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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第20話 血盟の戦略会議  

夜の砦を、冷たい風が抜けた。

 崩れかけた石壁に、焚き火の光がゆらめく。

 かつて王国の防衛拠点だったこの旧砦は、いまや“血盟”の臨時司令室として息づいていた。


 中央の長机には古びた地図が広げられ、赤い線がいくつも交差している。

 その地図を、ライルは無言で見つめていた。

 灯火が彼の瞳に映り、影が頬を撫でる。

 誰もが声を潜め、彼の言葉を待っていた。


「……報告を」

 その一言に、部屋の空気が動く。


 最初に口を開いたのは、魔導士セリアだった。

 彼女は杖の先を地図の上にかざし、青い光で街道をなぞる。


「王都正面には魔導防壁が展開されてるわ。強度は高く、正攻法じゃ突破は無理」

「なら、正面は囮だ」

 ライルは低く、しかし明確に答える。

「裏門、南西の橋梁を狙う。“獣の牙”を突き立てる」


 グロスがにやりと笑った。

「任せろ。俺らがその牙になる」

 彼の隣でミレーヌが頷く。「突破後は私が援護魔法で押し上げる。前衛は一気に突撃よ」


 ルネが書類束を掲げた。「哨戒網はこの三時間で更新されたばかり。隙は少ないけど、夜明け前なら動ける」

 ゼイルとゼスの兄弟が、互いに目を合わせた。

「潜入ルートは俺たちが探る。森沿いに抜ければ、監視塔を避けて裏門まで行ける」

「ただし、魔導結界の感知は一瞬でも遅れたらアウトだ」


 地図の上に光の線が増えていく。

 作戦が形を取り始めるたび、仲間たちの息が熱を帯びていった。

 だが――エリシア・アルヴェリアだけは、少し離れた場所で沈黙していた。


 王都を奪う。

 それは彼女にとって、“帰還”であると同時に、“喪失”でもあった。

 かつての家、かつての民、そして、かつて信じた王国。

 すべてが敵として、立ちはだかっている。


「エリシア」

 ライルが彼女に目を向ける。

「……民を、巻き込むことは避けたい。だが、完全には無理だ。お前は、それでも進むか?」


 彼女は一瞬、唇を噛んだ。

 けれど、瞳に宿った光は、揺るがなかった。

「王がこの国を壊したのなら、私たちが再び立て直す。それが、血盟の名の意味でしょう?」


 その言葉に、ライルは小さく笑みを浮かべた。

「……夜明けまでに全員、準備を整えろ」

 彼は立ち上がり、外套を翻す。

「次の夜――王国の首を取る」


 焚き火が爆ぜ、炎が大きく揺れた。

 それはまるで、王都を焼く前触れのようだった。




 月が砦の中庭を照らしていた。

 冷たい夜気の中、八人の影が焚き火を囲む。

 風が旗を揺らす。その布には、かつて血で染めた“獣の紋章”が刻まれていた。


 ライルは全員の顔を順に見渡す。

 ゼイル、ゼス、ルネ、セリア、グロス、ミレーヌ、エリシア――誰もが迷いを捨てた目をしていた。


「作戦は単純だ」

 彼は焚き火越しに地図を示す。

「ゼイル・ゼスは潜入と撹乱。ルネとセリアは魔導支援で防壁を削る。グロスとミレーヌが正面突破。俺とエリシアが中枢を討つ」


「了解だ。燃えるじゃねぇか」

 グロスが拳を鳴らし、笑う。

 ミレーヌは冷ややかに返した。「燃えすぎて突っ走るんじゃないわよ。私の援護が届かない範囲まで行ったら、知らないから」

「へっ、心配性だな」


 軽口の応酬が、緊張を和らげていく。

 しかし、ライルの声が再び響くと、空気が締まった。


「……誰も死なせない。それが、この作戦の前提だ」

 静かながら、言葉に揺るぎがない。

 その一言に、全員の目がライルに集まった。

 “獣”と呼ばれる男の瞳には、炎よりも深い光が宿っていた。


 エリシアが一歩、前に出た。

「もう迷わない。王女としてではなく――あなたと共に、血盟として戦う」

「その言葉、信じよう。ただし――後悔は許さない」

「望むところよ」


 風が吹き、焚き火の火の粉が舞った。

 ライルが剣を抜き、空に掲げる。

「――誓いの時だ」


 全員が武器を掲げた。

 血盟の旗が夜風に翻り、赤い獣の紋章が月光を裂く。


「獣たちよ、今こそ咆哮せよ」

 ライルの声が、夜を震わせた。

「――血盟、王都へ進軍開始だ!」


 叫びとともに、焚き火の炎が爆ぜた。

 それは誓いの再演――“血の誓い”の夜が、再び始まった瞬間だった。


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