はじめまして、僕の大切な君
イマジナリーフレンドを知っているかい?
子供が産み出した目に見えない「空想の友達」と呼ばれる存在。
僕らは、それと似ているようで違う存在だ。
小さい子供が初めて僕達の名前を呼んでくれた時、君だけの“僕”が産まれる。
保育士さんが読む絵本。
言葉を話すようになった君は保育士さんの言葉を真似して、小さなお口を大きく開いて、たどたどしく名前を呼んでくれた。
「さんたくろおす?」
あの日の事は忘れない。
寒い外と暖かい部屋、君が産まれてから3回目の冬に呼んでくれた。
保育施設で、お友達と楽しそうにサンタクロースとクリスマスの歌を歌う君。
「さんたくろーす!」
名前を口にされる度、嬉しかった。
初めて君と会えるクリスマスの日、君はミルクとクッキーを用意してくれた。
一回目はミルクをたっぷり入れて運ぶ時に零しちゃったね。
だからお母さんが2回目は少ししか入れてくれなくて、ぷりぷり怒ってて愛らしかった。
お皿に乗っている一枚のクッキーは君の掌よりちっちゃくて可愛いね。
僕の為に用意された少しのミルクと小さなクッキー。
でも君は、お母さんが見てないうちにミルクを飲み干して、クッキーも半分以上食べてしまった。
「あぁあ!!歯磨きした後なのに!…もー!!それはサンタさんのでしょ?」
そう言っているお母さんの唇も口角が少し上がっていた。
ふふっ、分かる、分かるよ。
僕も愛らしい君の姿が微笑ましくて笑ってしまったから。
二人が歯磨きの為に部屋を出た隙に、入れ替るように俺は部屋へと入った。
君の食べたクッキーの残りを指で摘めば口へ放り込む。
小さな一口分のクッキー。
初めてのクリスマスは、君と1枚のクッキーを分けっこして食べられて、僕は楽しかったよ。
全部飲んだと思っていたミルクが、よく見たら気持ち程度、ちょびっと残っていたのを見つけた時も思わず笑っちゃった。
君はミルクを残せる優しい子だ。
ちょびっとのミルクも大事に僕が飲み干した。
残りのミルクとクッキーはお母さんがこっそり食べたんだ、とお母さんの記憶を書き換えて置いた。
僕達サンタクロースは、些細な記憶なら書き換える事が出来る。
大切な君達にはしないけどね。
その日の夜、僕は両親に挟まれて眠っている君の元に行く。
小っちゃな赤い靴下が片方、枕元に置いてある。
そこに君の大好きな電車のオモチャを入れてみた。
「ふふっ…」
君が普段履いている小さな靴下だから、細長いプレゼントの箱が結構飛び出しているのが面白くて、つい笑ってしまった。
君の両親が君へのクリスマスプレゼントを用意したんだって、記憶を書き換えることも忘れずに。
「Merry Christmas,My little one」
スヤスヤ眠る君の額に口付けを落とす。
「おやすみ、僕の可愛い子」




