5 高馬 Day2
「んで上履きのまま学校を飛び出した不良2匹はどこに行くんだい?カチコミか?」
「こじゃれたバーとでも言いたいけれど、普通のファミレスさ」
「入店拒否されないか?」
「僕たちが通ってる学校評判いいし、きっと大丈夫でしょ」
学校から一番近いファミレスは俺らの高校の生徒がよく溜まってる。まぁ、迷惑はかけてないしみんな1時間くらいで帰るから店側も学生応援とかいうメニューを出す始末。癒着か?校門から速足で入ってくる生徒皆に首を傾げられてる。まぁこんなにイケメンが男連れてテストバックれてるんだから気になるわな。
「おい、予鈴鳴り出したぞ。今なら間に合うが、どうする?」
「右の拳がいいか左の拳がいいかってこと?」
「どうしてそんなに血の気が多いんだよ」
まぁテストくらいサボっていいか。高校生だし。
ファミレスの中は想像通り空いてて、店員さんが首をかしげながらも奥のテーブルを貸してくれた。
ドリンクバーとパフェをひとつ。加藤はホットケーキにしたみたいだ。
「さて、話してもらおうか」
「何をだよ」
「昨日から付き合いだしたっていう先輩のはなしだよ」
「・・・お前恋バナしたいがために学校サボったとか言ったら本格的に縁を切るからな」
「いやいや、人生相談だよ」
「何を相談したいって言うんだよ」
「いいからいいから、どっちから告白したんだい?」
「言いたくない」
「もう一回殴られたいの?」
「お前日本じゃあ暴力はご法度だぞ。てか海外もそうだろ」
「僕はギャングスターだったし関係ないね」
「帰れよおじょーさま」
「次僕にお嬢様っていったら婚姻届け持ってイタリアに帰るからね」
「マジ勘弁してくれ。俺からだよ」
「その先輩のどこが好きなの?」
「全部だ全部」
「うーん、それは小倉は知ってるの?」
「ああ、知ってるぞ」
「いつ教えたの?」
「昨日だ」
「昨日?旦那なんか僕に隠してない?」
「なんにも隠してないぜ」
「先輩ってことは年上だろうけど、旦那は部活に入ってないからこの学校の先輩というよりは別の場所と考えるべきだろう、たとばバイト先とかか。じゃあ、何時くらいに告白したんだい?」
これ下手なこと言うと全部バレそうだな。
「朝だよ」
「朝?嘘だね。君は昨日学校でスマホを触っていなかった。かつトイレ以外で教室を出ることがなかった。じゃあ告白したタイミングは登校中ということになる。でも、朝のただでさえ時間がないなか告白されたら不機嫌な返事になりやすいってのは少し考えればわかる。そして、旦那が気が付かないわけがない。だからそれは嘘だね」
「・・・下校中だ」
「下校中に告白した。旦那はどうしてそれを隠そうとしたんだい?」
「別に恥ずかしかっただけだよ。殺せよ」
店員さんがパフェとホットケーキを持ってきてくれた。お盆にはなぜかアイスコーヒーも載ってる。
「暇なんでサービスです」
「お気遣いありがとう」
加藤はにっこり笑った。こいつは女を惚れさせるプロだ。小走りで店員は行ってしまった。
「・・・俺のは?」
「ふっ、取ってこようか?」
「いい」
なんで俺知らない人にイジワルされてんだよ。クソが。席に戻ると俺のパフェに刺さってたチョコが軒並み消えていた。
「おい」
「避難訓練さ。僕のを一切れあげるから堪忍して」
「構わんが先に言え。親しくても礼儀を欠くな」
生クリームをスプーンですくって、コーヒーに浮かべる。多分こうやって食べるのが正解。
「こじゃれてるね。SNSにあげるの?」
「や、俺写真嫌い」
「ふーん」
「おい、スマホ向けんな。撮るのも撮られるのも嫌いなんだよ」
「残念」
加藤は鮮やかにナイフでパンケーキを切り、音もなく食べる。お前ギャング育ちなのに所作が美しすぎるよな。
「さて、話を戻そうか。先輩ってどんな人?」
「クリーム付いてんぞ。バイト先の4つ上の大3の先輩」
「身長体重スリーサイズは?」
「身長は女性にしては高い。165あるかも。体重は知らない。スリーサイズも知らないな」
「胸とお尻は大きい?」
「胸は身長からすれば普通。お尻は明確に大きい」
「尻派?胸派?」
「胸だな」
「何て言って告白したの?」
「いや、普通に彼女になって下さいって」
「・・・うーん、その言葉だとまるで彼女が欲しいから告白したみたいだね」
「そりゃあ俺だって高校生だぜ。彼女くらいほしいだろ」
「じゃあ身近にいる小倉に告白せればよかっただろうに」
「や、俺小倉に1回振られてるからな」
「まって初耳なんやけど。いつの話?」
「小6のとき」
「小6かぁ、ギリ恋愛感情を理解してそうなラインだな。なんて告白してなんて振られたの?」
「言いたくない」
「じゃあ、それ言ったら今日はこれ以上質問しない」
「言ったな?」
「言ったよ。神に誓う」
「・・・俺って中学受験したのって知ってる?」
「勿論」
「小6のマジで初めのころ、仲が良かった男2人が彼女を作っててさ、俺も対抗して彼女が欲しくなったんだよ」
「ほんほん」
「んで安直に告白したらなんて言われたと思う?『そんな軽い男だと思ってなかったよ』って吐き捨てられるように軽蔑されてさ、俺がその時の顔が怖くって、逃げるように中学受験を決めたんだよ」
「・・・まぁ、旦那が悪いわな」
「ああ。俺が悪い」
「ちなみにその時、小倉のこと好きだったの?」
「うーん、今も昔も小倉に対して恋愛感情を持ったことがないよ」
「え」
「でも、アイツは誰よりも幸せになってほしい。それだけさ」
気恥ずかしさから加藤の皿の上のパンケーキをひとつ奪う。甘ったるい蜜で胸焼けしそうだ。
「うーん言いたいことは山ほどあるけれど、まぁいいや」
「なんだよ、言えよ」
「じゃあ言うならば、それってアレに近いんじゃないの?」
「はよいえ」
「父性ってのが日本語だと近しいのかな?家族愛っていうほがいいのか?」
「父性?なんの話だ?」
「だからさ、お前心のどこかで小倉を下・・・下というか対等に見ていないんじゃあないの?」
「すまない、話が全くつかめてない」
「じゃあ言葉を選ばずに言うならさ」
加藤はフォークを置き、真っすぐ俺の目を見た。やや茶色い目には怒りが浮かんでいるようにも見える。
「お前、小倉でシコったことあんの?」




