~ おまけ ~ クリスの大切な子 6
ー次の日ー
ピンポーン
「おや?朝早くからお客さんなんて珍しい……」
一昨日クリスマスパーティーがあったなつ君のお家。
この家で一番早起きなおばあちゃんは、チャイムの音がしたのでリビングにあるソファーから立ち上がりゆっくり玄関へと向かった。
鍵を解除して引き戸の扉を開ければ、そこには可愛いお客様が。
「はいはい、おまたせしました……あらあら…おやまぁ…」
「おばあちゃんだ!!おはよーございますっ!!」
扉を開けてくれたなつ君のおばあちゃんに、僕はペコリと頭を下げる。
おばあちゃんはいつもの様にニコニコ微笑み
「おはようクリスちゃん。一人で来たの?」
「うん!みんな寝てたから、僕一人で来たの!」
「そうかい、そうかい。一人で来れるなんて偉いねぇ。寒いだろうて…おばあちゃんが温かいココアを入れてあげようね。おはいり」
「わーいっ!ココア!ありがとうおばあちゃん!!」
おばあちゃんは僕の冷たくなっていた手を暖かい手で握って中へと入れてくれた。
キッチンに行けば、おばあちゃんがヤカンに水を入れてコンロに置き火をつける。
お湯が沸くまでの間に炊飯器がご飯が炊ける音を鳴らしたのを聞いたおばあちゃんは良い事を思いつき
「歩いてきたならお腹空いたでしょう」
そう言うとおばあちゃんは手を濡らして塩を付けた手に炊きたてのお米をのせ、チャッチャッと良い音を立てながら三角のおにぎりをテキパキと作り上げた。
「おにぎりだぁ!!」
僕が目をキラキラさせて言えば、おばあちゃんは「正解」と言う様に微笑んでくれた。
今までお腹が空いていなかったのに、おにぎりの匂いと音を聞いていたら一気にお腹が空いてグゥと音がなる。
「ほれ、食べてみい」
おばあちゃんがおにぎりを差し出してくれたので、先端を一口頬張る。
「!!!美味しいっ!!」
おばあちゃんは僕が食べたおにぎりを三角に握って綺麗な形にすればまた差し出してくれた。
だから、僕もまたそれを食べる。
食べたらおばあちゃんが三角に握る。
それを繰り返したら、おにぎりは小さくなって一口サイズになった。
「ほれ、最後の一口」
「んっ!!」
最後の小さな三角おにぎりは、特別美味しかった…!!
初めて立ったままキッチンで食べて、何回食べても綺麗な三角おにぎりになるのも、だんだん小さくなっていくのも凄く楽しくて、お腹も心も満たされた!!
そんな事をしていたらお湯が沸き、おばあちゃんは自分の緑茶と僕のココアを入れる。
二人でソファーに座り、暖かいヒーターの近くで温かい飲み物を飲めば、ほぅと満足気な息が無意識に零れた。
「おばあちゃんのおにぎり、凄く美味しかった!!僕、あんなに楽しくて美味しいおにぎり初めて食べたよ!!」
「ふふっ、そうかい?そりゃ嬉しいねぇ。」
「また食べたいな。おばあちゃんまた遊びに来た時作ってくれる?」
「こんなばあちゃんのおにぎりで良ければいつでもえーよ」
「やったぁ!おばあちゃん大好き!!」
サンタクロース時代は触れる事も話す事も出来なかった、なつ君の大好きなおばあちゃんに僕は抱き着いて触れる事が出来ている。
こんな風に話せる事も、幸せだ。
そんな風におばあちゃんとお話ししたり、なつ君のお母さんのご飯を食べていたら、時刻は9:00近くになっていた。
「ふぁあ…はよー………」
階段を降りてくる音がして、リビング扉が開けば現れたのは僕の大好きななつ君。
僕はお皿を拭くお手伝いを中断すれば、なつ君に向かって走っていき
「なつ君!なつ君!おはよーっ!!」
「おー…はよー………………………………は?」
足に突撃した僕の頭を寝ぼけながらわしゃわしゃ撫でたなつ君は少ししてようやく目が覚めたのか動きをピタッと止め
「……………なんでクリスが家に居んだ?!」
眉間に皺を寄せ凄く驚いていた。
「えへへっ。“すぐ遊びに来ていい”って言ってたから、遊びに来たのー」
そう。
“すぐ遊びに来ていい”ってなつ君が言ってくれたから、あの日僕は我儘言うのを我慢した。
そして次の日の朝、早起きして一人でなつ君のおうちまでやってきたのだ!
「クリスや聖夜は?!……ま、まさか一人で来たんじゃ………」
「僕、一人で来れたよ!」
凄い?偉い?とワクワクして目を輝かせながら褒められるのを待てば、なつ君は複雑そうな表情をした後
「…そうか、そうか!偉いなー。」
ニコニコ笑って僕の頭をヨシヨシ撫でてくれた。
それからなつ君は、後ろを振り返れば笑顔を消して緊迫した表情と声に変わり
「………………母さん!ばあちゃん!聖夜んちに電話は?!これ向こうは知ってんの?!」
「え?私が起きてきた時には居たから、誰か連れてきたのかと…」
「あたしゃ電話もなーんもしてないよ」
おばあちゃんとなつ君のお母さんは2人とも何もしていなかった。
その後なつ君が慌てて僕の家へと電話すれば、やはり家の方でも大騒ぎになっていたらしく、すぐ家族全員がやってきた。
「こらっ!!クリス!!!!!」
「ヒャッ!!!」
そして、普段滅多に怒らないマムに悪魔の様な形相で怒られた。
もちろん他の三人にも…
何でもない日でも心配するのに、
あんな事があった翌日なのだ。
マムと聖夜お兄ちゃんの取り乱し様は凄かったらしい。
その状況やどれだけ心配をかけてしまったかは、もう少し大きくなってから理解し、申し訳なく思う事になる。
こんなに叱られたのは初めてだったから、流石に反省した。
でも……
「うわぁぁあぁぁぁんっ!!!まだ帰らないーーーっ!!!なつ君ーーー!!!」
反省と恋しさは別だ。
ダディに抱かれながら今日もまた、なつ君に手を伸ばし泣きながら僕はお家へと強制送還になった。




