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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第7話 闇の刃と誓いの炎

王都アルヴェリア。

 かつて栄光の象徴だったその城壁は、今や裏切りの象徴としてライルの心に刻まれていた。

 夜霧が街を覆い、灯りがぼんやりと滲む。


 ライル・アーヴィングは外套のフードを深くかぶり、王都の裏路地を歩いていた。

 目的はただ一つ――王の動向、そして裏切りの証拠を掴むための情報収集。


「……静かすぎるな」

 低く呟いた声が、闇に溶ける。

 背後からは、誰の気配もない。――だが、それが逆に不自然だった。


 暗がりの屋根の上で、ひとりの影がライルを見下ろしていた。

 黒衣に身を包み、顔を覆う仮面。

 息を殺し、まるで夜そのものと同化するような存在。


 男の名は――ゼイル。

 王国直属の密偵部隊《影ノ牙》の元構成員にして、現在は誰の命令も受けぬ“自由な死神”。


「……あれが噂の男か。裏切りの王に刃向かった元騎士」

 ゼイルの瞳が、興味を宿す。

 「さて……どれほどのものか、試させてもらうか」


 刹那、影が動いた。

 音もなく、空気すら切り裂かない。

 暗殺者が放った短剣が、ライルの背後へ疾風のように飛ぶ。


 ――が、金属音。


 ライルの剣が閃き、短剣を弾き飛ばしていた。

 まるで振り向くよりも速く、刃が動いた。


「……気づいていたか」

 ゼイルが屋根の上から降り立つ。

 その動作は静かで、死のように滑らかだった。


「王都の影を狩るつもりか?」

「王の犬なら、ちょうどいい。情報を吐け」


「ふっ……殺気が面白いな。だが、簡単に殺されてやるほど安い命じゃない」


 二人の間に、緊張が走る。

 次の瞬間――剣と短刀が交錯した。


 金属音が夜の静寂を裂き、火花が飛ぶ。

 ライルの剣が重く、ゼイルの刃が鋭い。

 力と速さ、理と殺意――二つの極がぶつかり合う。


「速い……! 騎士の動きじゃねぇな」

 ゼイルが後退しながら笑う。

「だが、まだ人の域を超えちゃいない!」


 暗殺者の身体が消える。

 まるで夜そのものに溶けるように――完全なステルス。


 しかし、ライルの剣がその方向を正確に斬り払った。

 空気の流れ、殺気、足音……それらすべてを読んでいた。


 次の瞬間、ゼイルのマスクが裂け、頬に血が滲む。


「なっ……!」

「影を使うなら、もう少し静かに呼吸するんだな」


 冷たい声が、闇に響く。

 ゼイルの胸に、得体の知れない戦慄が走った。

 ――この男、もはや“人間”ではない。怒りそのものが剣になっている。




「……なるほど。王の裏切りに生まれた化け物ってわけか」

 ゼイルが短刀を納める。

「興味が湧いた。俺もお前の“復讐劇”に乗ってやろう」


「理由は?」

「俺の家族も……王に殺された。影ノ牙は“忠義”を理由に、不要になった者を処分する組織だ」


 ゼイルの目が燃える。

 冷たく、しかし確かな怒りを宿した光。


「条件がある。俺の情報網を使う代わりに、俺の“獲物”には手を出すな。それと――裏切りだけはするな」


「裏切り……?」

 ライルが低く笑う。

「この世でそれを最も憎むのは、俺だ」


「……いい目だ。まるで、地獄を歩いてきたみたいだな」

「地獄なら、もう慣れた」


 二人は無言のまま視線を交わす。

 その瞬間、何かが通じた。――怒り、忠義、そして血の契約。




 深夜。

 王都外縁部、廃屋街。

 ゼイルの手引きで潜入した情報網の一角を制圧する作戦が始まった。


「標的は“王城監察局”の密偵拠点。奴らが王の密命を受けて動いている」

「つまり、裏切りの証拠がそこにある」


 闇の中、ライルが剣を抜く。

 セリアが詠唱を始め、ミレーヌが刃を研ぎ、ゼイルが先行する。


 ――静寂。

 次の瞬間、影が動いた。


「侵入者だ! 防衛を――ぐああっ!」

 叫びが終わるより早く、兵が倒れる。

 ゼイルの刃が喉を裂き、ライルの剣が背後を貫く。


 血が霧のように舞い、床を赤く染めた。

 セリアの炎が灯り、空気が熱を帯びる。


「《紅蓮・封火陣》――逃げ道は塞いだわ」

「よし。殲滅する」


 ライルが一歩踏み出した瞬間――風が止まった。

 剣が見えなかった。

 ただ、残響だけが空間を裂いた。


 兵士たちが、一斉に崩れ落ちる。

 その動作、わずか一呼吸。


「……化け物だな」

 ゼイルが呟く。

 彼の目には、恐怖ではなく純粋な“敬意”が宿っていた。


「これほどの剣を持つ人間が、まだこの国にいたとは」

「人間をやめたからこそ、ここにいる」

「なるほど、だから“怒りの剣”か……」


 ゼイルは薄く笑い、血に濡れた短刀を振った。

「いいだろう。俺はお前の影になる。闇の仕事は任せろ」


「信じていいのか?」

「裏切り者を殺すのは、俺の得意分野だ」


 ライルはわずかに笑った。

「気に入った。――ようこそ、“血盟”へ」




 夜明け前。

 燃える拠点を背に、七人が立っていた。

 炎が照らす彼らの影は、まるで戦の亡霊のようだった。


「これで、情報網は潰えた。王の裏切りを暴く道が開ける」

「次は……王都の中枢か」

「そうだ。王の喉元に刃を突きつける」


 ゼイルが微かに笑う。

「その日が楽しみだな。……地獄の開幕だ」


 ライルは空を見上げた。

 朝焼けの光が、わずかに街の屋根を照らし始める。


「光が眩しいな」

「夜の方が、お前には似合うぜ」

「そうかもな」


 炎が背後で崩れ落ちる音。

 その中で、ライルは静かに呟いた。


「王よ――お前の夜は、まだ終わらない」



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