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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第10話 破滅の序章その2

夜の帳が降りた旧鉱山都市ルガート。

 朽ちた坑道の奥に灯る松明の光が、錆びついた鉄骨を赤く照らしていた。

 ここは、アルヴェリア南部を拠点とする反乱軍の隠れ家――そして、運命の夜が始まろうとしていた。


「……本当か? あの“守護者”が、追放されたと?」


 低く掠れた声で問うのは、反乱軍副長カラム・ドレイク。

 黒革の外套に無精ひげを生やした男。かつて王国軍に徴兵され、家族を失った過去を持つ。


「ああ、確かな筋からの報せだ」

 老戦士ヴァルドが頷いた。

 「王直轄の騎士団が解散された。ライル・アーヴィングは王の命で放逐。今、王都は混乱している」


 坑道にどよめきが走った。

 誰もが息を呑む。あの無敗の騎士、王国の象徴たる守護者が――いない。


「……ハッ、神が味方したか」

 カラムは口の端を吊り上げた。

 「牙を抜かれた獣だ。王都は今、裸同然。俺たちがやるべきことは一つだろう?」


「進軍だ」

 ヴァルドの瞳がぎらりと光る。

 「次の満月に王都を包囲する。傭兵団と接触し、火薬と魔法兵器を揃えろ」


 その言葉に、坑道の奥で歓声が上がる。

 鉄と火の匂いが充満し、反乱軍の士気は天井を突き抜けた。


 カラムは焚き火の前に立ち、かつての故郷の方角を見つめた。

 ――王国のせいで失った家族の顔が、闇の中で浮かぶ。


「俺たちはただの暴徒じゃない……これは、復讐だ」

 彼の拳が震えた。

 「この国の偽りの栄光を、俺たちの手で焼き払う」


 その背後、瓦礫の影に人影が立つ。

 フードを被った密使が一歩進み出た。


「エルディナ連邦より伝令だ。お前たちの戦い、我らも見届けよう」

 銀の指輪を差し出す密使に、ヴァルドは笑う。

 「交易路が欲しいんだろう? なら見てろ――俺たちがこの国を壊してやる」


 坑道に響く反乱の雄叫び。

 その音は、北の風に乗って王都へと届いていく。




 ――ライル・アーヴィング追放から一週間。


 王都アルヴェリアは、かつての栄光を失っていた。

 白亜の城壁の下、街路は黒煙に覆われ、夜ごと放火と略奪が絶えない。

 王宮侍従ライオネルは、窓辺から燃える市街を見下ろして嘆息した。


「……陛下、どうかお心をお鎮めください」

 「鎮めろだと? お前にこの炎が鎮められるのか!」


 王、アルトレウス三世が玉座で吠える。

 血走った目、震える手。

 かつて聡明だった王の面影は、もはや見る影もない。


「裏切り者をすべて粛清しろ! 市民の叫びなど聞くな! あの娘も……油断するな……!」


「……姫様を、ですか?」

 ライオネルの声が震える。

 だが王は耳を貸さず、狂気の命令を次々と下していく。


 重臣たちは顔を見合わせ、黙って退出していった。

 王宮の廊下は、もはや沈黙と恐怖で満たされている。


 やがて、ライオネルはひとり廊下に残り、独り言のように呟いた。

 「――天が、我らを見放したのですな。あの方を追放した報いが、今ここに」


 その足で、彼は王女エリシアの部屋を訪れた。

 扉の前で一礼し、静かに言葉を紡ぐ。


「姫様……どうか、この城をお離れください。もはや王都は安全ではありません」


「……ありがとうございます、ライオネル。しかし私は――逃げません」


 扉の向こうから聞こえる、穏やかで、それでいて鋼のように強い声。

 ライオネルは、彼女の覚悟を感じ取った。

 「……ならば、せめてご無事を」


 老臣の足音が遠ざかる中、エリシアは静かに窓辺に立つ。

 赤黒い煙が、空を覆っていた。



 王宮の高塔。

 夜風がカーテンを揺らし、炎の匂いが漂う。


 エリシア・アルヴェリアは、ひとりバルコニーに立っていた。

 遠くの街では、火の粉が星のように舞っている。

 その光を見つめる瞳は、悲しみと決意に揺れていた。


 掌には、銀のペンダント。

 ――かつて、彼が渡してくれたもの。

 “約束だ。どんな闇でも、お前を守る”

 あの言葉が、胸の奥で今も響いていた。


「……ライル……あなたがいれば、こんなことには……」


 唇が震える。

 だが、次の瞬間、王女の表情から迷いが消えた。


 ――もう、誰にもこの国を汚させない。

 ――父であろうと、この手で止める。


 彼女は部屋に戻り、鏡の前に立つ。

 純白のドレスを脱ぎ捨て、戦装束を纏う。

 腰に剣を差し、長い金髪をひとまとめに束ねた。


「アルヴェリアの名にかけて――父上、私はあなたを討ちます」

 鏡に映る自分を見据え、静かに呟く。

 瞳の奥には、炎が宿っていた。

 それは“王女”ではなく、“戦士”の光。


 窓の外では雷鳴が轟き、雨が降り出す。

 まるで天が、この決意を洗い清めるかのように。




 同じ夜。

 南部ルガートでは、反乱軍が王都への進軍を開始していた。

 山道を埋める無数のたいまつ、響き渡る戦鼓の音。

 カラム・ドレイクは馬上で笑う。


「見ろ、アルヴェリアの王都が燃えるぞ! あとは潰すだけだ!」


 その声が闇にこだまし、兵たちの咆哮が応える。

 「――ライル・アーヴィングなき王国など、恐れるに足らず!」


 一方、王宮の塔ではエリシアが剣を抜いた。

 刃が月光を反射し、銀の閃光を放つ。

 「ライル……あなたの守りたかった国を、私が救ってみせる」


 雷鳴が轟き、風が塔を包む。

 彼女の髪が舞い上がり、涙が夜に溶けた。

 そして、ライン・アーヴィングと再会


 ――運命の鐘が鳴る。

 反乱軍の進軍、王の錯乱、王女の誓い。

 全てがひとつの道へと収束していく。


 それは、アルヴェリア崩壊の前奏。

 だが同時に、“復讐と救済”の物語の幕開けでもあった。


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