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虚栄  作者: 竹取夜鷹


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3' 小倉 Day1

久しぶりにたかと喋ったからいつもより饒舌な気がする。落ち着きなさい。私。あくまで冷静に。自分の分のコーラをグラスに注ぎ、ついでにゼロコーラも入れる。ゼロコーラ何がおいしいのかよくわかんないけれど、アイツはこっちのほうがおいしいって言っているんよね。舌腐ってるのかな。それとも現代っ子は人工甘味料の方が舌に合うのかな。

「お待たせ。どっちかがゼロコーラでどっちかがコーラだよ。どっちがいい?」

「左」

たまたま今回は一致してたけど、別に逆だったらで私から見た左側扱いができるから、タカは絶対にゼロコーラだし、私は絶対にコーラを飲める。

「最近、たかバイトしてばっかりだよね。旅行でも行きたいの?」

「や、暇だからバイトしてるだけ」

暇だから?その割にいっつも疲れてクタクタで帰ってきているのにそれが暇つぶし?マゾなの?

「えー暇なら私に構ってよ。私だって今みんなテスト勉強に必死で遊んでくれないもん。ってか今回もテストの順位勝負する?するってんなら本気で勉強しないけれど」

「しない」

「あれあれぇ?戦意喪失?敵前逃亡は処刑だよ?たか君のかっこいいところみたいなぁ」

たかは何も返さずにグラスのゼロコーラを傾けた。ちょうどお姉さんがご飯を持ってきてくれたので軽く会釈し受け取る。

「ありがとね」

奢ってくれてありがとう。一緒にご飯を食べてくれてありがとう。とりあえずサラダを食べる。好きな人の前だといつもより一口が小さくなってしまう。おいしい。もごもごと咀嚼しているところをぼんやりと眺められて少し恥ずかしい。

「たふぁあこんふぁいのてすとふぁいふぉうふなの?」

「飲み込め」

しまった。焦って適当に言ったけれど、たかはこういったマナーのない行動を一番疎むんだった。慌てて飲み込む。

「ん・・・たかは今回のテスト大丈夫なの?」

「別に赤点は取らないだろうし大丈夫」

前回の期末試験のたかの順位はクラスで20位、学年で89位だ。特進クラスの真ん中で、学年の四分の一に平然と食い込んでいる。というか、たかは順位が良くも悪くもないから教えたり、逆に教えてもらったりっていう学生ならではのイベントができなくて辟易してる。たかは国立の中学校に受験したから頭自体はめちゃくちゃいいはずなのに、今は燻ってる。

「・・・たまには本気をだしてほしいな」

しまった。たかは中学校で思いっきり挫折をして努力をしなくなったんだった。そしてこれらの話題はタブーだと思ってたのに。今日の私は感情の整理ができてない。落ち着け。落ち着け。落ち着け。

「本気?なんのことだか」

ちらりと顔色を窺うと別に怒ったり悲しんだりしているわけではなかった。この際、少しだけ踏み込んでみるか。

「中学受験してたときのあの頭脳をもう一回みたいなぁって思ったり」

「なんのことだか。それよりヘッドフォン返せ」

露骨に話題を逸らしてきたな。これ以上踏み込むべきなのか、引き返すべきなのか。考えていると再びたかが口を開いた。

「もういいだろ過去のことは。俺は努力をしなくなって順位はしたから数えた方が早くなったし、お前は努力して学年トップを取ったそれだけのことだよ」

下から数えた方が早いは噓でしょ。私が君について知らないことがあるとでも思っているのかな?まあいいや。正直、たかがこの高校に進学するってのを先生の机の中の書類から見たときはすごく驚いたよ。たかならあと二段階上の高校にも入れただろうにわざわざ家が近いだけの高校に進学するとは思っていなかったからね。おかげで私も進路を三年の夏の終わりに変えざるを得なくなった。まあ別にそれはそれでいいんだけれど、高校でも当然たかはトップを目指すと思ってて、たかに順位を抜かれたら告白しようと思ってほどほどに勉強して、満点を取らないようにあえて空欄とかも作って推定2位を目指した。さあ、たかに告白しようと思って帰り道、学年トップに対する誉め言葉と愛の言葉を用意したうえで順位を見せてもらった。私はその時愕然とした。たかは学年で55位だった。答案を見たら明らかなケアレスミスと空欄が目立ち、手を抜いたってのが一目でわかるテストだった。私は驚いて言葉が出せなかった。向上心に溢れてたたかは、天才の集う中学校で、毒を抜かれ牙を折られ爪を丸められていた。それから高校1年生の1学期はどう接すればいいかわからずに、少しだけ関わるのを避けた。でも、遠くから見るたかは中学校の時よりよく笑っていたし、なんというか人生を謳歌していた。だから私は、夏休みにデートに誘い、またつるむようになった。

「ふーん。まぁいいや。それより少し私の愚痴を聞いておくれよ。最近よく喋ってるみんながBLだとかの話しかしないんだ。まったくどうして同性愛なんて不合理的なものが淘汰されなかったんだと思う?私は男同士が抱き合ってるのを見ると虫唾が走るし、なよなよしている男もまとめてネコソギラジカルくたばってしまえって思っているんだよ。それなのにやれあの男の子は可愛いだとかどっちが攻めでどっちが受けでだとか馬鹿も休み休み言って欲しいね。というか同性愛なんていう文字通り生産性が存在しないものが存在するってことは神様はきっと腐女子、腐男子に決まっている。世界を作った神様が腐っているんだから今の日本の政府も世界情勢も腐り散らかしているのは世界の道理って・・・聞いてる?」

「ん?聞いてなかったしもう一回言わなくてもいいぞ」

この野郎。でもこの適当さが大好き。

「死ねよ。まあ私ばっかり喋っていても仕方がないな。最近どうなんだ?入学したときは色々な女から告白されてたじゃあないか。それなのに浮ついた話のひとつも聞かせやしないなんて。もしかしてお前はホモなんか?ならばこんな美少女が話しかけてもいい反応してくれないわけだ」

「くたばれ。別に魅力的じゃあなかったから丁重にお断りさせていただいたよ」

「まあ私がいるしね」

「自惚れんな。てめえと付き合うなんて絶対にない」

「こっちから願い下げよ」

見ての通り、たかは私に対して恋愛感情を持っていない。それは悲しいけれど、親友として一番のポジションに収まれてるし、変なタイミングで告白して変な関係になるのが嫌で、たかとは鈍い痛みを抱えたまま関わってる。好きだって、ずっと前から愛してるって吐き出して楽になりたい。

コップにコーラの二杯目を注ぐ。確かまだたかは飲み終わってなかったし、コーヒーを持っていこう。

「はい。コーヒーでよかった?」

「ありがと」

いえいえ。

「お前、少し前に誰かと付き合い始めたって言ってたけど、、そいつはどうした?」

覚えてたんだ。もしかしたらたかが焦燥感に駆られてくるかもしれないって思って、告白してきたバレー部の先輩と付き合ったけれど、ちっともときめかないし、視線が下卑ていたし、将来性も感じなかったから、ひと月で別れた。

「何か月前の話よ。ひと月付き合って顔以外に魅了がなかったかすぐに別れたわよ」

コイツマジかって顔された。濡れる。結局たかは別に普段と態度は変わらなかったし、むしろ距離を取ろうとしてきた。

「逆にあんたは誰とも付き合ったことがないのよね」

「いや、今付き合ってる人がいる」


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