4 高馬 Day2
下駄箱で小倉と別れ、教室に入る。中には足りない頭に英単語を詰め込むクラスメイトと余裕ぶっこいてスマホ触っている友人がいる。
「おはようさん」
「ちゃお」
クラスメイトの加藤だ。前回のテストで学年3位の天才だ。しかもこいつはイケメン。どれくらいかわかりやすく説明するなら、こいつ一人でクラスの顔面アベレージを7程度上げている。
「どうだ?」
「僕が赤点を取るとでも?」
「取ったらおもろいな」
「取ってあげようか?」
「言ったな?」
頭もよくイケメンで口もよく回る。神はこいつにいろいろ与えすぎなのではないか?殿堂入りもやむなしなのではないか?
「旦那は?」
「なんでいまだに俺のこと旦那って言うん?別に悪い点は取らないだろうけどって感じ」
「旦那は旦那さ。お勉強するために早く来たんじゃあないの?」
「別に、いつもこの時間に来てる・・・って、お前もだろ。適当言うな」
「や、僕は友達がとっても少なくてね会話相手が欲しいのさ」
「お前さんは友達のハードルが高すぎるんだよ」
「そうか?一番最初に仲良くなった旦那を基準に考えているだけだよ」
「その結果、学年で何人と喋るんだ?」
「3人。ちなみに1人は彼女だ」
「馬鹿だろ」
コイツは去年の冬に来たヨーロッパのどこかからの転校生で、最初こそ皆話しかけていたが、真顔で理路整然と話す姿に皆が距離を取っていた時に、昼食を誘ってから仲良くなった。
「そうだ、今日の昼ご飯一緒に食べに行かないか?」
「俺は別に構わないけれど、彼女さんが嫉妬しないか?」
「大丈夫だよ。高橋も旦那のことが大好きだからね」
「うーん、それはそれでいいのか?」
「構わないさ。僕が彼女の性癖を歪めたのは事実だし、もし彼女が旦那のことを好きなってもそれはむしろ高橋の性癖が正常になったってことだからね」
「お前、もしかして高橋のことそんなに好きじゃあなかったりする?」
「いや、ちゃんと愛してるよ。でも同性愛者の僕から見ても君は惚れ惚れするほど魅力的な男だと思うよ」
「言ってろ」
「まぁ、君は小倉と付き合っているからね。さすがに寝取る趣味はないから安心して。どっちにしてもね」
「や、俺と小倉は付き合ってないぞ」
「うふふ、バレバレな嘘を」
「や、俺は一個上の先輩と付き合ってるよ」
「・・・」
「なんだよ急に黙って」
「ちょっと来て」
「おい、どこに連れてく、ちょっ、引っ張んな!テスト始まんだろ!」
「黙れ」
半ば引き摺るようにして外に連れていかれた。
「なんだよ急に。シューズのまま外出たくなかったんやけど」
「どういうことだ?」
「なんだよ、なにがだよ」
「僕は君が好きだ。旦那のことを尊敬しているし、友愛、敬愛、親愛、全てを持っている。そんな君の口からは出てこないような言葉だったからね。もう一度言って頂戴」
「何をだ?」
「誰と付き合っているんだい?」
「だから一個上の先輩とだよ」
「・・・冗談とかじゃあなくてか?」
「なんでお前にこんな冗談言わなくちゃあいけないんだよ」
「いつからだ?」
「少し前からだ?」
「具体的に」
「言いたくない」
「・・・わかった。言ってくれたら僕のパンツかブラのどちらかをあげよう」
「言わねーよ」
「じゃあ、武力行使に出るしかないか」
ノーモーションで鳩尾に下から掬うような拳が飛んできた。対処できるわけもなく、モロに喰らい、その場に蹲る。
「っ・・・・!」
痛すぎて息ができねえ。コイツ並みの腕力じゃあねーぞ。
「言う気にはなった?」
「・・・っ!」
「まぁ、すぐに喋られるわけもないか。少し待ってあげるよ」
コイツヤバいぞ。次も沈黙で返したら顔色を変えずに殴りかかってくるに違いない。
「さて、1分程待ってあげたよ。言う気になった?」
「・・・昨日からだ?」
「昨日?いぇすたでい?」
「ああ。いぇすたでいだ」
「詳しく教えて。今日はじゃあ学校サボろっか」
「え」
「ついてきて。いや、ついてきた方がいいよ。これ以上痛い思いしたくないだろう?」
「・・・一応聞くけど荷物は?」
「おいてけ」
「靴は?」
「おいてけ」
「テストは?」
「ほっとけ」




