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虚栄  作者: 竹取夜鷹


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2 高馬 Day1

結局家に帰って、ついでに小倉の家にピンポンを鳴らしてみたが、誰も出てこない。本当に大丈夫なんかな。まあいいや。シャワーを浴び、カップ麺用のお湯を沸かす。暇を持て余してスマホを取り出すと先輩からチャットが送られてきていた。

「今日周回はどうする?」

「任せます」

「じゃあ手伝って」

「あい」

「電話してもいいかな?」

「今からご飯なんで30分後でいいですか?」

「わかった。何食べるの?」

「○清食品のアレです」

「何味?」

「醤油です」

「いっつもそんなの食べてるの?」

「そうですね」

「体に良くないよ」

「料理って手間のわりにおいしくないですから」

「でも体に悪いよ」

ん、湯が沸いた。中に入れて卵とネギと胡椒と醤油を適当に入れ、3分間待っておく。

「先輩は両親にご飯を作ってもらえるからいいじゃあないですか。俺は親と食事することの方が少ないんですよ」

「そうなの?」

「言ってませんでした?」

「初耳」

「両親は俺が中学に入ってから事業が成功したとかで国を跨いで働いてます。今はどこにいるかすら知りません」

「一人暮らし?」

「はい」

「あそこのマンションで?」

「というかいつ俺の家の住所を知ったんですか?」

「内緒」

「え」

「そのマンションって空き部屋あったりする?」

「どうなんでしょうね」

頃合いだな。箸を手に取る。啜る。濃い。お湯を追加。

「ちょっと調べたけど埋まってるね」

「駅もスーパーも近いですしね」

「残念」

うまい。やっぱ日○だな。たまらねーぜ。腹には溜まるけどな。

「先輩はどの辺に住んでいるんですか?」

「んー言ってもわかんないと思うけれど金山だよ」

「意外と距離がありますね」

「実はそう」

「じゃあどうしてあそこでバイトしているんです?近いところで働けばいいのに」

「高校はそっちに住んでたからだよ。進学の時に家族で引っ越して、でもバイトだけは続けている」

「交通費はどうしてるんです?」

「普通に支給されてるよ」

「物好きですね」

「まあ忙しいからやめたくはなるけれど、仕事終わりに君と飲むコーヒーがおいしいからね」

「冥利に尽きます」

「私は風呂に入るから、15分後に電話するね」

「待ってます」

最悪や。チャットのし過ぎで麺伸びた。・・・15分で風呂?早くね?まぁいいか。


ゴミ箱にカップを捨て、タンブラーにコーヒーを入れる。淹れてから時間が経ってるから多分酸っぱくなってる。牛乳を多めに入れておこう。部屋に戻り、PCを起動。いつものMMOを起動する。

しばらく鍛冶屋で武器を見繕っていたら着信。先輩からだ。

「もしもし」

「も、もしもし、ごめん待たせちゃった」

「いえいえ、今起動したところです」

開けっ放しの窓を閉めた。寒い。暑いよりましだが。

隣の部屋からすごい音がした。なんか落としたんかな?

「どこ行く?イベント?」

「や、イベント限定装備はもう作ってあります」

「何かが足りないの?」

「先に先輩からの用でいいですよ。何か足りないんですか?」

「いや、シンプルに経験値不足だから周回はどこでもいいよ」

「そうっすか。じゃあ俺の行きたいところでいいっすか?」

「うん」

「じゃあ、うーんとティターンズの足装甲とクリムゾンワイバーンの主砲の二種類っす」

「なんで変なもの収集してんのよ」

「や、銀河大剣の素材っす」

「あの武器使いにくくない?二回攻撃必須ってところが私は好きになれないな」

「俺は気に入ってます。条件達成後の火力は目を見張りますからね」

「んじゃあティターンズの討伐から行こうか」

「お願いします」

それから2時間ほどずっと周回をし、あまりのドロップ率の低さから先輩がコントローラをぶん投げた。

「やってられないわ!」

「さすがに下振れってレベルじゃあないですね」

「もう引退だわ!」

「昨日も聞きましたよ」

「疲れちゃったし、もうやめよ」

「はい」

アプリを落とし、PCもシャットダウン。ゲームの音とパソコンの音が消え、より鮮明に先輩の声が聞こえる・・・気がする。気のせいか。

「もう少し喋っていい?」

「勿論」

「じゃあさ、高馬君、私の好きなところ言ってよ」

「藪から棒ですね」

「言えないの?」

「別に言えますよ。顔、声、性格、服装、教えるのがうまいところ。ゲームの周回に付き合ってくれるところ。コーヒーを淹れるのが上手なところ。頭がいいこと。穏やかなところ。誠実なところ。枚挙に暇がありませんよ」

「ごめんなさい、私が悪かったので照れさせないでください。君はすごいね」

「いえいえ、好きなものを好きな人に自慢するのに言葉は詰まりませんよ」

「っ・・・君って本当にタラシだね」

「まっさか。ただの童貞ですよ」

「まったく。・・・ごめん私は明日ゼミの発表だからもう寝るね。おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

「・・・高馬君」

「はい」

「愛してるよ」

切られた。俺はクソ野郎だ。対して好きでもない先輩に歯がガタガタ言うようなセリフを矢継ぎ早に言ってゴキゲンを取る。吐き気がするぜ。見栄のためになんでこんなことしなくちゃあいけないんだ。まぁ俺が悪いってのは百も承知だけれど。なんでアイツに見栄はったんだろう。

窓を開け、空気を入れ替える。切り裂くような寒さが体を包む。心地よいな。

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