16' 小倉 Day3
どれくらいの時間が経ったかすら曖昧になるほど、ひたすら泣いていた。何度も情けなくトイレで吐き、喉も頭も痛くなって涙もゲロも出てこなくなった。フラフラと洗面所に行き、口をすすぐ。そのまま化粧も落とさず冷水で顔を何度も洗った。鏡に映る私は無様だった。
もう、何もかも忘れたいよ。リビングの机の上にある酒瓶を手に取る。私は無造作に栓を抜き、口を付けた。勢いよく口元に水みたいな透明なのが入り、全部その場に吐き出した。酷いほど咳き込む。痛い、痛いよ。息を整え、私はもう1度、ゆっくり瓶を傾けた。口元に少しだけ入れる。口の中で異物と脳も舌もが判断し、吐きだそうになる。ぐっとこらえて、よだれと一緒に嚥下をする。喉を棘付きの熱い鉄球が流れ落ちるような感覚で何度も咳き込んだ。痛い。この痛みなら、たかのことを忘れれる。私は、また1口、嚥下した。おいしくなんかない。やってることは、母親と一緒。そんなことわかってる。でも、もう何もかも忘れたいんだ。頭が割れそうな程痛い。もっと、もっと飲まないと。飲んでたかのことを忘れないと。また瓶を口元に運ぶ。
「・・・何やってんだ」
驚いて、酒瓶をその場に落としかけた。
「・・・・・・何しに来たのよ」
「んなもん、飲むな。捨てな」
「えらそーに。何様なのよ」
たかは何も言わず、私の手から酒瓶を奪い取った。そのまま流しに全部捨てた。
「こんな酒臭い場所におったら、体壊れる。俺んとこ来い」
たかは私の手を引こうとした。すぐさま振り払う。
「あんたに、お前に何がわかるのよ!」
近くにあった空の瓶を力任せに床に叩きつける。破片と中身が飛び散り、跳ね返ってきた破片が左手を掠めた。目の前に持っていくと手首が少しだけ切れていた。
「・・・いいから来い。破片踏むなよ」
私は何も言わず、手首の傷を舐めた。マズい。たかは靴下のまま、近づいてきた。
「待って、危ないから来ないで」
「知らねーな」
たかは無造作に私のもとに来て、抱き上げた。
「は、離して!」
たかは何も言わず、私の家から出た。そのまま、隣のたかの家に連れ込まれる。
「座れ」
リビングの椅子に座らされた。たかはコップにほうじ茶を入れ、目の前に置いた。
「昨日は、悪かった。連絡に気が付かなかった」
「彼女とデートしてたから?」
だかは少しだけ驚いたような顔をした。彼はすぐに表情を繕った。
「ああ」
私は勢いよくコップを掴んだ。たかはそれを見ても微動だにしなかった。
「・・・なんで、私じゃあないの?」
「・・・・・・」
たかはなにも言わない。
「なんで、なんで私じゃあないの。私さ、ずっとずっと君のこと、好きだったんだよ。小学校よりも前から。なんで君は私を好きじゃないの?」
たかは何も言わなかった。
「私さ、ずっと君のこと好きだったの。今もたかのことは大嫌いなのに、大好きなの。なんで私じゃないの?」
「・・・俺も、お前のこと
「聞きたくない!慰めなんていらない!」




