~ おまけ ~ クリスの大切な子 1
“チョコが好き”
毎年クリスマスの日に、チョコクッキーを用意してくれる君のブラウンの髪と瞳が、同じ色をしているから
“ココアが好き”
普通、サンタクロースにはミルクやアルコールが用意されているんだけど、君は大好物のココアをマシュマロ入りでいつも用意してくれたんだ。
小さいのが山のように沢山入ってたり、一口じゃ食べきれないような大きなものがドーンと一個、ピンクのハートや雪だるま、毎年違うマシュマロが入ってて美味しかった。
“クリスマスは好きで嫌い”
僕の誕生日で、産まれる前は一年に一回だけの大好きな君と会える特別な日だったから好き。
でも、クリスマスを見ると幸せだった思い出が浮かんで胸が痛くなって寂しくなるんだ。
そして、この日は大好きな君に否定されて僕が消えた日。
だから、嫌い。
僕が自分の前世を思い出したのは、4歳の時にマムが再婚しようと考えている人のお家に初めて来た日の事だった。
ダディとお兄ちゃんにはお昼ご飯を食べに行った時にレストランで会った事があるから、初めて会う人じゃない。
僕は本当のダディを知らないから、皆と同じ様に自分にも優しいダディが出来たのが嬉しかった。
そして、新しく出来た大きなお兄ちゃんも一目で大好きになった。
何故かは分からない。
けれど、食事が終わって公園で遊んで貰ってバイバイする時にギャン泣きしてしまうくらいには好きだった。
離れたくない!まだ一緒に居る!!と、どこまでも着いていこうとして、皆が笑いながら困った顔をしていた。
そして今日、新しい家族のお家にお邪魔して紹介されたモノを見て全て思い出した。
「はじめましてクリス君。僕は生活サポートアンドロイドのサンタと言います。」
「……あ…………」
僕はマムの足にしがみついたまま、その人間にしか見えないロボットの言葉に何も返せずにいた。
ロボットは膝を着いて視線の高さを合わせ、両手を広げて友好的に僕を迎えてくれた。
一目見て分かった。
このロボットは僕と同じだ。
この人は、僕と同じ“元サンタクロース”だ。
言葉では表せないけれど、分かる。
僕は一つ聞きたいことがあって、マムにしがみついたままサンサンの隣に立っている聖夜お兄ちゃんを見てからサンさんに視線を合わせる。
「……せいやおにいちゃんは…サンさんの…大切な人…なの…?」
きっとサンタさんも僕を見て気づいたと思う。
僕の質問の意味にも気づいているだろう。
「うん。とても大切な子だよ」
幸せそうに微笑み、サンさんはそう答えた。
「…………ッ」
(ずるいっ!)
最初に感じたのはどす黒く嫌な思いだった。
僕は心から大切に大切にしていた大好きな子にいきなり消されたのに、どうして目の前のサンタクロースは大人になった大切な子と一緒に居るの?
いいな、ずるい…どうして……って、いやな考えが止まらない。
僕はムスッと頬を膨らませ、目に溜まった涙が零れないようにギュッと目に力を込めれば、両手を上げてサンさんに向かって行き
「ずるい…きらいっ…!!サンさんもおにいちゃんもきらいっ!!」
サンさんの胸に飛び込んだ僕はサンさんの胸をポカポカ叩いた。
「こらやめなさい、クリス!いきなりどうしたの?」
「どうしたんだクリス?!」
慌てるマムとお兄ちゃんの声がしたが、僕は感情の赴くままサンさんを小さな手で叩き続けた。
マムが慌てて僕をサンさんから離そうとしたが、サンさんがそれを片手で制止したらしい。
叩き続ける僕をサンさんは強く抱き締めて、抱っこすれば立ち上がり
「うわっ!」
いきなり足が地面から離れたから怖くて、僕はサンさんの胸元のニットをギュッと握った。
顔を上げれば、間近にあるサンさんの瞳に僕は顔を逸らす。
こんな事をしたのに、サンさんはまだ幸せそうに微笑んでいる。
どうして、理不尽に嫌ってるのに、どうしてそんな優しい顔するの…?
「聖夜とお父さんから、クリスはココアが好きだと聞いて準備してたんだ。一緒に飲まないかい?」
サンさんは、きらいと言ったり叩いた理由を全て分かっている様だった。
それには触れずに、別の話をしてきて
「ココア…」
優しいサンさんの言葉と大好きなココアにどろどろしていた気持ちが薄まる。
「ココアにマシュマロを浮かべるのが好きなんだよね?色んなマシュマロがあるんだ、一緒に選ぼう。」
「…………うん」
大好きなマシュマロを浮かべるココアが欲しくて、優しいサンさんに“きらい”な気持ちは薄まったから、僕は頷く。
「さっきの“きらい”はなんだったんだ…」
「ふふっ、仕方ないわ。子供は機嫌がコロコロ変わるから。……どうなるかと思ったけど、サンタさんとも仲良くできそうで良かったわ」
サンさんに抱っこされてリビングに行く後ろで、おにいちゃんとマムが話しているのが聞こえた。
僕はサンさんの首に腕を回してしがみつきながら、サンさんにだけ聞こえるように話し
「あのね、ファザーもおにいちゃんもサンさんも…すき。…だけど、サンさんとおにいちゃん見たら、嫌な気持ちになっちゃうから…きらいなの…」
どうしても、羨ましくて…仕方ない。
僕達はどうして上手くいかなかったのか、何が違ったんだろうって…グルグル答えのない事を考えてしまう。
大切でたまらなかったあの子が恋しくなって、また会いたくてたまらなくなる。
「僕もクリスの立場だったら、きらいになると思うよ。だから、すきも言ってくれてありがとう。」
サンさんはそう言って背中をぽんぽんしてくれた。
いつか、優しいサンさんとお兄ちゃん二人を見ても、嫌な気持ちにならなくなるかな…
大好きな気持ちでいっぱいになれたらいいな…
と、思うけれど…
まだそう思うには二人一緒にいる光景に慣れず、
幼い精神ではすぐにプリプリ怒ってしまい、
みんなで飲み物片手にお話している時間、お兄ちゃんとサンさんが並んでソファーに座っている間に割り込み、邪魔をした。
それを二人は微笑ましく見つめてくれていたらしいけど、この時の僕は知らなかった。
そして帰る時間…
「やぁぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁ!!!かえらないーーー!!!おにいちゃんといるのーーー!!!」
前回と同じく、僕は聖夜お兄ちゃんと離れるのが悲しくて嫌でたまらず大泣きして皆を困らせた。
聖夜お兄ちゃんはちょっと嬉しそうだったけど、隣で微笑んでいるサンさんはそんな聖夜お兄ちゃんの腰に手を回して密着していた。
まるで僕に取られまいとするかの様に。
それから暫くして、マムは再婚し僕達は家族になった。




