3 高馬 Day2
眠れない夜も明け、今日からテストが始まってしまう。ノー勉だけれどさすがに赤点は取らないだろう。リュックサックに筆記用具とペットボトルのお茶。おまけに単語帳をしまい、家を出る。
「いってきます」
別に返事はない。あっても困るけど。外はまだ寒い。もう5月なのに一向に温かくならない。暑いのは嫌だから一生冬のままでいいのに。
「おはよう」
「おはようさん。いい朝だね」
丁度家から小倉も出てきた。珍しい。小倉は普段もう少し遅く家を出ているから一緒に学校に行くのは稀だ。
「テストはどうだ?」
「私が悪い点取るように思える?」
「どうだかな」
「・・・髪、どうしたんだ?」
「ん?ああ切ったんだよ。願掛けでね」
「願掛け?何か願い事でもあるのか?」
「秘密さ。どうだい、髪が短い私もキュートだろう?」
「・・・」
「何とか言えよ」
「まあ、似合ってるよ」
「そんな口調で彼女さんに言ったら振られちゃうよ」
「お前はお前、彼女は彼女だ」
「酷いね。君は私のことを女って思っていないのかい?ああ嘆かわしい。男尊女卑もここに極まれし。普通に考えて女性が他人と会うのに容姿に気を付けないわけがないだろう?だから出会ったときに服装がいいのはいわば、当たり前なんだよ。私たちが言われたいのは似合ってるって言葉じゃあなくて、可愛いだとか美しいだとか、胸とか顔とか服とかじゃあなくて全体像を見て言って欲しいんだよ。これだからノンデリ野郎は」
「はいはい可愛い可愛い」
「フンだ」
「昨日は大丈夫だったのか?」
「昨日?ああ、気にしなくてもいいよ。家族のことでナーバスになってただけだから」
「家族か。俺からは何も言えないな」
「言わなくていい。同情は嫌よ」
「なんにせよ、相談なら何でも聞くぜ。家族みたいなもんだから」
「言ってろよタラシ野郎」
「だれがタラシだよ」
赤信号に足を止める。ふと真横に並んだ時に、小倉は背がかなり低いことに気が付いた。俺の身長が177だから目視140くらいかもしれないな。
「何よジロジロ見てきて。私の魅力に篭絡されちゃった?」
「・・・ふっ」
「なっ・・・殺してやる!んだその小馬鹿にした笑いは!殺してやる!3枚におろして全国の家庭に笑顔をお届けしてやる!」
「怒んなって」
「怒るなァ!?貴様人を馬鹿にした挙句それを怒る権利すら剥奪しようとするなど、言語道断の恥さらしの××××野郎だ!貴様が生きてること自体が地球の損害になりうる!このイロコイボケの××××野郎!」
「おうおう叫ばない叫ばない。まだ朝だよ」
「はぁはぁ、次私の容姿を馬鹿にしてみろ。マジで殺すからな」
「悪かったよ・・・馬鹿にはしてねーだろ」
「何か言ったか?」
「空耳幻覚聞き間違い。病院行ってこい」
「あ?」
「怒んなって。カルシウム足りてねーからだろ」
「お前私の背が低いって言いたいんか!?」
「それは被害妄想がすぎる」
「ノンデリチンパン性欲猿め」
「お前こそ失礼な野郎だな」
いつも以上にハイテンションな小倉を見て少しだけ安心した。鬱陶しいことこの上ないが。




