのに、寂しいだなんて…」


「イベントの日ならまだしも、別に記念日でもクリスマスでもないじゃないですか」


「課長はあれですよ、孫が可愛くて仕方ないおじいちゃんみたいな……」


「ぐっ…」


恋人より20も年上で、40になった今、その例えはグサリと刺さる。


「なんでもしてあげる、なんでもしてあげたい、求めてもらえる事に愛を感じる…借用書にもサインしちゃいそうですよね…」


好きなら皆そう思うんじゃないのか…?


「うんうん!相手が自立してサバサバした人なら課長の方が寂しくて、でも言えずに悶々として拗れた愛になっちゃいそう!」


「じ、自立…」


モデルの仕事は昔からしているが、20歳になり本格的に社会人として生き始めたクリス。

もう養ってもらわず自立出来るほどの稼ぎはあるみたいだが…


「いやいや、俺の恋人に限ってそんな事は…」


「あ、課長の今の恋人さんは大丈夫ですよ。課長が見えない場所にこっそりキスマーク付けちゃうくらい粘着質みたいですから!」


「そ、そうか?」


ほっとして思わず頬が緩んでしまう。


「そこで喜んじゃうとこが…」


「いや、だって普通嬉しいだろ?おいっ引くな!」


仕事では尊敬されているのに、恋愛ではドン引きされるなつき課長なのであった。


その日の夜


帰宅しようと会社のビルから出れば何やらいつもより人が多い。

皆が見る先は1つで、自分もそちらに視線をやれば


「?!」


ブラウンの色つきメガネに赤いマフラー、髪はニット帽の中に入れて見えないがあれは間違いなくクリスだ。

綺麗な白い肌やロングコートからはみ出ている長い足、雰囲気や佇まいは人目を引いている。


(だから、会社まで一緒は嫌だったんだ ……!!)


これは独占欲だ。

昔からクリスは人を惹きつけるから、クリスが外にいる時は気が気じゃない。

毎日届く沢山の着信もメッセージも俺がして欲しいと頼んだ訳じゃなくクリスが俺恋しさにしてくれるものだが、あれのおかげでクリスの身が無事か確認できて、クリスの心がまだ俺にあるって信じられるから、なんとか平常心で仕事が出来るのだ。


「クリス!」


俺が声をかければ、すぐに顔を上げて満面の笑みで立ち上がるクリス。

俺の方へ早足でくれば熱烈な抱擁をし


「なつ君会いたかった!」


「会いたかったって…クリス…撮影は昼くらいまでだろ?もう21時だぞ」


そう尋ねれば、クリスはメガネを外してジッと俺の瞳を見つめてくる。

ぐっ……これは…悪い事した自覚はあるけど、許して欲しい時にする目だ……。


「撮影がスムーズに行ったから、夕日をバックにした撮影まで終わらせようってなって…終わったのが17:00くらいだったから…なつ君終わるまであとちょっとだし、待って一緒に帰りたくて……」


「…昼間から待ってた訳じゃなくて安心したが、それでも4時間もあんじゃねーか!!しかもこんな寒い中…っ!」


クリスの頬に手を添えれば冷えきっている。

クリスは温かい俺の手に頬をスリスリ擦り寄らせながら見つめてきて


「だって、なつ君いつも18:00に終わるから、今日もそうかもって……今日は昼出勤だから遅くなるって気づいたけど、気づいたの、19:00だったし…一緒に帰る気満々だったから、今更帰るのも…って…」


「はあ…分かった。とりあえず早く帰って風呂はいって温まろう。このままじゃ風邪引いちまう。」


あと、モデルのクリスだと気づいた人も居るみたいでざわめきが大きくなっている。

このままここに居たら声をかけられてしまいそうだ。

俺はクリスと二人の時間を邪魔されるのは好きじゃない。

クリスと繋いだ手をポケットにしまい、二人最寄り駅まで歩く。

クリスは俺と帰れるのが嬉しいのかご機嫌で、色々言いたいことがあったのに吹っ飛んでしまった。


「あれ?課長……?」


「えっ?!えぇっ?!もしかして、手を繋いでる男性が課長の恋人?!」


「彼ってあの、モデルのクリスさんだよね?!」


昼間、項のキスマークを教えてくれた二人と駅で目が合った。

俺は2人がこちらに来て二人の時間が邪魔されないよう、唇に人差し指を当ててウインクする。

恋話大好きな2人なら、こうしたら察してくれるだろう。

案の定2人はきゃあきゃあ言うだけでこちらには来なかった。

それをクリスが真顔で見ていたとは気づかず…


その夜、嫉妬したクリスは妖艶な浴衣(女装)姿でなつきを誘惑してその視線を思う存分独り占めし、なつきは嫉妬で可愛い事をするクリスに愛が堰を切ったように溢れ、クリスが満足するまで可愛がりまくったのだった。


最後までお読み下さりありがとうございました。

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